表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/119

第34話 重いわけがない

 心琴(みこと)さんを先頭に、来た道を引き返す。

 さっきまでの呑気な雰囲気と違って、緊張感が伝わってくる。


『モナカくん』

『急いで戻るぞ』

『このどさくさに紛れて行くわよ』

『何処に?』


 なんて聞くまでもないか。


『立入禁止区域に決まっているでしょ』

『バカ言え。今はそれどころじゃないだろ』

『千載一遇のチャンスなのよ』

『みんなを見捨てるのか』

『フブキが居るわ』

『フブキは最後の手段だろ。回りに冷気を撒き散らさなくなっても、戦闘で共闘なんてまだ無理だ。味方への被害の方が酷くなるぞ』

『ナームコさんの石人形(ゴーレム)も居るじゃない』

石人形(ゴーレム)は船の対人装備になってますから、無理ですよ』

『そうなのか?』

『うん。タイムも手伝ったから』

『エイル、悪いが今はみんなの方が心配だ。戻るぞ』

『雇い主の言うことが聞けないの!』


 足を止め、そんなことを叫んだ。


『なにを言い出すんだ?』


 独り残すわけにもいかず、俺も足を止める。


『もう一度言うわ。雇い主の言うことが聞けないの!』


 エイルがそんなことを言うのは初めてだ。

 幾らお父さんのことが心配だからって、余裕なさ過ぎだろ。


『本気で言っているのか?』

『当たり前よ』

『なにを言っているか分かっているのか?』

『分かっていないのはモナカくんの方でしょ』

「どうかしましたか?」

「おい、なにしてやがる! さっさと行くぞ」

『エイル、わがままを言うな』

『違うわ。私はモナカくんに仕事を命令しているだけよ。立場は分かっているわよね』

『お前……』


 完全に周りが見えなくなってやがる。

 こんな命令、従うわけにはいかない。


『分かった。急ぐぞ』

『えっ?』


 俺は右手でエイルを担ぐと、再び歩き出した。


『ちょっと! 急ぐなら走りなさいよ』

『ああ、急いで戻るぞ』

『戻っ? モナカくん!』

「どうかしたんですか?」

「なんか(ある)(いて)っ……くのに疲れたらしいので」

「……そうは見えませんが」


 めちゃくちゃ暴れ痛っ、いるからな。


「気にしないでください。急ぎましょう」

「急ぐなら走るぞ。遅れるな!」

「あ、心琴(みこと)ちゃん! 待ってよ」

「時子、辛かったら言えよ」

「……私も担ぐの?」

「暴れないならおんぶするよ」

「……お願いするわ」

「よし、乗れ! しっかり掴まっていろよ」


 時子を背負って走り出す。

 エイルが暴れてわめくが無視して痛っ! 無視して心琴(みこと)さんに痛いって! 付いていく。

 幾らお前の力か強くても、パワーアップした右手で押さえられないわけがない。

 とはいえ、手足は自由だ。

 容赦なく叩くわ蹴るわわめくわと暴れまくる。


『暴れるのは構わないが、時子を叩くなよ』

『なら降ろしなさいっ! 私1人でも行くわ』

『行かせねーよ』

『私の言うことが――』

『あー聞けないね。減俸でも厳罰でも解雇でも好きにしろ』

『フブキのご飯を抜くわよ』

『う……』

「おい、足を止めるな。重いってんなら1人担いでやろうか」

「バカ言え。時子が重いわけないだろ」

「私は重いっていうの!」

『抜きたきゃ抜け! この人で無し』

『……』


 すまんフブキ。我慢してくれ。

 今回ばかりは従うわけにはいかないんだ。

 とにかく急ぐぞ。

次回は留守番組の話です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ