ブロローグ?
うっ…。あれ?どうしたんだっけ…。床が硬いところで寝てしまっていたようだ。ふと背中を振り向くと…。
「え?」
ぼやける目を擦りながら自分の体を確認した。それは、見慣れた姿ではなかった。まるで…まるで
「ドラッ…ゴン!?なんじゃこりゃぁぁぁぁあ!!」
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◇時はほんの少し遡る◆
「ふぅ…」
痛む足を擦りながら前へ足を進める。俺、進藤羅勤は体育の授業でランニングを走っていた。夏、真っ盛りのこの時期にだ…!! とっくに男子…どころか女子にも追い抜かれ、一人で独走を決め込んでいた。
「ハァ、ハァ。ゼェゼェ…。」
息もだいぶ上がってきて限界も近い。喉はからっからで、少し頭がぼーっとしてきた。そこで俺はふとよこを向いた。走っている横には少し大きな川があったからだ。
水も意外とキレイ。俺はすでに限界だった。
「…川の水でもいいから飲もうかな。」
自然と足は川の方へ向かう。次の瞬間…
…ドポンッ。
はじめはなんの音か理解できなかった。無論、自分が川に落ちた音である。
気がつくのは遅かった。川は非常にも深かったのだ。
「!?」
川から出ようと手を伸ばすも手に力が入らない。熱中症だろうか。
嫌だ!こんなことで死にたくない!嫌だ!!
しかし、現実は非情である。
もがき続けても俺の体は水に沈んでゆく。
薄れ行く意識の中で俺は何かを掴んだ。それは未来への希望か、はたまた未来なき絶望か。
否!掴んだのは不思議木彫りの竜であった。
そして、進藤の意識は深淵い堕ちていった。
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「は?意味わかんね」
俺は記憶を振り返りながらつぶやいた。溺死して起きたら竜?しらも、なんで変な洞窟にいるんだよ!意味わかんねーよ!!
しかし、進藤はオタクであった。それは大手ゲーム会社である「ニャン天堂」の、赤い帽子を被り栗と亀を踏み殺すヒーローを題材にした「MRO'B」シリーズを全部集めることにはじまり、「小説家になりましょう」のWeb小説ならランキング100位まで毎日チェックするほどに。
そんなオタクだからこそわかったことがある。
「異世界…転生!?」
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◆とある国◇
豪華に飾り付けられた部屋にふんぞり返っている小太りの、男とひょろりとした男がニヤニヤとしながら話し込んでいた。
「近頃…インティ王国は弱ってますねぇ。」
小太りの男は満面の笑みで話しかけた。
「ええ、宰相どの。インティ王国は日に日に国力を失いつつあります。今攻めれば、確実に攻め落とせるでしょう。そうなれば、かの国の豊富な農産物や海産物はもちろんのこと、美しい姫も手に入りますぞ。」
ひょろ男は少し興奮しているようだ。
「…あの姫はよいですねぇ。可憐で美しい!あの姫の顔を歪ませてやりたいですねぇ。私の手でね。」
小太りの男がニヤリとした。
進藤羅勤の存在が知られるのはもう少しあとのお話。