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第4話 偵察

 階段を上がり、ハッチを開けて船の外に出る。

 凄く静かだ。

 風に揺られて木の葉がざわめいている。

 動物の声は聞こえない。

 タラップを降りて地面を踏みしめる。

 日差しが届かないのか、草は生えていない。

 むき出しの地面に木の根が張っている。

 結構涼しいな。


「シールドの範囲って、どのくらいなんだ?」

「地上だと表面を覆っている程度だから、もう外に出てるよ」

「よし、飛ばしてくれ」

「うん」


 タイムにプレゼントした、エイルによって魔改造されたトンボの髪飾りが2匹飛んでいく。

 1匹は周辺の警戒を。

 1匹は射撃地点を探りに。


「バッテリー残量はどうだ?」

「鈴ちゃんのお陰で1時間くらいなら離れてても大丈夫だよ」


 1時間か……短いな。


ドローン(トンボ)はどのくらいで着く?」

「1分もあれば着くと思う」

「分かった」


 木々をすり抜けて地面すれすれを飛んでいる映像が送られてくる。

 代わり映えのしない、薄暗くて日差しの届かないジメジメした風景。

 1本1本が結構太めだ。

 2人で手を繋いで抱き付いても届くかどうか分からないぞ。

 そんな風景を暫く眺めていると、発射地点と思われる場所に着いた。

 ……なにも無いな。

 人が居た気配がまるでない。

 魔力に関しては俺たちでは分からない。

 映像だけだから音も拾えない。

 周辺も探索してみたが、これといった痕跡が見当たらない。


「他は?」

「移動するね」


 他の発射地点らしき場所に行ってもなにも変わらない。

 下だけでなく上空も見てみたが、やはり変わらない。

 視覚情報しか分からないからな。

 この辺が限界か。

 こうなったら。


『直接行ってみる』

『待つのよ。モナカが行っても大差ないのよ』


 痛いことを言いやがる。

 事実だけに言い返せない。


『ならどうするんだ』

『このまま進むのよ』

『標的にされているんだぞ』

『兄様、良い方法がございます』

『却下だ』

『まだなにも申し上げていないのでございます』

『どうせろくでもないことだろ』

『とても合理的で安全な方法なのでございます』


 合理的で安全ねえ。

 信用できないんだけど、聞くだけ聞いてみるか。


『どんな方法だ?』

『1度森の上に出るのでございます』

『ほお』

『そうすると間違いなく撃ってくると存じるのでございます』


 それは安全と言えるのか?


『それを受けた後、報復として主砲を打ち返してさし上げるのでございます』


 ん?


『そして力の差を思い知らせてさし上げれば、万事丸く収まるのでございます』

『収まるかっ! 余計こじれるだろ。全面戦争になるじゃねーかっ!』

『ならないと存じるのでございます』

『なんでだよっ』

『こちらは無傷に対し、あちらは甚大な被害を被ることになりやがるのでございます。であるならば、降伏してくるのが当たり前かと存じるのでございます』

『降伏……待て待て、もっと友好的な手段は無いのか?』

『相手を攻撃してよろしいのは、相手から攻撃される覚悟のある者だけなのでございます。手を出した時点でなにをされても文句は言えないのでございます』


 それは……確かにそうなんだけど。


『大体主砲の一撃を食らわせたら、何処に居るか分からないエイルのお父さんも一緒に蒸発するかも知れないだろ。まだ突っ込んでいった方がマシだ』

〝娘、兄様の許可が下りたぞ。()け!〟


 なんの話だ!


了解(いょうかい)


 鈴ちゃん?!


『待て待て待て待て! そもそも俺を置いていくつもりかっ!』

『兄様、お早く中へお入りになるのでございます』

『あのなあ! って、お、おおおお?!』


 身体がフワッと浮いたかと思ったら、船の中に連れ込まれてしまった。

 そしてハッチが無慈悲に閉まった。

 当然ドローン(トンボ)との接続が切れて、タイムの頭に戻ってくる。

 勝手に話が進んでいるぞ。

 やったのは鈴ちゃんか?

 こんなこと出来るの、他に居ないし。


『ナームコ、鈴ちゃんになにやらせているんだよ』

『え?! なんのことを仰られているのでございますか?』

『とぼけるな! 無理矢理俺を船の中に入れさせただろ』

『そのようなことは命じていないのでございます』

『他に誰がいるっていうんだ』

『スズ様が自発的にされたことかと存じるのでございます』


 ナームコが俺に嘘を吐くとも思えないし、本当に命令していないのだろう。

 だとすれば、鈴ちゃんの意思というのも頷ける。

 ふーっ、とりあえず下に戻るか。

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