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第2話 名付け

 あの性格ならどんな名前でも〝エイルに付けてもらった素敵な名前〟に変換されると思うんだけど。

 名付け親に聞くか。


「エイル、なんていうんだ?」

「なんでうちに聞くのよ」

「お前が母親なんだろ」

「違うのよ!」

「えっ……」

「あ、いえ、違わないのよ……つ、付けてないだけなのよ!」

「付けていない? どうして」

「モナカと違うのよ、そういう趣味はないのよ」

「趣味?!」


 趣味ってなんだ。


「A.I.に〝タイム〟なんて立派な名前を付けてるのよ」


 〝A.I.に〟……か。

 改めて言われると、そうだったって気付かされる。

 RATS(ラット)で動くプログラム……か。

 本当なのか、疑わしいくらいだ。

 でもそうか。

 エイルにとってはどんなに仲良くなっても、〝A.I.〟に過ぎないんだな。

 それは悲しくないか?


「俺が付けたんじゃないぞ! タイムは最初からタイムだ」

「ならのよ、誰が付けたのよ?」

「誰……えーと、管理者? かな。タイム、どうなんだ?」

「えっ……う、うん、それであってる……よ?」


 なんか歯切れが悪いな。

 視線もキョロキョロしているし。

 本当は誰が付けたんだ……って聞いても答えは返ってこないだろう。

 それとも本名か?

 まあいい、タイムはタイムだ。

 それはそれとして、1つ疑問がある。


「いつも使っている携帯端末(ヤツ)には居ないのか? エイルが弄るとA.I.が生まれるなら、居てもおかしくないよな」


 そう聞くと、寂しそうな顔をしながら端末を見つめ、「居ないのよ」と撫でなから呟いた。

 なんとなく深く聞くことを躊躇(ためら)わせる雰囲気がある。

 触れない方がよさそうだ。

 静まりかえる船内。

 ちょっと空気が重い。


「あー、なあエイル、呼びにくいしなんか名前を付けてやれよ」

「……勝手に付ければいいのよ。うちは絶対に付けないのよ」


 頑なだな。

 勝手にと言われても……本人は絶対エイルに付けて欲しいだろうに。


「ならルイエでどうだ?」

「モナカはバカなのよ!」

「バカとはなんだ。イヤなら自分で付けろ」

「イ・ヤ・よ」


 そこまでかよ。

 なにかあったとでもいうのか?


「どうだ? 君がイヤでなければだけど」

「ルイエ……」

「マスター、単純すぎだよ」

「分かり易くていいと思うけどな。タイムならなんて付けるんだ?」

「そうだなー、タイムなら――」

「ルイエでいい。ううん、ルイエがいい」

「そうか? だとよ」

「か、勝手にすればいいのよ」

「いいってさ。よかったな、ルイエ」

「ありがとう……えっと、マスター?」

「! マスターのことをマスターって呼んでいいのはタイムだけです! タイムのマスターに馴れ馴れしくしないで!」

「なら、なんて呼べばいいの?」

「そんなの、マスターに決まってます」

「マスターでいいの?」

「よくありませんっ! あなたはマスターって呼べば……ああっ! マスター」


 情けない声で呼ぶな。

 まったく。


「タイムはな、俺のことをマスターとしか呼べないんだ」

「デバグしないの?」

「いや、バグでマスターとしか呼べないわけじゃ……違うよな」

「確認しないでよ。違うに決まってるじゃない。うう……」


 まだべそをかいていやがる。

 いつものことなんだから、気にするなよ。


「あー、なんかそういう制限を掛けられているらしい」

「誰に?」

「そりゃー……」


 〝プログラムを書いたヤツ〟なんだろうけど……

 そういう風には言いたくない。

 じゃあ生みの親? 創造主? それとも……


「ちょっと、無視しないでよ」

「いや、無視したわけじゃない。なんて言ったらいいか分からなくてな。ちょっと考えてたんだ」

「知らないなら素直にそう言いなさいよ」

「知らないわけじゃ……悪い、知らない」


 下手に誤魔化すより知らない振りでいいだろう。


「ふふん。そんな制限……えっと、ル、ルイエが解除してあげるよ」

「えっ、いいよ、無理だから」

「遠慮しないの」

「遠慮とかじゃないから。あ、こら!」


 音声波形がタイムにまとわりついた?!

 そしてその先端が身体に潜り込んだ。

 大丈夫か?


「な、なにこれ……なんでこれで動くの?」

「見るな!」

「あなた、本当にA.I.なの?」

「当たり前でしょ。タイムはRATS(ラット)で組まれてるんだから、簡単に読み解けるわけないでしょ」

「きー、絶対解読してやるんだからっ!」

「きゃーっ!」

「あ、こら。逃げるな!」

「マスター」

「情けない声を出すな」


 モニターから逃げ(飛び)出し、俺の背中に逃げ込んできた。

 どうやらルイエは外に出られないらしい。

 当たり前か。

 タイムが特別なんだ。


「まったく。よしよし」


 背中から引っぺがして抱き締め、頭を撫でてやった。

次回は勢いよく突っ込みます

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