表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/119

第33話 招かれざる客

 午後は農業区を回ることにした。

 居住区と比べて家と家の距離が遠い。

 歩いて回るのは骨が折れそうだ。

 その代わり、納屋だ馬小屋だ牛小屋だと、隠れるところは沢山ある。

 ……馬や牛が居るのか。

 となるとおかずの肉は牛か豚ってところか。

 こいつらも毒素で汚染されているってこと?

 ここで生きている以上、ナームコの言うとおりならそういうことだ。

 魔獣化しないのか?

 魔獣(オオカミ)とは全然違うな。

 ベースとなる動物が違うからか?

 エイルも驚きを隠せないようだ。

 それもそうか。

 結界の中でオオネズミ以外の肉なんて見たことがない。

 あるにはあるらしいが、かなりの高級品だって聞いたことがある。

 こっちは先日の魔物の被害が少ないらしく、壊れた建物は見かけなかった。


『エイル、どうだ?』

『こっちはなにも感じないわ。やっぱりあの先に居る可能性が高いみたい』

『そうか……』


 こりゃ本当に心琴(みこと)さんと手合わせしなきゃならないかも。

 なんとか戦わずに済む方法は無いかな。


「しかし、のどかな風景だな。町中(まちなか)と違って静かだし。なにより広々している。これ、トウモロコシ畑か?」

「そうですね。あちらには小麦畑もありますよ。この先には稲畑もあります」

「稲畑?」

「お米を作っている畑です」

「ああ、田んぼのことか」


 稲畑なんて、変わった言い方するな。

 と思ったんだけど……なんか田んぼっぽくない?


「ここが田んぼですか?」

「はい、ここが稲畑です」


 青々と育った稲? が生えている……のか?

 テレビで見た田んぼみたいに水がない。


「日照りが続いたんですか?」

「最近雨は降っていませんが、今の時期ならこんなものですね。特におかしなことにはなっていません」

「水は張らなくていいんですか?」

「張る? えーと、何処にでしょうか」

「モナカくん、ここは水稲(すいとう)じゃなくて陸稲(りくとう)なのだと思うわ」

「……え?」


 スイトウ? リクトウ?

 なんだそれは。


「水稲と陸稲。モナカくんが言っているのは水稲のことね。水を張ってそこで育てるんでしょ」

「ああ。そういうもんだろ」

「陸稲は水を張らずに育てる稲のことよ」

「そんな方法があるのか!」

(はじめ)さん、そうですよね」

「えーと、水を張って育てるって、なんですか?」

「知らないの?!」


 なんてこった。

 稲は田んぼに水を張って育てるのだとばかり思っていたけど、畑みたいに育てる稲もあるのか。

 異世界独特の育て方かな。

 (はじめ)さんは田んぼを知らないみたいだし。

 エイルはどうせ勇者小説で知ったんだろうし。

 勇者小説、万能過ぎるぞ。


 様々な畑を見た。

 どれもこれも家庭菜園のようにこじんまりとしたものではなく、一面に同じ野菜が植えられている。

 知っている野菜によく似たものが多いが、時々よく分からないものも植えられている。

 俺が知らないだけかも知れないけど。

 そんな景色を眺めながら散歩をする。

 エイルは相変わらず上の空で、特に探している感じもしない。

 痕跡とやらが感じられないんだろう。

 完全に畑作の見学会だ。

 しかしそれも1時間ほどで強制終了となった。

 心琴(みこと)さんの携帯に連絡が入った。

 携帯電話、あるんだ。


「……分かった。警戒を怠るな。すぐ戻る」

「来たんだね」

「ああ、急いで戻るぞ」

「なにかあったんですか?」

「はい。済みませんが、今日はここまでです。戻りましょう」


 なにがあったのかは教えてくれないのか。

 心琴(みこと)さんに連絡が入ったってことは、防衛隊が出動するようななにかってことだよな。


『タイム、もしかして魔物か?』

『うん、見て』


 ドローン(トンボ)に離れを見守ってもらっていたが、思わぬことで役に立ったな。

 場所は離れではなく、村と森の境か。

 船が置いてある場所とも違う。

 映像には羽で飛んでいる……あれはなんだ?

 少なくとも鳥ではない。

 ヘビ? ミミズ?

 細長いクネクネしたものに羽が生えている。

 かと思えば、凸凹な球状のものに幾つも羽が不規則に生えているものも居る。

 なんであれで飛べるんだよ。

 地面には不定形に薄く広がった液状? のなにかが這いずり回っている。

 時折触手のようなものを伸ばして村人――防衛隊員かな――を襲っている。


『戦況は?』

『トラップで殆ど撃退できたけど、突破してきた一部が暴れてるみたい。さっき始まったばかりだからよく分かんないよ』

サムライ(タイム)は出られるか?』

『ここからだと遠すぎるし、あんな大飯食らいは出せないよ』

『大飯食らいは言いすぎなのでありんす!』

『だから出てくるなっ!』

『むぎゅっ! ひ、酷いのであり――』


 ……えーと。サムライ(タイム)、ごめん。

 はあー、戻るまでなにもできなさそうだ。

次回は時子とエイル、どっちが重い?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ