始まる物語
「快晴、快晴!!よっし、今日もおっ始めますか。」
そういって青年は思い切りハンドルを掴み、エンジンを吹かす。ブォンブォンとなった彼の愛車は今日も調子が良さそうだ。
と快活な音がなった直後には爆速で走り始めた。
「さぁ、さぁ、今日の標的は何かな??」
と不敵な笑みを漏らすと
「うわっ、モルドレッドが来たぞーー」
「ちくしょう、このクソガキがっ」
「毎日、毎日やられてたまるか!今日こそ死守するぞ!」
と賑やかな街並みに中を連ねる店の店主とおぼしき、膨よかな男や筋骨隆々の男など様々な顔が見えた。しかし、皆その顔は緊迫した形相と化していた。
「おうおう。そろそろ学習してきやがったか、おっさんどもが。」
学習するのも無理はない。その理由はあの青年―モルドレッドと呼ばれた彼の悪行に他ならない。彼は毎日のごとくこのレンガ造りの家が建ち並ぶ景観をぶち壊すようなゴツゴツしいバイクで街を駆け抜け、店頭に並んでいる果物や肉などを手当たり次第強奪したためだった。
「奪えるもんなら奪ってみやがれ、小僧が!」
店主らは店頭の品を即座に屋内に押し入れ、用心棒を雇ったようだ。武装している傭兵が構えた。
「お前ら、高い金はたいて雇ったんだ!しっかり仕事はしてもらうからな!!」
「わーてるって、おっさんよぉ。確かにやたら早い馬車?に乗ってるが結局は青臭い坊主じゃあないか。あんなやつになにを手こずってるやら…。」
と成人男性の首ほどの持ち手の斧を持ったモヒカン巨漢が呆れていると
「まぁそういうな弟よ、このおっさん達も苦労してるらしいじゃないか。俺らは奴から店を守る。おっさんらは俺たちに報酬を支払う。win-winってやつだ。」
と巨漢を諫めたのは弟とは対極と言えるだろう、ぱっと見ヒョロッとしてそれでいてしっかりと力強さがある細マッチョな男だった。
「それもそうだ。うっし、んじゃさっさと終わらせて遊びに行くとしよう。」
そうすでに仕事を終えた事を考えている2人のもとに轟音とともに現れたモルドレッドと対峙する。
「怖そうなお兄様方がいるなぁ。準備はいいかぁ!ぶっ飛ばすぞ!!」
と高らかに声をあげバイクに乗ったまま突進する。
「やれるもんならやりなばぼじゃぶじゃば…」
かたや、少し早い馬車ぐらいだとたかを括っていた兄弟は無惨にも揃って一瞬で轢かれてしまった。
「んだよぉ。手応えのない…。さっきの威勢はどうした?まぁいいや。さぁて今日は何にしようか…」
と一度バイクを止め、白けたような顔をして、そのままいつも通り手当たり次第に品物を掻っ攫っていく。いくら屋内に隠していようとモルドレッドからしたらどうということもない。そのまま、バイクに乗ったままお邪魔した。勿論、許可など彼の辞書にはないのだろう。家具という家具は壊れ、壁にも大きな穴。
「あぁぁぁ…なんという…。」
「悪魔だ。」
「ろ、ローンがまだ20年も残ってるってのに…」
店主は店の姿に合わせたように崩れ落ちていた。
「んにゃ、今日はこんなもんか。また明日も来るからよろしく頼んだぞー」
とモルドレッドは言い残し彼のアジトがある森の中へと帰っていた。しかしその言葉は店主らの耳には届いてはいないだろうが。
「いでででぇ…。なんだあの馬車、早すぎだろ。」
「凶器だ。凶器、死ぬかと思った…。」
存外、この兄弟は丈夫らしい。
「よし。今日も中々の成果だ。」
モルドレッドは森のアジトに帰っていた。アジトとは言っても大樹の根の部分が部屋のようになっていたところに麻布を引いた寝床と焚火後がある程度なのだが。彼の生活感の無さが伺える仕様になっている。
「んじゃ、腹ごしらえに肉でも食うとしますかね。」
と焚き火を灯し、そこで肉を焼くと簡単に料理?とは言い難いがこれが彼の日常だった。
「うひゃー!こいつはうめぇ。おっさん、今日仕入れたのは中々の上物だ。だから今日はいつもより入念だったのか?」
と思案しているうちにあっという間に平らげてしまった。
「いやー、うまかった。うまかった。よし、そんじゃあ日課の鍛錬でもしますかね…」
と日課である、剣の鍛錬をしようとしたところで
「ッ!!」
一瞬であった。一瞬で冷や汗が出ている彼の首筋を矢が通ったのであった。そこからツーと血が垂れている。
「誰だ!!コソコソ影で狙い撃ちなんて陰湿なやつがいたもんだぜ。とっとと出てきやがれ!!」
と威嚇を込めてモルドレッドは言い放った。すると
「ふう。あなたは変わりませんね、モルドレッド。その脳筋はお父上様ゆずりかな?」
と皮肉を込めて言って茂みの中から出てきたのは白亜の鎧を見に纏った男だった。その綺麗な青みがかった長い黒髪を後ろで一つに束ねた男は長髪ということもありやや中性的だか、その容姿から美しさや男らしさが見えた。
「おまっ。おまえ、トリスタン兄さんか!?」
「おや、忘れていませんでしたか。嬉しい限りですよ。しかし、お前とは少々口が悪い。再教育すべきですかねぇ。」
そう言った男はモルドレッドの言ったとおりこの国、ブリタニア人類共栄国の誇る、騎士団の一員、弓騎士トリスタンであった。
「いやぁ…再教育とはこれまたありがた迷惑やらなんやらと。お生憎とそんな事してる暇お互いないだろ?」
とひきつった笑みを見せながらその申し出を断った。
「なにをおっしゃるやら。あなたのためならばこのトリスタン、時間などいくらでも作りますとも。」
「いらねぇよ!それより遠回しに話すのが億劫になってきた頃だ。率直に用件を言えよ、兄さん。」
と今までの面倒そうながらも満更でもない穏やかな顔をしていたモルドレッドであったが一変、その顔に冗談なんてものはなく鋭い眼差ししかなかった。
「おやおやこれは。その目本当にお父上様によく似ましたね。人の真意を見抜く目。私は性分上あたりその目は得意ではないのですが…」
「いいから、早く言えや。兄さんと会話すると無駄に長引くし疲れるんやわ。」
と痺れを切らしたモルドレッド。
「分かりましたよ。はぁ、久々の再会だと言うのに。あなたの教育係を任命されたのはいつ頃だったでしょうか。早々に懐いてくれたあなたは私は兄さんと…」
「いいからっ!」
「おっと失礼。では…」
「お父上様がお呼びです。最近の蛮行が目に余ると。寛容であったあの御方がそろそろ軽くない罰を与えるとかだそうですよ。城にお戻りください。モルドレッド王子。」
おそらく、物語はこの日から始まったのだろう。この日モルドレッドとトリスタンの再会から。世界の命運が握られた青年の物語が。
自分の処女作です。正直右も左もわからない。思い至ったが吉日!だと思って書いてみました!感想、皆さんの書き方とか是非教えてください。こんな長文書く事もないので不慣れなため少しずつやっていきます。