抱っこでリセット
いつもの様に勉強していると妹は突然図書館から借りてきたとある本を僕に見せつけてきた。
「ねえ、お兄ちゃんお兄ちゃん、これ見て!」
「ぶふぉおっ!」
その、どストレートのページを見て僕は思わず飲んでいたコーヒーを吐き出してしまった。
「あーーん、もう~~ノートが汚れるうう!」
「ご、ごめん……っていうか……なんて物見せるんだ」
「なんて物? なの?」
「そ、そりゃあ……」
「ふーーん」
妹は再びその本を読み耽る……ああ、遂に来る時が来たか……。
妹はその本を読んでいると……プルプルと震え始めたそして本から顔を上げると食いかかる様に言った。
「お、おおお、お兄ちゃん!! お兄ちゃんのあれと私のあれがこうなるの!! それで赤ちゃん出来るの?!」
「……あ、まあ……」
ああ、遂に来るべき時が来てしまった……いや、そもそも母さん……どうやってそれを教えないであれを、女の子の日の事を教えたんだ?
いくら成長が遅い、小学生の様な身体でもさすがにそこまで遅れていない……とはいえ、僕が知っている限りではここ1年位前の出来事だった。
『お兄ちゃん……私……また病気になっちゃった……』
妹は泣きながら僕にそう言って来た……何事かと聞くと血が出たと……どこから? とまで聞かずに僕はピンと来た。そう……あの日……遂に妹も大人になったのだ……あの日……所謂あの日……とりあえ僕はずうろ覚えの知識を総動員して、母さんにも電話をして対処した。さすがに説明までは出来ない、病気じゃない事だけ説明して翌日帰って来た母さんに全て任せた。
だから……知っていると思っていた。いや、その事実から逃げていた。
「そうか……あれがこうなって……へーーー」
「えっと……秋?」
さらに食い入る様に本を見つめる……いや……えっと……。
止めるわけにもいかないし……どうしようか悩んでいると妹はとんでもな無い事を言って来た。
「お兄ちゃん、赤ちゃん作ろう!」
「ぐはあああ……な、何を!」
「だって、欲しいもん」
「だ、駄目……それは……結婚しないと駄目だから!」
「そうなの!? でも来年結婚するんだよ私達」
「しない! そもそも高校生だから駄目!」
「何で?」
「何でって……えっと……こ、校則で決まってるから?」
この間も言った様な……。
そう言うと妹は生徒手帳を取り出し校則の欄をペラペラと捲る……。
「やっぱり書いて無いよ?」
「だから書いて無くても駄目なの!」
「えーーーーヤダヤダ欲しい! これやろう!」
「見せるな指を指すな、駄目な物は駄目です!」
妹と出来るか! 物理的な話をしているわけじゃ無い! 出来ない物は出来ない!
「何でえええええええ、やだああああ」
妹は床にひっくり返ってじたばたし始める……最近あまりしなくなったが小さい頃、嫌な事や何か納得いかない事があると仰向けに寝転びパンツ丸出しで足をバタバタさせる。
小さい頃、クラスの集まりで僕はどうしても一人で出かけなきゃいけなくなり妹に留守番を頼んだ。
妹は留守番を拒否し付いていくと泣き叫ぶ、それでも頼むからとお願いするとと更に泣き叫びながらこうなっていた。
僕と結婚出来ないよと言った以来だいぶ聞き分けが良くなり大人しくなったので、久しぶりにこうなった妹を見た。でも……別に焦らない……こうなった時の対処方を僕は知っている。
僕は勉強していたテーブルを横にずらし、そして足を伸ばして床に座り直した。
「秋……しょうがないな……ほらおいで……」
そう言うとじたばたしていた妹は機械の様にピタリと止まり直ぐにむくりと起き上がる。
そしてずるずると床を這いずると僕の太ももの上に座り僕にギュっと抱き付く……顔を胸に埋め腕を背中に回し足は腰を挟む様にして完全に僕に密着する。
僕も妹の肩から背中に手を回し妹を抱き締める。
完全な密着状態……こうすると僕も妹も落ち着く……子供の時からやっている対処方……さみしい時、悔しい時、怒ってる時……いつもこうして抱き合っていた。
「よしよし……」
赤ん坊をあやす様に妹の背中をポンポンと叩く……これをやっていつもリセットする。誤魔化している、逃げている……そうかも知れない……でも……これが僕達兄妹の方法、法則、ルール……。
今回もそう……先伸ばしにしているだけ……いつか全て知られてしまう……その時僕達は……どうなるんだろうか……。
うへへへ(o´艸`o)♪
やっぱり妹がええなあ(*´∀`*)ポッ