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第47話 武器は何処にあるのか

 タイムの道案内で目的地へと急ぐ。

 魔物が出てくる前に待ち構えたい。


「足は速くねぇみてぇだな」


 心琴(みこと)さんが追い付いてきた。

 連れ戻されるかと思ったが、そのつもりは無いようだ。


「エイルと時子が居ますから」

「へぇ、お優しいこって」


 いやいや、置いていくわけにいかないだろ。

 全力で走れるかって話。


「防衛隊の方たちは?」

「連絡はしたが目撃情報じゃねぇからな。まずは先遣隊だけだ」

「本隊は来ないんですか?」

「ったりめぇだ! 確実な情報じゃねぇし、なにより居住区の警備もあるからな」


 こんなにも確実な情報なのに……

 歯がゆいな。


「で、この矢印に沿って行きゃいいのか?」

「はい」

「へぇ、すげぇな」


 幻燈機ポップアップディスプレイでルート表示をしているから、心琴(みこと)さんにも見える。

 もっと言えば、工場(こうば)で働いている人にも見える。


「タイム、避難勧告をルート上に表示できないか?」

「んー、現地語での表示に対応してないから無理かな」


 現地語を日本語に変換して表示はできるのに、逆はできないのか。


「んなもん、叫びゃいいんだよ。村人の皆さーん、付近に魔物が出没する可能性があります。速やかに第二避難所方面へ避難してくださーい」


 ……誰だ今のは!

 いや、心琴(みこと)さんなのは分かるんだけど。

 なんつぅ猫なで声を出すんだ。


「村人の皆さーん、付近に……んだよ」

「いや、可愛いウグイス嬢が居るなあと思って」

「かわっ……ウグイス嬢ってなんだ?」

「んー、可愛らしい声でアナウンスする人?」

「しゃあねーだろ。守るべき人たちにまで普段みてぇな感じで言えっかよ」


 あーその辺は分けているのか。

 ……なら俺たちには?!


「あれ? 最初村人に怒鳴っていなかった?」

「はっ、守るべき人たちに舐められたら終わりなんだよ」


 それで俺たちにはそういう態度なのか?

 面倒な性格しているな。

 つまりこの可愛らしい声は営業用ってことか。


「んなことよりおめぇ丸腰なんだろ。剣貸すぞ」

「さっき使えないところ見せただろ。それに持っているから要らない」

「やっぱ隠し持ってやがったか!」

「別に隠していたわけじゃないって。ほら、もっと村人に避難勧告しないと」

「てめぇらもしやがれ!」

「俺らが言ったら逆に引きこもると思うぞ」

「チッ。付近に魔物が――」


 本当に同一人物か?

 声と格好のギャップが酷い。

 普段がガチョウなら、今は正にウグイス。

 こうも変わるもんなのか。

 なんて感心している場合じゃない。

 赤丸地点に到達したぞ!

 ここは……ゴミ処理場かな。

 その裏手のちょっとした空き地だ。


「入り口はどこですか」

「あ? 俺が知る分きゃねぇだろ、バァーカ!」


 左様でございますか。

 なら自分で確かめるしかない。


「タイム、ドローン(トンボ)で出入り口は分からないか?」

「それが多分出口だと思うところまで来たんだけど、封印されてるみたいで通れないんだよ」

「そうなのか」

「だから目の前のはずなのに、効率が凄く悪いの」


 ああ、俺と繋がる導線があっちの立入禁止区域からグルッと回っているからか。

 直線距離なら近いんだけどな。

 障害物を越えられないなんて……


「大丈夫なのか?」

「んー、時子次第……かな」

「え、私?」

「当たり前でしょ」

「そっか……」


 握っている手に力が込められる。

 さっきみたいに痛くはない。


「だからってそんな強く握っても無意味だから。分かってるでしょ」

「そんなこと言われても、分かんないよ」

「まだしらばっくれるつもり!」

「分かんないものは分かんないよっ」

「てめぇら! 無駄口叩いてる暇なんかねぇぞ」


 っと、そうだった。

 タイムがなにを言いたいのか分からないけど、とにかく準備だ。

 黒埜(くろの)を構えないとな。


「うおっ! おめぇ、そんなデカいもん何処に隠してやがった」

スマホ()に収めていただけさ」

「鞘ぁ?!」

「時子、準備はいいか」

「うん。多分大丈夫」


 多分かよ。

 例の新しい使い方だっけ。

 魔物戦が本番って、大丈夫なのか。

 ……信じるしかない。


「てかよ。おめぇ、そんな剣でいいんか?」

「そんなとは失礼だな。切れ味は抜群だぞ」


 と言いたいところだが、まだまだ使い込みが足りないから熟練度がそこまで上がっていない。

 普通なら使えば使うほど切れ味は落ちるもんなんだろうけど。

 耐久力とか摩耗とかとは無縁だから成せることなのか?


「相手は魔物だぞ。幾ら斬れたって無意味だろ。素人かよ」


 痛いところを突いてくる。

 だがうちは分業制。


「そこは時子が居るから大丈夫だ。な!」

「はっ、こんな時まで手なんざ繋いで浮ついてんじゃねぇ!」

「浮ついているわけじゃない!」

「ふんっ。勝手に死にやがれ」


 そう言うと、腰の剣は抜かずにまた柄を取り出すと、炎の剣を構えた。

 腰の剣は飾りなのかよ。

 でも最初の時、抜いていたっけ。

 ごく普通の剣だったけど……

 そういえば魔獣は斬るだけで倒せたけど、魔物は倒せなかったんだよな。

 炎の剣……斬ると焼くを同時にできる武器か。

 そういう魔剣的なもの……あるにはあるけど高くて買えないって。

 めっちゃ安いのがあったから買おうと思ったけど、商品説明の最後の方に小さく〝レプリカ〟って書いてあった。

 危うく買うところだったよ。

 あれ絶対狙っているだろ。

 とにかくだ、そういう高価な武器なんてものは無い!

 俺が斬って時子が燃やす。

 それが俺たちのやり方だ。

次回、魔物が出てきます

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