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第99話 やれることをやる

 正直、死んだと思った。

 バッテリーは空になっていたはずだ。

 でも生きている。

 多分充電がギリギリ間に合ったんだろう。

 ありがとう。


「そうだ、エイルは? 無事なのか?」

「無事よ」

「そっか……よかった」


 娘は殺さずにすんだらしい。


「あ、でも早く治療しないと。背中をザックリ斬っちまったからな。それに左腕だって……」

「大丈夫よ。どっちも治ってるから」

「治っている?! 俺、そんなに長く寝てたのか」


 まさか1週間とか経っているんじゃないだろうな。

 いやいや、例え1週間だろうと失った腕は元に戻らないだろ。

 どっちも?

 聞き間違いか。

 まさか1ヶ月?! ってことはないか。

 見た限り場所は移動していなさそうだし。


「ううん、1時間も経ってないよ」

「えっ」

「ちゃんと治ってたから、心配しないで」

「……そうか」


 疑うわけじゃないけど、もう治った?

 そんなに浅い傷じゃなかったはずだ。

 それに左腕だって……

 確かに怪我の治りが早いなって思わされたことはある。

 でも今回のはそんな比じゃない。

 いくらなんでも早すぎる。


「エイルは何処だ? 隣で寝ているのか?」

「エイルさんは1人で先に行ったわ」

「1人で行った?! あー、(はじめ)さんを呼びに行ってくれているのか」


 そこまで元気になっているのか。


「違うわ。1人で行ったの。私たちを置いて」

「? すまん、分かるように言ってくれないか」

「そのままの意味よ。エイルさんは私たちを解雇して、独りで旅に出たの」

「はあ?!」


 解雇ってなんだよ。

 ますます意味が分からないぞ。


「それ、ホント?!」

「あ、お姉ちゃん! 無事だったんだね」

『エイル! ……ダメ、圏外だ。通じない』

「これ、退職金だって、エイルさんが……」

「退職金……積立金も?! って、マスターの死亡届に受取人名義変更書類まで……ホント……なんだ」

「お父さんのこと、トレイシーさんに謝っておいてって。私はまだやることがあるからって」

「やることってなんだよっ。だったら俺を連れて行けばいいだろうがっ!」

「それは……モナカが死んでたから。死んだと勘違いしてたから」


 そうだった。

 全部俺が悪いんだった。

 俺が弱いのが悪いんだ。

 強くなりたい。

 みんなを守れるように。

 タイムの足を引っ張らなくてすむように。

 時子に負けないくらい。

 誰にも負けたくない。

 負けてたら……守れない。

 そんなのは嫌だ。

 でも今は。


「追いかけるぞ」

「え?」

「エイルを追いかけるぞ。何処へ行ったんだ?」

「分からないわ」

「そう遠くには行っていないはずだ。タイム!」

「うんっ」


 一斉に12匹のドローン(トンボ)が飛び立っていった。

 魔力を追うなんてことは出来ない。

 俺たちに出来ることは、しらみつぶしで探すことだけだ。


「戻るぞ」

「戻る?」

「探すのはタイムに任せておけば十分だ。俺たちは戻って体制を整える」

「体制?」

「忘れたのか。魔人は3人居るんだ。まだ2人しか倒していない」


 最後の1人はかなり強いみたいだからな。

 気を引き締めて掛からないと。


「あ……」

「エイルのことは心配だ。でもそれはタイムに任せておけば心配ない。だから、俺たちは俺たちでやれることをやるんだ」

「でも、充電は大丈夫なの?」

「ああ、心配ない」


 稼働可能時間が5時間を越えている。

 問題はないっ。

次回、何故解毒が無理なのかの一部が明らかになります

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