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「お兄ちゃんと結婚する」


「お兄ちゃん見てくれた?」


「あ、おお見たぞ秋の勇姿、しっかりとこの目に焼き付けた」


「やったね、誉めて誉めてえ~~」


「よしよし」

 自宅のソファーで僕に腕を絡め身体を押し付ける様にベッタリとくっつく妹の長く艶やかな黒髪をそう言いながら優しく撫でる。


 今日は高校の入学式だった。妹は僕と同じ高校にトップの成績で入学し僕が見ている目の前で新入生代表挨拶を完璧にこなしていた。



 月ヶ瀬家長男の僕は春に生まれたので(はじめ)。妹は一つ違い、秋に生まれたので(みのり)。秋は小さい頃に重い病気を患っていて、家と病院を往復する生活をしていた。


 勿論友達もなかなか出来ない、幼稚園に入っても入退院を繰り返す生活、遊ぶ相手はいつも僕とだけだった。


 そのせいで妹はいつも僕にベッタリで、何をするにも僕に頼りっきり。病気がよくなってもずっと変わらず僕にべったりで、着替える事もお風呂に入るのも、僕が手伝わないと一人では何も出来ない子供だった。


 小学生になっても相変わらず一人では何も出来ない、というかやろうとはしない状態、勉強や運動も一切やらない、いつも僕の後をついて来てひたすらくっつくだけの毎日だった。

 ただ僕も病気がちで身体も弱く友達もいない、そんな妹が可哀想と思っていたので、出来るだけ妹の好きな様にやらせていた。


 しかしそんな状態では一向に妹の成績はよくならない、勿論僕も一緒だ。


 僕と妹二人の成績は良くならない。僕がいないと妹の生活もままならない。

 

 そんな僕らを見かねた母は小学校低学年の妹に対してこう言った。


 「秋! 勉強もしないし自分の事もしない、家のお手伝いもしない、しっかりしないとお兄ちゃんのお嫁さんになれないわよ!」


 身体の弱い妹に対してやはり可哀想という感情があったのか? 今まで怒った事が無かった母さん。どうやって怒って良いかもわからなかったのでついそう言い方になってしまったのだろう。


 何かお灸を据えなければいけない、恐らくそういう怒り方はいけないんだろが、妹に何か見返り、条件を出さなければ怒れなかったのだろう……母さんは妹が言っていた日頃からの口癖を利用した。


「お兄ちゃんのお嫁さんになる」

 それが妹の小さい頃からの口癖だった。

 

 何を言っても「お兄ちゃんにして貰う、将来お兄ちゃんのお嫁さんになるから大丈夫だもん」

 

 そう言い逃れていた妹に母はついそう言ってしまったのだろう。

 

 その時妹はそう言われ涙目で僕を見つめて来た。当時僕もまだ小学生、母の気持ちや考えを察したわけでは無かったが、恐らくいつもベッタリで自分の事がろくに出来なく少し辟易していたのだろう僕は、母のその言葉に乗っかってしまった。


「そうだよ、秋も少しは自分の事が出来ないと駄目だよ、僕はバカな人とは結婚したくないよ」


 僕が初めて妹を突き放した瞬間だった。


 そして、それを機に妹の生活は一変した。


 勉強、運動何でもこなし、家事や手伝いを積極的にやるようになった。


 そして成績が上がる度、運動会で1着を取る度に、家事をする度に妹は僕にくっつきこう言った。


「お兄ちゃん誉めて誉めて~~」


「よく頑張った偉いよ」


「結婚してくれる?」

 

「うん、勿論」


 僕や母は妹がいつか気がつく……兄妹で結婚は出来ない事にいつか気がつくとそう思っていた。

 でも今はしっかりとやってくれるからと、近い将来バレた時はその時考えれば良いと……そう楽観視していた。


 そして月日は流れ妹は本日晴れて高校生に、そして今日も僕に頭を撫でて貰う為、誉めて貰う為にいつもの様にベッタリくっつきおねだりをしてくる。



「ねえお兄ちゃんもっと誉めて誉めて~~」


「ああ、秋は凄いなあ、偉い偉い」


「えへへへ、ねえお兄ちゃん、秋をお嫁さんにしてくれる?」


「……あ、ああ、勿論」


 秋は何一つ疑う事なく、いまだに僕と結婚出来ると信じきっていた……。



多分短編だけど、一気に書けないのと、いつもの癖、書くと直ぐに出したくなるので細切れで投稿しております(笑)m(_ _)m


今回あまりランキングは気にしないですが、ブクマ評価は書く気力に繋がるので出来れば宜しくお願いしますm(_ _)m

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