表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/119

第21話 言い出したのは誰だ

 さて、それじゃ風呂に――


「じゃ、今度はマスターが洗ってね」

「……なにを?」

「なにをって、タイムをだよ」

「……洗わなくても綺麗だろ。そもそも洗う必要なくないか?」

「アニカさんだって鈴ちゃんだって洗ってあげてたじゃない!」

「そうだけど……」

「ほら、タイムこんなに汚れてるよ」

「そう言われても」

「ちゃんと見てよ!」


 見れるかっ!

 今裸だって忘れていないだろうな。


「ほら!」


 ほらって……うう。

 タイムが見ろって言うから見るんだからな。

 全然やましい気持ちで見るわけじゃないからな。

 だからといって正面切って見ることもできず、横目でチラリと見る。

 その汚れ、画像を貼り付けているだけじゃないのか?

 そこまでして洗ってほしいのか。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……洗ってやるから背中を向けろ。目のやり場に困る」

「こんなぺったんこ見たって興奮しないでしょ!」

「いいから後ろを向け! 洗ってやらないぞ」

「ぶぅー、はぁーい。ふふっ」


 嬉しそうに笑っちゃって。

 そんなに洗ってほしいものなのか?

 洗うのも洗われるのも嫌じゃないけどさ。

 気を取り直して、それじゃ同じようにしますか。

 えーと、まずは手から肩に向かってお湯を掛けるんだっけ。

 で、次は足から太ももか。背中越しだと掛けづらい……かといって前に回れないけどさ。

 次は腰からお腹だ。お腹掛けづらっ。タイムみたいに……は止めておくか。


「マスター、ちゃんと掛けてよ」


 まさかそれってタイムがしたのと同じようにお湯を掛けろと?

 それを俺にやれと?


「ぷっ。ねぇ早くぅん。タイムがぁ、マスターにぃ、したように。っひひ」


 甘ったるい声で言うな!

 やるしかないのか。


「手と足だってぇ、ちゃあんと掛かってないんだよお? くすっ」


 全部やり直せと?!

 手を使って? 手足を撫で回すように? お腹をさするように?

 確かにタイムは掛けるというか手で洗い流す感じだったけど。

 お陰で変な声が出そうになったけど!


「ねぇってばぁ。あはっ」


 やるしかないのか。

 タイムは片手を上げて待ち構えている。

 やり直せと圧力を掛けてくる。

 手で撫でながら? お湯を伸ばすように?

 ……やるしかない。

 タイムはしてくれたわけだし、同じことをやり返してあげるだけだ。

 手を掴み、お湯を掛けながら撫でる。

 アニカでいつもやっていることだ。

 特別なことじゃない。

 次は足だ。

 太ももに手を掛けて……って、ビクッとするな!

 やれって言ったのはタイムだろ。

 意識しないようにしたのに、そんな反応されたらしちゃうだろ。

 と、とにかく足も手と同じように撫でながらお湯を掛けてっと。

 で、次はいよいよ腰からお腹――


「ちゃんと内側も掛けてよ。ふふっ」


 それは内ももを撫で回せという意味か?!

 あえて避けたのに、タイムからぶっ込んでくるとか……正気か。

 ならやるからな!

 内ももに手を掛ける。


「ひゃっ。ウソっ」

「動くな。タイムがやれって言ったんだぞ」

「わ、分かってるよ」


 分かってるならビクつかないでくれ。

 平静を装うのが難しくなってくる。

 よし、文句を言われないように念入りにやってやる。

 ゆっくりたっぷり。

 そうそう、内側だけじゃなくて、ちゃんと上も下もやらないとな。

 ふっ、これなら文句あるまい。

 ……無いようだな。

 次は腰回りだ……尻もか。

 腰に掛けながら尻を撫で回……流していく。

 腰に手を当て湯を掛けながら腰と尻を往復しながら撫でる。

 だから腰をのけぞらすな!

 分かっていたことだろ。

 そしてお腹も同様に撫でながら掛ける。

 ぐうの音も出ないみたいだ。

 よしよし、なら次に移ろう。

 肩から背中だ。

 首回りも一緒に掛け流す。

 ええい、背中をよじるな。


「嫌なら()めてもいいんだぞ」

「そんなこと言ってないでしょ」

「なら動くなって言っているだろ」

「だってぇ……動いちゃうんだもん」


 顔を赤らめて言うな。

 アニカですら顔を赤らめたり身体をよじったりしたことなかったんだぞ。

 まあいい、ここまではいい。

 問題は次だ。


「続けていいんだな」

「……うん」

「何処を流すか分かっているんだろうな」

「分かってるよ。どうせこんなの背中の延長ぐらいにしか思ってないんでしょ。ふんっだ」

「そんなわけないだろ」

「……へ?!」


 胸に手を――


「待って待って」

「待たない」


 胸に手を当ててお湯を掛けて流す。


「ひゃっ!」


 身体を縮み込ませて手で胸をガードしやがった。

 ふっ、そんなのお構いなしにやってやる。

 とはいえ、手で隠されては流せないな。


「だってさっきこんなの見ても興奮しないって」

「言ってない」


 言ったのはタイムだ。

 俺は言っていない。


「ウソだ……」

「嘘じゃない。凄く興奮しているぞ」

「ウソウソウソ! や、ヤダ、()めて」

()めない。タイムが言い出したんだからな」

「そんなの、聞いてないよ」

「ほら、手をどかせ。いつまで経っても終わらないぞ。それともそれがお望みか?」

「う……」


 観念したのか、ゆっくりと手を下ろした。

 でもまだ背を丸めている。


「ほら、胸を張れ」


 肩を掴んで背を伸ばし、胸を張らせる。


「ひゃう」

「なんだ。今更恥ずかしいのか?」


 返事がない。

 まあいい。

 もう一度胸に――


「やっぱり無理!」


 また丸まってしまった。

 しょうがないな。自分で言い出した癖に。


「分かった分かった。意地悪して悪かった。でもタイムが悪いんだからな。先に悪乗りしたのはそっちなんだから」

「うー、ごめんなさい」

「ほら、頭流してやるから、胸は自分でやれ」

「う、うん」


 髪を掻きながらお湯を掛ける。

 どちらかというとすすぐ感じか。

 時子同様とても長い髪だ。

 なのに2人とも枝毛の1本もない。

 タイムは当たり前として、時子はどれだけ手入れをしているんだろう。

 想像できないぞ。

まだまだまだまだ終わらんぞー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ