登下校
妹とは小学校の頃から毎日一緒に学校に行っていた。
妹と外に出る時は必ず手を繋いでいた。勿論それは登下校の時も例外ではない。
いつも必ず手を繋いでいた。
「お前ら兄妹で手なんか繋いでキモい~~」
小学校は集団登校だったので初めは周りからそう言われ馬鹿にされ揶揄された。
でも僕も妹も構わず毎日手を繋いで登校していたら、やがて周りは何も言わなくなった。
何年も構わずにやり続ければ、それが当たり前の光景になると知った。
しかし、残念な事に僕と妹は1学年違う、そう……僕が小学校を先に卒業してしまった。
「ふええええええん」
「しょうがないだろ?」
「やだああああやだああああああ」
「…………わかったよ……じゃあ小学校まで一緒に行くから」
「…………うん……お兄ちゃん……大好き」
僕は中学受験で国立に受かっていた。妹と毎日勉強をしていたお陰で成績はクラスでトップだった。
ためしにと受けた国立の付属中学にギリギリだったけど合格し、僕はそこに通う予定だった。
しかし妹は学校に一人で通えない、僕は仕方なく近所の公立に通う事にした。
そして1年遅れで妹も同じ中学に、当然中学でも俺と妹は一緒に手を繋いで通った。
もう僕たちの事をとやかく言う物は居なかった。それが当たり前になっていた。
高校生になった今でも僕達は手を繋いで学校に通っている……地元から離れたので、また一からかと思っていたが、小中学校と違い一応今のところ僕と妹はカップルと認識されているのか? 遠巻きに見られているだけで何か言ってくる奴はいなかった。
妹とカップルって思われている事には僕も自ら否定する事は無い……当然妹も否定していない。
良くも悪くも僕と妹には友達がいない……いまだに妹とベッタリなので友人を作る暇も、仮に作ったとしも遊ぶ暇は無い……そんな状態なので1年の時から僕の事に誰も興味を持たなかった。
ただ入学したての1年生、しかも主席の女子とボッチの男が手を繋いで登校していればかなり目立つ。
当然僕達と同じ出身校であるならば僕達は兄妹だと言う事を知っている。
僕達兄妹が手を繋いでいつも一緒に居る事は地元では有名だったからだ。
まあ、でも当たり前の光景をわざわざ他人に言う事は無い。
そして、この学校に入って一つわかった事がある。
勉強出来る奴等は基本的に他人には無関心を装う。自分が一番、自分の将来が一番と考える奴が多い、故に勉強の邪魔になる事はあまり考えない。
だから僕達兄妹の事、一緒に手を繋いで通っている事を直接揶揄する奴は今のところ現れていない……。
そう……勉強が出来ると言えば……それは妹だ。
妹はよくも悪くも子供だった。なので知識の偏りがある。
勉強が出来るという事は知識を得るのが上手いと言う事でもあるのだ。
知識と言うのは情報と経験だ。複数の情報を得ると情報同士が繋がり知識となる。情報だけでは知識になり得ない。
ただ妹はどんどん情報を吸収している。今まさにそんな時期だ。
情報をどんどん吸収していき、経験と共に知識にしていけば、いつかぶつかるのだろう……兄妹では結婚出来ないと言う知識に……でも……僕はそれを阻止する事はしない……妹のする事を僕は止めない……止められない。
小さな頃から死の淵をさまよい這い上がって来た妹の妨げなんて……僕には出来る筈が無かった。
だから僕はその時が来るまで……この手を離さない、いつか妹から離す時まで……僕はこの手を自分から離す事は無いだろう。
また今日も手を繋いで登校する……後何年……いや……何ヵ月……何日、この手を離さないで居られるのだろうか……
この妹物は、何も考えず、気の向くままに書いてます(  ̄ー ̄)ノ