表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/119

第17話 仮面仮夫婦

 食事をしながらなにか聞かれたりするのかと思ったが、特になにもなかった。

 単純に一緒に食べただけだった。

 「おかわりはどうですか」とお母さんに言われた程度で、1回ご飯と味噌汁をいただいた。

 本当はもう少し肉も食べたかったけど、そこは我慢した。

 本当になんの肉だったんだろう。

 豚っぽかったけど……うーん。

 時子も豚だと思ったらしい。

 魚もよく分からなかった。

 川魚っぽかったけど……なんだろう。


「「ごちそうさまでした」」

「あら、もうよろしいんですか?」

「はい。美味しかったです」

「それはよかったわ。朝御飯も張り切って用意しますね」

「ありがとうございます」


 ということで、退散しよう。

 長居しても話すこともないし。

 ポジション的に俺らって侵略者とか征服者とか思われてるだろうし。


「それでは、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

「ふむ。お前たちは仲が良いな」


 立ち上がって部屋を出ようとしたら、そう呼び止められてしまった。


「そうですか?」

「ずっと手を繋いでおるではないか。今もそうだ」

「あー」


 もう癖になっているから気にもしなかったけど、そういえばそうだ。


「離していたのは食事の時だけではないか?」

「そうですね」


 確かに。

 鈴ちゃんをおんぶしていたときも無意識に繋いでいたっけ。

 仲が良いか……と言われると、肯定はできない。

 ついこの間まで避けられていたからな。

 鈴ちゃんが来てからまた普通に会話したりするようになったけど。

 呼び捨てにしたり一緒にシャワー浴びたりと前より親密になった……とも取れなくもない。

 けど何処かぎこちなく感じるのも事実。

 以前とは明らかに違う……気のせいかも知れないけど。

 それが良い方なのか悪い方なのかも分からない。

 まさかこれが恋から愛に変わったというヤツなのか。

 ……なわけないか、っはは。


「それと比べてお前たちは……」


 あーなるほど。

 (はじめ)さんと心琴(みこと)さんの仲の話か。

 2人とも食べる手が止まってしまった。

 (はじめ)さんは苦笑いをしながら心琴(みこと)さんを見た。

 それに対し心琴(みこと)さんは無表情で顔を背けている。

 なんか……ごめんなさい。

 手を繋いでいるのは仲が良いからとか、そんな微笑ましい理由じゃないんです。

 でもそんなこと話せないし、仲が良いってことで押し切るしかない。

 ……今後もずっとそうなるのか。


「呼び止めてすまんかったな」

「いえ。失礼します」

「ゆっくりされるがよい。朝まで誰も近づけさせぬ。多少騒いでも、声は聞こえぬからの」

「はあ……」


 それは営めって意味ですか!

 しませんからね。

 時子もなに顔を赤らめているんだよ。

 勘違いされるだろうが。


 で、離れに戻ってきてみれば、布団が敷いてあった。

 それはいい。

 なんでひと組しか敷いていないんだよ。

 しかも枕が並べて置いてあるし。

 一緒に寝ろと?


「なあ時子」

「うん、この布団」

「狭いよな」

「広いよね」

「「……え?!」」

「いや、狭いだろ。2人でひと組って……そりゃ一応夫婦だけどさ」

「普段寝てるベッドより1.5倍はあるわよ」

「……あ。そういえばそうだ」


 普段は1人用のベッドに無理矢理2人で寝ているんだっけ。

 昨日なんか鈴ちゃんも入れて3人だ。

 それと比べたら広いなんてもんじゃ……待て待て待て。


「騙されるな。普段が普段だからそう感じるだけで、実際には……」

「……実際には?」


 いかんいかん。

 壁耳なんだっけ。


『実際には俺たち夫婦でもなんでもないんだから別々で寝るのが普通なんだぞ。布団はふた組必要だ』

『結局手を繋がなきゃならないんだから、分かれて寝る意味無いよね』

『そうなんだけど!』


 まさかそれを時子から言われるとは……

 タイムが言い出しそうなことなのにな。

 というか、本来なら俺が言わなきゃいけないことだ。


「そうだな。ちょっと広いくらいだな」

「そうよ」

「……え、えーと。他の部屋はなにがあるのかなー」


 ひと部屋ってことはないよな。

 廊下も扉もあるし。

 そういえば引き戸じゃない扉はこっちに来て初めて見るぞ。

 でもこれ、ドアノブじゃなくてつまみみたいなものが付いている。

 これを摘まんで開くのか?

 あれ、押しても引いても開かない。

 まさか引き戸?!

 あ、横に動かしたらつまみだけスライドした。

 お、引いたら開いたぞ。

 ここはトイレか。

 しかも和式だ。

 木の蓋も付いている。

 本当にただの蓋だな。

 鍋の蓋みたいに取れるぞ。

 え、なにこれ。

 穴が開いているだけで水が溜まっていない?

 しかも結構深い。


「トイレ……だよな」

「多分」


 時子も分からないみたいだ。


「水はどうやって流すのかな」

「さぁ……」


 水を流すスイッチもレバーも見当たらない。

 自動で流れるのか?

 自分のタイミングで流せないのはなんかヤだな。


 えーと、こっちの部屋は脱衣所っぽい?

 てことはこの奥は……おお、風呂だ!

 しかも木造だぞ。

 ヒノキ風呂ってヤツか?

 ヒノキじゃないだろうけど。

 既にお湯が張ってあってすぐに入れる。


「風呂だ」

「お風呂だね」


 うん、いい湯加減だ。


「ちゃんとお湯につかれるぞ」

「入りたい……」

「よし、じゃあ寝る前に汗を流そうか」

「ふえ?! あ、う、うん。入ろっか」

「じゃあ先に入れよ。俺は後でいいから」

「うん。……うん? あ、うんそうだねじゃあ先に入らせてもらおうかなっはははは、はは……」

「ん? なんだなんだ、もう湯に当たったのか? 顔が赤いぞ。っははははは」

「バカッ! もー出てってよ!」

「お、おお、悪い悪い」


 なんだよ、急に怒りだして。

 でもあれだ。久しぶりに1人でノンビリ風呂に入れるぞ。

 いままでずぅぅぅぅぅっっっっっっ………………と誰かと一緒に入らないとシャワーを浴びられなかったからな。

 気兼ねなくノンビリできるぅー。

次回からは定番の日常パートです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ