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第102話 情報規制

 民間人と一緒に……か。

 ということは、ここには民間人だけで軍人はいないってことかな。

 殆ど怪我人ばかりだけど。。

 重傷者やまだ治療をされていない人は、少し離れたところに集められている。

 中には毒素に冒されている人も居るのだろうか。

 見た目には全く分からない。


「マスター、少し手伝ってくるわ」

ナース(タイム)? 俺や時子以外も診られるのか」

「病気を診るわけじゃないわ。それに彼らは元素人だし、身体の造りも大きく違わないことも分かったから」

「そうなのか?」

「ええ。沢山見てきたもの」


 あ……そうか。

 それだけ沢山の人が死んでいるのを見てきたってことだよな。

 身体の構造が理解できるほど沢山。

 俺は逆に見ないようにしてきたのに……

 敵わないな。


四天王(タイム)も手伝います」

「ふふっ。なら子供の相手をしてもらおうかしら」

「分かったわん」

「えー、オモチャにされるにゃあ!」

「いいじゃないですか。それで大人しくなってくれるなら」

最弱(タイム)(にゃ)れてるからいいにゃ」

「慣れていませんっ」


 ははっ。

 まー子供相手なら四天王(タイム)に任せておけばいいだろう。

 人手は多いに越したことはない。

 俺もなにか出来るといいんだけど、邪魔にしかならないだろうな。


「いいの?」

「なにがだ?」

「バッテリーのことよ」

「ああ。問題があるなら最初から出て行かないよ。それにほら。ナース(タイム)大人サイズ(7頭身)だけど、四天王(タイム)園児サイズ(5頭身)だしな」

「でも、ついさっき空っぽに……なりかけたばかりなんだよ」

「心配してくれるのか?」

「当たり前でしょ!」


 そんなムキになって言わなくても……

 〝そんなんじゃないわ〟とか言うと思ったのに、ちょっとビックリした。


「っははは、ありがとう。でも俺はこうして生きている。時子のお陰でバッテリーもかなり充電されているらしい。だから、心配は要らない」

「でも……」


 随分と心配してくれるんだな。

 凄く不安そうな顔だ。

 そりゃ目の前で死にそうになったんだ。

 気にもなるか。


「大丈夫だって。心配ならしっかり手を繋いでいてくれ。それにヤバくなったらタイムが教えてくれる」

「間に合わなかった……」

「ん?」

「間に合わなかったじゃない!」

「間に合っただろ。俺が生きているのが証拠だ」

「もう嫌なの。私を独りにしないで。モナカが居なくなったら、私は……どうしたら……」

「お、おい……」


 なんだなんだ。

 急にしおらしくなって。

 いや、普段も可愛いけど、なんていうか……

 少なくとも〝モナカが居なくなったら〟とか言うようなヤツじゃない。

 普段寄り添ったりしがみ付いたりするのは充電の為って思えるけど、そんな態度を取られたら勘違いしそうになる。

 勘違いするな。

 先輩を見つけるためにも、俺の力があった方がいいんだ。

 ただそれだけ。

 それ以上でも以下でもない。

 だから勘違いするな、俺。

 なのに俺は寄り添ってきた時子をそっと抱いて頭を撫でてしまう。

 仕方ないじゃないか。

 今にも泣き出しそうな女の子を邪険に扱えないよ。

 タイムが一生懸命働いているときに、こんなことしていていいのかな。

 今までなら充電するのが仕事みたいなところがあったけど、とてもそんな雰囲気じゃ……

 タイムたちは黙々と仕事をこなしている。

 こっちを気にする様子もなく。

 気にする暇が無いだけ?

 それとも……振った男に興味は無いってか。

 あーあ、タイムの前のマスターって人は何処に居るんだろうな。

 エイルのお父さんは見つかった。

 ナームコのお兄さんも見つかった。

 アニカが精霊を呼べない原因も分かった。

 鈴ちゃんのご両親はとっくの昔に死んでいるはず。

 となると、残るは時子の先輩とタイムの前のマスターか……

 その二人のどっちかが願って俺を召喚した?

 俺の知っている人……だとしても、記憶から消されているのか。

 手がかりがなにも無いっていうのが辛い。

 結界の外に居るとしたら、エイルのお父さんやナームコのお兄さんみたいになっているはずだ。

 それは考えたくない。

 なら、結界の中……つまり他の都市で探すのもアリかも知れない。

 それともエイルの後を追うか?

 首根っこ捕まえてトレイシーさんのところへ連れて行く。

 それもアリか。

 考えるのは後だ。

 みんなと相談してからでも遅くはない。

 今は一刻も早く上の状況を知りたいところだ。

 (はじめ)さんもソワソワしていて落ち着きがない。

 こんな姿は初めて見る。

 もしかして。


心琴(みこと)さんが心配ですか?」

「え? あはははは、そうですね。村長(むらおさ)はなにも教えてくれませんでしたので」

「え、なにも?」

「魔物があふれ出てきたこと。外からも来たこと。炎の化身が全ての魔物を焼き尽くしたことしか教えてくれず、一方的に切られてしまいました」

「こっちから連絡は?」


 (はじめ)さんは首を振った。

 連絡が取れないのか、それとも村長(むらおさ)が拒否しているのか……

 後者かな。


心琴(みこと)ちゃんも連絡が取れないんです」


 それは確かに心配だ。

 村長(むらおさ)のこともあるし、なにかあったのかと心配になるのも無理はない。


「大丈夫。心琴(みこと)さんは強いですから」

「はい。ありがとうございます」


 (はじめ)さんは力無く笑っている。

 気休めにしかならなかったかな。

 そうだ。


「タイム、様子を見に行ってもらえるか?」

「それなんだけど、壁の穴の補修が終わって塞がってるの。地上の穴も埋められたみたいで、外に出られないんだ」

「他に穴は?」

「地上と地下は行き来できないように完全に分離してるみたい。通気口すらないよ」


 通気口か。

 ここは地下シェルターじゃないからな。

 仮にそうだとしてもフィルターが邪魔して無理か。

 こうなると大人しく待つしかない。

次回は謎の物体です

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