第46話 押してダメなら強行突破
少し休憩した後、再び歩き出した。
というか、時子の力が抜けたから歩き出した……と言った方が正確だ。
〝大丈夫か〟と言いたいところだけど、〝なにが〟とか言い返されてまた変な感じになるのも嫌だ。
手の震えが治まったから大丈夫、と言い聞かせることにした。
エイルは相変わらず心ここに在らずといった感じで歩いている。
立入禁止の先が気になるんだろうけど、実はこっちに居たのに見逃した……とか止めてくれよ。
むしろ一さんの方が熱心なくらいだ。
ま、村人は俺たちを避けているから、それも仕方がないのかも知れないけど。
名前だけじゃ限界もあるだろう。
顔写真が無いっていうのが痛いよな。
そろそろ昼になるのでまた戻ろうという話になるのかと思ったが、その前に異変が起こった。
『マスター、気をつけて。さっきの連中が上に出てきそうだよ』
『なに? それって立入禁止の先からか』
『ううん。多分この先。地下は世界地図の対象外だから正確な場所は分からないけど、方角と距離的にあんまり遠くないところだと思う』
『分かった』
となると、黙っているわけにもいかないな。
工場で働いている人たちを危険に曝すわけにはいかない。
「一さん、この近くに地下へ行ける場所はありますか?」
「えっ、な、何故ですか?」
地下は否定しないんですね。
「魔物がそこから出てきそうなんです。工場の人に避難勧告をしてください」
「魔物?! ……どうしてそれが分かるんですか」
「てめぇ、魔物が出てくるってどういうこった!」
「これを見てください。タイム」
「いいの?」
「いいんだ」
「分かった」
ドローンの映像をいつものように幻燈機で表示してみせる。
「これは……」
「ここの地下の映像です。ご存じですよね」
「いえ、知りません」
「立入禁止区域の先ですよ」
「入ったんですか!」
「すみません。探し人がその先に居る可能性がありますから」
「そうですね……ですが、私も地下の存在は知っているだけで、どんなところなのかまでは知りません」
「村長の息子なのに……ですか?」
「後継者と決まっているわけではありませんから」
「そうなんですか」
てっきり世襲制だと思っていたんだけど、違うのか。
いや、今はそんな話じゃない。
「それで、何処ですか? そこから出てくる可能性が高いんです」
「確かにこの近くにも立入禁止の場所はありますが、そこが地下への入り口かどうかまでは……」
「タイム」
「うん。ここら辺だと思うんですけど、どうですか?」
「これは……この村の地図ですか。こんなものまで……」
「そういう話は後でしますから」
「そうでしたね」
村の地図に、現在地の印と、魔物が出てくるであろう地点に赤い丸がしてある。
「えーと、現在地が……ここで、赤丸が魔物が出てくる場所ですか?」
「はい」
「あと5分もしないで出てくると思うの」
「5分ですか……分かりました。私は避難指示を出してきます。心琴ちゃんは防衛隊に連絡後、現地待機。モナカさんたちも離れに避難してください」
「いえ、俺たちも心琴さんと一緒に戦います」
「お気持ちはありがたいのですが、お客人になにかあってはいけません。ここは私たちに任せて」
「心琴さん、俺の本当の力を知りたいなら、一さんを説得してください」
「てめぇ、やっぱり隠してやがったな!」
「そういう話は後でしますから」
「チッ。一、責任は俺が取るから」
「……減俸1ヶ月じゃ足らなくなるよ」
「ぐ……」
あ、ダメかも知れない。
凄い考え込んじゃった。
仕方ない。強行突破だ。
「エイル、行くぞ」
「あ、待ってください」
「てめぇら、待ちやがれ! 一、俺は逃げたあいつらを追う」
「仕方ありません。きちんと監視してください」
「わあってら!」
次回は誰だお前は!




