表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/119

第24話 新着メール

 あーいい湯だった。

 タイムはまた小さい身体(3頭身)に戻って肩に座っている。

 その方が自然か。


「長かったわね」

「そうか? 待たせちまったみたいだな」


 って、なにをだ。

 自分で言っていて分からないぞ。

 いや、営まないからな!


「……随分と楽しかったようね」

「え?」

「……お姉ちゃんと一緒に入ってたんでしょ」

「いや、入っていないぞ」

「……ウソ」

「ウソじゃないさ。なあ!」

「え? あ、う、うん。小さいまま肩に乗ってただけだよ。大きくなんてなってないよ」


 それはある意味自白したのと変わらなくないか?


「そうなんだよー。それで走り回るもんだから……その」

「ちょっと騒いじゃった……みたいな?」

「「あは、あはははは……は」」

「……そ」


 信じた……のか?

 いや、疑われるよりいいけど。


「時子はなにしていたんだ?」


 風呂から出てきたとき、携帯(ケータイ)を弄っていた。


「別に。先輩にメールを送ってただけだよ」

「え、ウソ! 着信なんて……」

「着信?」

「ううん、なんでもないよ。あは、ははは」

「着信するわけないよ。携帯(スマホ)じゃなくてパソコンの方に送ったんだから」

「そ、そうなんだ」

「お姉ちゃんも知ってるでしょ。パソコンのメアド」

「知ってるけど……送ったことなんか1度も無かったよね」

「だって携帯(スマホ)に送ったら……」


 ……ん?

 なんか、見られている?


「送ったら?」

「……見てないの?」

「なにを?」

魔獣(オオカミ)を退治した後、メール受信してたよね」


 魔獣(オオカミ)……あれか。

 やっぱり誤魔化せていなかったか。

 仕方ない、話すか。


「ああ。でも読んでいない」

「どうして読んでないの?」

「フォルダに鍵が掛かっているんだよ」

「鍵?」

「そ。だから読めないんだ」

「自分で設定したのに?」

「それも分からない。思い出だから消されたのか、実は俺の携帯(スマホ)じゃないから知らないだけなのか、分からないんだよ。なにもかも。ただ1つだけはっきりしていることがある」

「なに?」

「あの日から1度もメールが届いていない」

「それ、本……当?」

「だよな、タイム」

「とっ……」


 あれ、黙りこくっちゃったぞ。

 どうしたんだ?

 〝届いてないよ〟って言うだけだろ。


「タイム?」

「届いてたよ」

「……はあ?! いやいや、届いていないよな」

「届いてたよ。届いてないなんてウソ()いたらダメだよ」

「いやいやいや、本当に届いていないって。見せても……って、鍵が掛かっているから見せられないんだっけ。あ、そうだ通知! 通知無いぞ」

「新着通知なんて簡単に消せるもん」

「そうだけど……どうしたんだよ、タイム」

「どうかしてるのはマスターだよ」

「あ、タイム!」


 携帯(スマホ)の中に逃げやがった。


「ウソつき」

「へ?! いやいや、本当だって。俺よりタイムを信じるのか?」

「当たり前でしょ。ホントだっていうなら、メールを見せてよ」

「だから開けられないんだって」

「ウソつき」

「本当だって!」

「……どっちでもいいわ」

「よくない!」

「いいのよ。あなたがどっちかなんて。私はもう2度と……」


 それっきりうつむいて黙りこくってしまった。

 確かにメールなんか来ていないって嘘は()いていたけど、あれから受信していないのは本当だ。

 タイムはなんであんな嘘を()いたんだ?

 いや、そんなことより俺よりタイムの方を信じられたのがキツい。

 そりゃお姉さんなんだからそっちを信用するのは分かるけど……

 まだそこまでのレベルに到達していないってことだ。

 ま、一時期避けられていたんだから信用は1度地に落ちたと考えて、また最初から築き上げるしかない。

 ただ避けられていたときと違って、こんな時でも手を離さず握ってくれていることだ。

 義務で握っているだけ……とか思っちゃダメだけど。

 はぁぁぁぁぁっ、よし!


「寝よう。エイルのことだ。朝一から探しに行くだろ」

「モナカはフブキに会いに行きたいだけでしょ」

「……否定はしない」

「ふっ、あなたらしいわ。うん、ごめんね。信じるわ」

「えっ?」

「おやすみなさい」

「あ、ああ。おやすみ」


 急にどうしたんだ?

 評価が変わるようなこと言ったっけ。

 女心って難しい。

 タイムは……引きこもったままか。


『おやすみ』


 しかし返事はなかった。

 明日には機嫌を直してくれるといいけど。

次回は朝飯前です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ