第43話 心当たり
エイルが大人しくなったとなると、今度は村の方が心配だ。
「一さん、村は大丈夫ですか?」
「今のところ大きな被害は無さそうです」
「いつもこんな感じなんですか?」
「年に数回あれば多い方ですね。ですが今回は立て続けですから、立て直しが不十分で村まで侵入されてしまいました」
「立て直しですか」
「ええ。トラップの再設置も不十分でしたので」
「すみません」
「あ、いえ、責めているわけではありません。配慮が足りませんでした。申し訳ございません」
「俺たちが原因なのは変わりません。村人からの印象が更に下がりそうですし」
「それは否定できません」
できないんだ……ははっ。
「ですが、モナカさんたちだけが原因ではありません。魔物が来た方向は飛行船……ですか、とは別の方向からでしたし。案内しているときにも話しましたが、前回の魔物騒動から今回の騒動までも、今までの傾向からして来るのが早すぎました」
「連続してくることは無かったんですか?」
「そうですね。あれほどの規模の群れが続けてくることはありませんでした。そういう意味で準備不足だったのです」
なるほどね。
俺たちは関係なくはないけど、大きな原因ではなかったのか。
少しだけ肩の荷が下りたかも。
「すみません、今日はもう案内の方はできません」
「そうですよね。なにか手伝えることはありませんか」
「お気遣いありがとうございます。ですが、お客人にやらせるわけにはいきません。これは私たちの問題ですから、私たちで解決すべきことなのです」
「そうですか」
確かにそうかも知れないけど。
それでもここまで攻めてくるようなら、構わないよな。
夕飯までドローンで町中の様子を見ることにした。
既に魔物の撃退もあらかた終わり、残党討伐と後処理をしているようだ。
多少家に被害があるみたいだけど、怪我人だけで重傷者や死人は居ないっぽい。
一安心だ。
夕飯に呼ばれたが、心琴さんの姿が見えない。
あのまま警戒に努めているのかな。
「お客人、1つ尋ねるが、よいか?」
食事を終え、離れに戻ろうとしたら呼び止められてしまった。
「なんでしょう?」
「お主らの中に炎の獣を使えておる者は居らぬか?」
「炎の獣……ですか」
「防衛隊からの報告での、未確認の炎の獣が魔物を倒したというのだ。お陰で被害も前回より少なかった。お主らが助力してくれたのか?」
炎の獣……そういえば炎を纏った鎌鼬が暴れていたな。
そのことか。
エイルに相談しようにも、通信ができないから無理だ。
素直に話したものか……恩を売っておく方がいいか。
あ、でも時子が近くに居ると召喚できなくなるんだっけ。
それに鎌鼬は風の精霊。火の精霊じゃない。
バレても言い訳ができる。
「いえ、心当たりはありません」
「無い……か。ふむ」
う、誤魔化しきれていない感じ?
ジッと見つめられている。
分かっていてあえて聞いたのかも。
それでもシラを切るしかない。
耐えるんだ。
「いや、呼び止めてすまなかった」
ほっ、視線を外してくれたぞ。
ヘビに睨まれたカエル状態だったからな。
生きた心地がしなかった。
「いえ、失礼します」
セーフ……かな。
離れに戻ると、みんなが居た。
なんでも今日からは全員離れで過ごしてほしいとのこと。
若い2人には申し訳ないがという、余計な一言も添えられていた。
だから営みません!
やっぱり魔物の襲撃が関係してのことだろう。
一さんも予想外と言っていた。
警戒するに越したことはない。
タイムもドローンを2匹飛ばして警戒している。
いまのところ新手は何処にも確認ができない。
船周辺も特に変化無しだ。
明日に備え、寝るとしよう。
エイル、大人しく寝てくれよ。
ところで、布団を敷いてくれたのはありがたいんだけど、なんで仕切り――屏風かな――が置いてあるんだ?
多分こっちの布団は昨日のだから、俺と時子のだろう。
並んで敷かれている少し小さい布団は鈴ちゃんの分かな。
その横に仕切りがあって、みんなの分……3人分の布団が敷いてある。
要らない配慮だなー。
事情を知らないんだから、仕方がないか。
でもごめんなさい。
どうせなら3人で寝られる大きな布団に変えてほしかった。
それでも今までと比べたら広いから文句は言えない。
3人並んで手を繋いで寝る。
鈴ちゃんは疲れていたのか、布団に入る前からコックリしていたから、絵本をねだる暇も無く寝てしまった。
『なにをしているんだ?』
『お布団が余っているようなので、ここで寝ようかと存じたのでございます』
『そこは鈴の布団だ。余っているわけじゃないっ』
『でございますが……』
『大体手足が出ているじゃないかっ』
『布団が小さいからでございます』
『分かっているならあっちで寝ろっ。じゃないと簀巻きにして庭に放り投げるぞ』
『うう……』
なにを考えているんだか。
エイルは大人しく寝ているというのに……手間を増やすな。
次回から新展開です




