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第14話 捜索条件

 このカップ……持ち手が付いていないぞ。

 しかも結構ごっつい。

 直接持って熱くないのかな。

 ……そこまで熱くない。

 そして一口飲もうとした時だ。


『皆様、飲んではいけないのでございます』

『どうした。毒でも入っているとでも言いたいのか?』

『そんな生やさしいものではないのでございます。これは毒素そのものなのでございます』

『毒素そのもの?! でも村長(むらおさ)はグイッと一飲みで空にしたぞ。俺らのだけ別物だとでも?』

『いいえ、恐らく同じ物だと存じるのでございます』

『ならなんで……』

『まだ詳しくは存じませんが、恐らく彼ら自身が毒素の塊なのだと推測するのでございます』

『どういうことだ?』

『簡単な話なのでございます。わたくしや兄様は元素の塊、そしてエイル様やアニカ様は魔素の塊なのでございます』

『それが毒素で成立するのか?』

『現にしていると存じるしかないのでございます』

『ならここに居るだけで危険なんじゃ……』

『毒素としては安定しているのでございます。でございますからすぐになにかあることはないと存じるのでございます。でございますが、飲食は止めた方がよろしいと存じるのでございます』


 なるほど。

 とはいえ頂かないのも失礼だよな。

 理由を話すと弱点をさらけ出すことにもなる。

 今は俺たちが圧倒的な力を見せたことで優位に立てているだけかも知れない。


『俺と時子は問題ないよな』

『無い……とは言いきれないのでございます』

『分かった』


 ということで、俺は一口グイッと飲み熱っ!

 グイッと飲むのは危険だ。


「兄様!」

「ふーっ、熱かっただけだ。騒ぐな」

「そうではないのでございます」

『慌てるな。落ち着いてそこに座っていろ。顔に出すな』

『……存じたのでございます』


 フーフー冷ましてゆっくりとすすりながら一口飲んでみた。

 っあー、苦っ。渋っ。


『時子はまだ飲む……って、おい!』


 時子も続けて一口飲み込んだ。

 飲むなって言おうとしたのに……気の早いヤツだ。


「美味しいお茶ですね」


 呑気に感想まで述べてやがる。

 万が一は俺1人で十分なんだぞ。


「お口に合って良かったわ。皆さんもどうぞ」


 と言われても……どうしたものか。


「ありがとうございます。ですが、この2人以外は食事制限がありまして、食べる物から飲むものまで決まっているんです」

「え、えーと……あの」


 急になにを言い出すんだ。

 お母さんが戸惑っているじゃないか。


『モナカくん、早く通訳して!』


 ああそっか。

 って、今のを?!


「えーとですね、僕と時子……あ、えー、つ、妻……以外は飲む物と食べる物を厳しく制限されていまして……その……」


 うわー、妻とか言っちまった。

 だ、大丈夫かな。

 怒ってはいないようだけど……なにも言ってこないのが逆に怖く感じてしまう。

 〝なに言ってんのよ!〟とか突っ込んでほしかった。


「あらー、お茶もダメなのかしら」

「すみません」

「いえいえ、ごめんなさいね。そうなると、お夕飯もおふたりの分でいいのかしら」

「あ、いえ。お構いなく」

「遠慮なさらず、食べていってくださいね」

「モナカくん、頂いておきなさい」

「そうか? 分かった。それでは、頂きます」

「こほん。話を戻してもよいかな?」

「あ、はい」

「あらあら、ごめんなさいね。それじゃ、お夕飯の仕度をしてきますね。ふふっ」


 お盆を抱えるとふすまを開けて、「ごゆっくり」と言って出ていった。


「全く、相変わらず緊張感のないヤツだ。騒がしくしてすまなかった」

「いえいえまったく」

「して、如何するつもりか」

「そうですね、村の中を探してみてもよろしいですか?」

「ふむ。そうだな、条件がある」


 やっぱりそう来るか。


「なんでしょう?」

「大勢で歩かれても困る」

「人数を制限すると?」

「そうだ。それと、案内人を付ける」

「案内人ですか」

「歩き回られて、怪我でもされたら厄介なのでな」

「分かりました」


 案内人というより、監視人だろうな。


「私が行くわ」

「通訳が必要だろ。俺も行く」

『マスター、時子も連れて行かなきゃダメだよ』

『時子も?』

『いざというとき、動けないからね』

『そっか』

「私も行きます」

「3人でよろしいですか?」

「できればエイル殿には残って欲しいのだが……」

「どうして私はダメなの!」

「エイル、落ち着け」


 立ち上がろうとしたエイルの手を掴み、座らせた。


「それは何故でしょう」

「実はな、エイル殿は古代語を話すのであろう?」

「そうなのか?」

「え? あ、ああ。ゆ、勇者語のことよ」


 なるほど。

 ……どういうことだ?


「そのことがなにか」

「実は言語学者が是非話がしたいと申しておっての」


 言語学者?!

 エイルの勇者語を?

 それ、大丈夫なのか?

 小説に出てくる架空……でもないのか。


『どうするんだ』

『探しに行くわ』


 ま、そうなるよな。

 〝できれば〟って言っていたし、残る必要は無い。

 とはいえ、協力的に接した方が探しやすいと思うけど。


「どうだろうか」

「私は――」

「兄様、よい手がございます」

「却下だ」

「まだなにも申していないのでございます」

「どうせロクでもないことだろ」

「そんなことはございません。勇者語でございましたら、もう1人エイル様より堪能な方が居られるではございませんか」


 鈴ちゃんのことか。

 確かにそうだけど、まだ子供だぞ。

 話せても、知識はあっても、相手は学者だ。

 子供が相手できるような連中か?

 俺の背中で熟睡している、あどけない顔の鈴ちゃん。

 話せば〝頑張る〟とか言いそうだ。


「わたくしが付いているのでございます」

「余計不安しかないぞ」

「兄様?!」

「エイルだって反対だろ」

「私は……」


 おいおい、そこで悩むのかよ。

 それ程お父さんが大切ってことなんだろうけど。

 確かに俺は顔も知らないし、連れ戻せる可能性も低い。

 直接エイルが行く方がいいのは分かっている。


「ふむ、無理そうだな。残念だが仕方あるまい。今日はもう遅い。案内は明日しよう」

「ありがとうございます」

「寝床を用意してある。使うといい」

「何から何まですみません」

「よい。非礼の詫びだと思ってくれ。おい、お客人を案内せよ」

「畏まりました」

カップというか、まぁ普通に湯飲みですね

次回は圏外です

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