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第22話 綺麗に洗ってあげましょう

「もういいだろう。じゃ、身体を洗うぞ」

「ふえ?!」

「なに驚いているんだよ。まだお湯を掛けただけで洗っていないだろ」

「そ、そうだけど……もうお腹いっぱいかなって。あはははは……」

「なんだそれは。とにかく、汚れが落ちていないんだから洗うぞ」

「ふええ?! 何処何処何処??」

「大人しくしろ。洗えないだろ」

「ウソだ。だってもう全部元に戻したもん」


 語るに落ちたな。

 でも乗ってはやらんぞ。スルーだ。


「こら、大人しくしろ」

「や、その……手で擦ったから落ちた……ってことでご勘弁願えませんか」


 しかし俺は満面の笑みで答えてやった。


「ならんな」

「ひぃぃ!」

「ほら動くな。洗いにくいだろ」

「だ、だってぇ。キャッ、何処触ってるの?!」

「タイムが動くからだ。変なところ触られたくなかったら、動くな」

「無理だよぉ。ひゃあ!」


 だから暴れるなって言っているのに。


「自分でできるよぉ」

「遠慮するな。日頃の(ねぎら)いだと思って洗われなさい」

「労いなんか要らないよっ」


 もーヤケだ。

 こうなったら全身くまなく洗ってやる!

 そうすれば変なところもなにも無いよな。


「マスターへのご褒美だと思って洗われなさいっ」

「それってどういう意っきゃー、そこはダメっ!」

「うるさい! 今更だろ」

「今更じゃないよぉ。そこはデリケートなんだから! タイムだって洗わなかったでしょ」

「安心しろ。アニカで洗い慣れている」

「こんなこと慣れないでっ!」

「観念しろ」

「いーやー!」

「お姉ちゃん、どうかしたの?」

「「……あ」」


 ヤバい、時子が脱衣所まで様子を見に来やがった。


「な、なんでもないよ。ちょっと、マスターとふざけてただけ……だ……よ?」

「そ、そうなんだ。タイムが走り回るから観念しろーって」

「へ?!」

『〝へ〟じゃなくて! 合わせろよ』

「あ……そうそう! で、掴まりそうだったからいーやーって叫んじゃって……ね?」

「ふーん」

「ごめんな。うるさかったよな」

「別に……お姉ちゃんとは一緒に入るんだ……」

「え、なに?」

「な・ん・で・も・ない!」


 と同時に勢いよく扉の閉まる音がした。

 部屋に戻った……のか?

 危ない危ない。

 見られなくてよかったー。


『だから騒ぐなと』

『言ってない』

『とにかく、続けるぞ』

『あ、うん……うん? いや、続けなくていいよっ』

『もう少しで終わりなんだから。そんなに嫌なら中に逃げればいいだろ』

『う……マスターのバカ』


 やっと観念したのか、大人しくなった。

 よし、さっさと洗うぞ。

 サクッと終わらせ、お湯で流す。

 うん、さっきまで汚れていたけどピカピカだ。

 ま、洗い残しがあったら洗うだけだけど。


「っふふ」

「なに?」

「いや、洗い残しは無いかなと思ってな」

「無いよっ」

「だろうな。っははは」

「もーバカッ」

「じゃ、頭を洗うぞ」

「頭も洗うの?!」

「洗ってもらうつもりだったんだろ。それに俺の頭を洗ってくれただろ」

「分かったよぅ」


 しかしどうやって洗う?

 時子の時は真ん中だけだったけど、今回は頭の先から先っぽまで……つまりくるぶしまでってことだ。

 3人で入っていたときは髪どころか身体も洗ってなかったからな。

 セッケンで丁寧に洗うしかないんだけど。

 いつになったら風呂に入れるんだ?

 ま、これもひとつの楽しみ方か。


 髪を洗っている間、タイムは大人しくしていた。

 何度も掛けて泡を全て流すと、ツヤッツヤの髪が現れた。

 気のせいか、洗う前より輝いて見える。

 お湯を掛けたはずなのに、もうサラサラだ。

 指通りが気持ちいい。

 これがシルクの肌触りというヤツか。


「いつまで触ってるの?」

「ああごめんごめん。じゃ入ろうか」

「う、うん」


 普段ならシャワーをさっと浴びて出るところ、今回は風呂につかるぞ!

 飛び込みたいところだが、ゆっくりと右足から入る。

 丁度いい湯加減だ。

 入れてからずいぶん経つだろうに、冷めていないぞ。

 お湯も結構使ったと思うけど、減った感じがしない。

 肩までつかると、お湯が少し溢れた。

 波打つ水面(みなも)が縁で反射して戻ってくる。

 ふー、いいねー。

 身体の芯まで温まる感じだ。

 シャワーでは絶対に得られない快感だぞ。

 って、タイムは?

 あ、あんなところに居る。


「そんな遠くに入っていないで、こっちに来いよ」

「い、いいよ。折角広いんだから、広く使おうよ」


 そうかそうか。

 なら俺が近づくまでだ。


「ちょっ、こっち来ないでよ」

「っはは、逃げるな逃げるな。一緒に入ろうぜ」

「もう入ってるよぅ」


 しゃがみ歩きじゃ追いつかないな。

 立ち上がって追いかけるか。


「にゃっ?! バカッ!」


 ん? 後ろを向いて手で顔を覆ってしまったぞ。

 ふっ、とうとう観念したか。


「っはは、(つっか)まーえた」

「分かったから、しゃがんでよ」

「もうしゃがんだぞ」

「もう、バカ……」


 なに顔を赤らめているんだか。

終わったと思った?

残念、まだ続くんでした

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