表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/119

第39話 限界は超えるためにあるのではない

「鈴、アニカ、無事か!」

「モナカくん! 大丈夫だよ。さっきまで鎌鼬(ワールウィンド)が守ってくれてたから」

「さっきまで?」

「うん。火蜥蜴(サラマンダー)泥猪(マッドボア)も居たんだ。龍魚(リューギョ)は偵察をしてくれてたんだ。モナカ君たちが戻ってくるまでは」

「今は?」

「もう、声もなにも聞こえないよ」

「そうか……」


 俺たちが……時子が戻ってくるまでは……か。

 やっぱりアレはそうだったんだ。


「アニカ、すまないが鈴は何処に居るんだ?」

「多分ナームコさんと学者の方と一緒に奥で隠れてると思うよ」

「ナームコと……学者?」

「古代語を教えてほしいって訪ねてきたんだ」

「あーそういえばそんなことを村長(むらおさ)が言っていたな」

「モナカさん、今〝学者〟と聞こえたのですが、まさか……」

「多分村長(むらおさ)が仰っていた言語学者のことですね。奥に居るみたいです」

「あれほど来てはいけないと釘を刺したのに……ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「いえ、こちらこそエイルが非協力的ですみません」

「うるさいわね。いい加減、降ろしなさいよ!」

「ダメだ。事が収まるまで大人しく担がれていろ」

「ふざけるんじゃないわよ。おトイレにも行けないじゃない!」

「我慢しろ」

「無理!」

「ならこのまましろ」

「っっっ!」

「そう言えば降ろしてもらえると思ったか。甘いんだよ」

「バカッ! 知らないからね」


 ふっ、たまには飼い犬に手を噛まれてろってんだ。

 いつも振り回されるだけだと思ったら、大間違いだぞ。


「モナカくん、古代語については鈴ちゃんが教えてるんだ」

「鈴が?!」


 確かにエイルと会話できるくらいだから、知ってはいるんだろうけど。

 通訳と教えることは別物だぞ。

 鈴ちゃんにできるのか?


「どうやら鈴が学者さんに教えているらしいです」

「なんということを……重ね重ね、ご迷惑をおかけして申し訳ございません」

「いえ。むしろ鈴がちゃんと教えられているか不安です。それで、ナームコはなにをしているんだ?」

「交渉役? 付き添い? そんな感じかな」

「曖昧だな」

「ごめん。魔物が来てからはそっちに集中してたから。気がついたら3人とも居なかったんだ」

「2人を守ってくれてあり――」

「兄様っ! ご無事でお戻りでございますかっ」


 あー、奥から五月蠅いのが出てきたぞ。

 それから鈴ちゃんと……あれが学者さんかな……も一緒に出てきた。


「鈴! 学者さんも。怪我はないか?」

「兄様?!」

「うんっ! パパも平気?」

「ああ、なんともないぞ」

「ここには来るなと言ったでしょ。どうして来たんですか」

「申し訳ありません。答えがそこにあると思ったら、つい」

「ついではありません。ご迷惑じゃないですか」

「……はい」

「懲罰房は免れぬと思ってください」

「……はい」

(はじめ)さん、なにもそこまで」

「いえ、甘やかしてはまたご迷惑をおかけすることになります。見せしめとしても必要なことです」


 見せしめ……か。

 上に立つというのも大変だな。


「なに生(ぬり)ぃ言い方してんだ。もっとビシッと言え!」

「言ってるよぉ」

「言ってねーだろがよ!」

「もー、心琴(みこと)ちゃんはもう少し綺麗な言葉にしなよ。可愛い顔が台無しだよ」

「なっ……顔は関けぇ()ぇだろ。バカ(はじめ)


 またイチャついている。

 なんだかなぁ。


心琴(みこと)ちゃん」

「わーってる! 警戒してるってぇの!」

「うん、よし」


 心琴(みこと)さんは離れに着いたときから庭で周囲の警戒をしている。

 本家の方はいいのか?

 単純に(はじめ)さんの居るところを守っているだけかな。


「エイルさん、案内も途中な上、ご迷惑までおかけしてしまって、本当になんとお詫びをしたらいいか」

「……」

「僕にできることでしたら、なんでも仰ってください」

「……」

「おいエイル、しがみ付いていないでなんとか言ったらどうだ?」

「……」


 本当にどうしたんだ?

 〝なんでも〟なんて危険なワードに反応しないなんて。

 てっきり「立入禁止区域に連れてって」とか言うものだとばかり……

 というか、さっきから凄い力でしがみ付いてくるぞ。

 担がれていることへの報復か?


「エイル、なにしてるんだよ」

「……ゆら……さな……くっ」

「え? なに?」

「ダメ……もう……」


 〝ダメ〟? 〝もう〟?

 なんの話だ?


「マスター」

「モナカ」

「ん?」

「「エイルさん、ホントに限界なんじゃない?」」

「なにが限界だって?」

「「おトイレ」」

「……え?」

次回は入れる話です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ