白き花
「…どこ、ここ?」
アキヒトとリリィは先ほどまでいたモーガン邸よりも豪華な造りの家の前にいた。
「どこって、私と旦那様の家ですよ!」
「ああ、これがオルブライト邸か…で、なんで俺まで?」
「旦那様にも今日からここに住んでもらいます!あんな物置にいつまでも住まわせておくわけにはいきません!」
「別に俺は雨風が凌げればいいんだが…」
「ダメです!それに、夫婦なんですから一緒に暮らすのはなんらおかしなことではないですよ!むしろそれが自然です!さぁ、二人っきりの生活を始めましょう!」
「二人っきりって、住み込みで働いてる人とかいるだろ。それともあれか、金持ちはメイドや執事は人間にカウントしないとか」
「しますって…旦那様金持ちに対する偏見というか憎しみすごくないですか…この家にはメイドさんも執事さんもいませんよ」
「…は?じゃあこの広い屋敷で一人暮らししてたの!?」
「はい、私一人ならそういう方を雇う方がお金かかりますし」
「そういうところは意外に庶民的な考え方なのね…ってことは、じゃあお前料理とか家事できるの?」
「ええ、一通りはできますよ」
「肉買ってきてただ焼くとかその辺の草の鍋とか?」
「旦那様の中の私の評価低すぎませんか…?すっごい上手いってわけじゃないですけど普通に料理できますよ。もうそんなことはいいですから、早く入りましょう!」
「あ、おいちょっと待てよ!」
リリィはアキヒトと腕を組み、ぐいぐい引っ張っていく。その顔に満面の笑みを浮かべながら。アキヒトもその顔を見て、微笑んでいた。
人と一緒にいてこんな気持ちになったのは久しぶりだった。枯れ果てた黒い大地に、白く美しく力強い花が咲いた。願わくばこの花が枯れることなく咲き続けて欲しい。そんな気分だった。
「夫婦なんですから同じ部屋でいいですよね!」
「部屋余ってんなら他の部屋でお願いします」
第1章 完
幸せそうな2人に、これからどんなことが待ち受けているのか…