第26話 武装解除
朝ご飯はみんなで一斉に食べ始めた。
昨日のようになにかを待つということはなかった。
「なに、今や廃れた風習。やっている家庭は少ない。気にするな」
「そうなんですか」
一体どんな風習なんだろう。
朝ご飯を食べ終えた後、村の案内について話をすることになった。
前回同様、一さんと心琴さんの分の座布団が無い。
「鈴、無理して正座しなくていいんだぞ」
「平気だよ」
俺は無理せず最初からあぐらをかいている。
鈴ちゃんは何処で正座なんか覚えたんだろう。
そして俺と時子の間に座ってとても満足そうだ。
絶対3人で手を繋いでいるからだよね。
けっして前回は俺の背中で寝ていただけだから……とかじゃない。
気にしていない、なんてことはないのは分かっている。
鈴ちゃんだもの。
でもその笑顔……パパ、信じていいよな。
案内をしてくれるのは一さんと心琴さんだ。
まさかこの2人とは思わなかったぞ。
案内は一さんがして、心琴さんは護衛だそうだ。
俺たちから一さんを守るってことか?
とことん警戒されている気がする。
なのでイヤホンは心琴さんが付けることになった。
村長じゃないんだ。
一さんは一応古代語が分かるからそうするらしい。
居残り組は離れで過ごすようにとのこと。
1カ所に纏めた方が監視しやすいからな。
そういうことなのだろう。
鈴ちゃんは付いてきたそうだったけど、ナームコがなにか言ったら大人しくなってしまった。
あの2人の間になにがあるっていうんだろう。
聞いてもはぐらかされるんだよな。
鈴ちゃんも教えてくれないし。
パパ寂しいぞ。
「武器類の携帯もご遠慮願おう」
「えっ」
「村の中を歩くのだ。村の規則に従ってもらうぞ」
そう来たか。
確かに理に適っている。
とはいえ武装放棄しろと言われたのと同義だ。
つまりエイルは単発式詠唱銃を置いていけということ。
俺と時子は……難しい問題だな。
「分かったわ」
条件を呑むのか。
俺は置いていくこと自体ができないぞ。
「アニカさん、持ってて」
「いいの?」
「仕方ないわ」
「分かったよ」
「一応身体検査をさせてもらう。よいな」
そこまでするのか!
「好きになさい」
うわ……ここまで為すがままなエイルも珍しい。
そこまでしてでも……ってことか。
俺を一さんが、2人を心琴さんが検査する。
検査されても出てくるはずも無い。
黒埜は携帯の中だ。
仮に取り上げられても無意味だし。
「これはなんでしょう?」
「これは工具です」
ん? エイルがなにやら揉めている?
あいつ他に武器なんか持っていたっけ。
「これらも置いていっていただきたい」
「これは武器ではありません」
「人捜しにも不必要だと思います」
「それは……」
ああ、いつも持ち歩いている工具類に文句を言われているのか。
確かに人を殺そうと思えばできなくもないだろうけどさー。
さすがに言いがかりが過ぎるだろ。
「分かりました」
折れただと?!
絶対食い下がると思ったのに、なんで??
お父さんのことになると、そこまで耐えられるのか。
普段なら絶対言い返しているはずだ。
「アニカさん、これもお願い」
「はい。うわっ、なにこれ! お、重い……」
脱いだベストをアニカが受け取ったけど、落としそうになったぞ。
あれってそんなに重いのか?
どんだけ工具が詰まっているんだよ。
「あとこれも」
「まだあるんですか?!」
腰のポーチやズボンの工具も身ぐるみ全部渡している。
どんだけ持ち歩いているんだよ。
動きにくくないのか?
「お姉様っ、置いていかないで!」
あいつ携帯端末まで置いていくのかよ。
なんとか連れてってあげられないのか。
離ればなれは可哀想だ。
『一時的に携帯に住まわせてやれないのか?』
『無理だよ。タイムとは全く違うプログラムが動くんだから、処理が追いつかなくなるよ』
『そうなのか』
そこをなんとか……と言いたいところだが、それでみんなを守れなかったら本末転倒だ。
我慢してもらうしかないな。
「では、気をつけてゆかれるがよい。分からないことは一に聞きなさい。一、分かっておるな」
「はい」
なんか釘刺したぞ。
やっぱり案内役とは名ばかりの監視役か。
まさか人気の無いところに連れ込んでの心琴さんを使った各個撃破?!
大丈夫、そうなっても俺なら守れる。
きっと……いや、絶対に守ってみせる。
次回はイチャイチャしてるよね




