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3話 青春は準備がいる 1幕


 朝。雀だろうか、小鳥のさえずりが聴こえる。

 夢現(ゆめうつつ)な感覚で朦朧(もうろう)としていると、頭のそばでスマートフォンの大音量のアラームに叩き起こされる。

「うっ...相変わらずうるさいアラームだ...」

 アラームを止めつつぼやく。とはいえこの大音量のおかげで寝坊がないのだからありがたい。

 と、起きたのはリビングの椅子を並べた上である。

「あぁ...そうか、南が来たんだっけ」

 藤方(ふじかた)(みなみ)。どういうわけかわからないが、俺の妹として昨日うちに来た女の子だ。

(学校関係の手続きはしてあるって言ってたけど、いつから通うんだろう)

 とりあえず今日からの可能性も考えて起こしに行く。

 南が寝ているのは俺の部屋のベッドだ。

 家に着いたのが遅く、ろくにそういった準備もできなかったため、俺はリビングで寝て、女の子である南をベッドで寝かせることにしたのだ。ちなみに両親の使っていた寝室自体は、使うことないだろうからと(みずか)ら散らかしていった。あの親のことなので何があるかわからない以上俺には片付ける勇気は出なかった。

「おーい南ー、起きてるかー?」

 軽くノックしながら呼びかけるが、反応がない。仕方なく部屋に入る。

 すると、南はまだ寝ていた。

「おーい起きろー」

 と、布団を()()がす。

「んん...やぁ...」

「!?」

 慌てて目を逸らす。

 とても可愛らしい反応が返ってきたのは良いのだが...

(なんで下着姿なんだ...!?)

 人によって寝るときの格好はまちまちだ。当然下着姿で寝る人もいることだろう。しかし、年頃の男がいるのにそういう格好で寝るのは勘弁願いたいものだ。

(...まぁ癖なんだろうけど...)

「さむ...」

「あ、わるいわるい」

 そういえばまだ春先の早朝。空気はそこそこ冷えている。布団をかけ直してやる。そして布団の上から揺さぶる。

「起きてくれー朝ごはん食いそびれるぞー」

 食べ物をダシに使うのもどうかとおもうが。

「ごはん!?」

「え、それで起きるの」

「お腹減った!」

「どういうことなの...」

 と、南は思いっきり状態を起こす。

「あっ」

「ん?」

 俺は再び目を逸らす。

「あの...服を着てくれ?」

「あ...」

 南は自分の姿を再認識する。

「きゃーおにいちゃんのえっちー」

「なんで棒読みなんだ」

「――――というとでも思ったか!」

「思ってないよ...ていうか実際言っちゃったよ」

 そんな二次元みたいな反応は期待していない。むしろ二次元だけで十分である。

「とは言いつつ、本当はあたしのセクシーな姿にドキがムネムネしてんだろぉ?」

 妖艶な笑みを浮かべながら言う。女性らしい中にどこかまだ子どもっぽさの残るその体は、確かに色っぽい。それに、家族とはいえ初対面だ。男としては反応してしまう。だが俺はそれを、右から左へ受け流すことで意識を逸らした。...何の解決にもなっていないが。

「キャラ変わってんぞ。ドキドキもしてない」

 ひとまず自制が利いているうちに適当に突っ込んで、朝食を作るため部屋を出る。

「早く着替えろよー」

「はいはーい」

 そして俺はキッチンへ向かいながらふと思った。

(...なぜ俺はあんな風に描写できたんだろう...)

 男としての自分を感じざるを得なかった。


 朝ごはんはいつも代わり映えしない。米、味噌汁、目玉焼き、ウィンナー、少量の野菜だ。

 余談だが、体には栄養ごとに消化する機能がある。例えば、脂肪を消化する機能など。朝に脂肪やコレステロールを摂っておくと、朝からその機能が働くため、脂肪やコレステロールの消化促進に繋がり、肥満や高コレステロールを防ぐことが出来る。炭水化物も然りだ。

 そういう思惑でこのメニューなのだが...

「朝から油物っておにいちゃん、あたしを太らせたいのかね?」

 まぁイメージ的にはそんなものなんだろう。

 仕方なく説明してやる。

「...んだから、実は適切な食事が本当の意味でダイエットなんだぞ。」

 ちゃんと説明したのだが、なにやら胡散臭いと言わんばかりの目をしていらっしゃる。

(ちゃんと現役のお医者様がテレビでおっしゃっていたことなんだけどなぁ)

 そんなこんなで食事をしている最中、ふと今朝の疑問を思い出した。

「そういや、お前いつから学校行くんだ?」

「んー?来週からー」

 今日は金曜日なので、数日余裕がある。土日のうちにいろいろ買い揃えることができそうだ。

「んじゃあ今日の昼ご飯、作り置きしてくか」

「おーありがとー!」

 とても嬉しそうである。ただで食う飯は美味いか?

「お前も自分で作れるようになれよ」

「そのうちねー」

(下手したら一生やる気ねぇな...)

 今晩はこいつに何が何でも作らせようと誓った。


 炊飯器に残っていた米を使って、さっと炒飯を作って、ラップをかけてキッチンに置いておく。そして部屋に戻り、学校へ行く準備をする。

 準備を終えてリビングへ行くと、南がテレビを興味津々に見ていた。ずっと海外にいたから、日本のテレビ番組は新鮮なのだろうか。ニュース番組だが。

「荷物片付けとけよ」

「うんー」

 そんな会話を最後に、俺は家を出る。

「あ、いってらっしゃーい」

 そう聞こえたが、返す前にドアを閉めてしまった。

(そういえば、長いこと一人暮らしだったせいで、そういう挨拶しないようになってたなぁ)

 今日の帰りから気をつけるか。そう思って、俺は駅へ足を運んだ。


 ガチャン。ドアが閉まる音と鍵が締まるがした。

「挨拶せずに行っちゃって...もう」

 一人暮らしだったためにそういう癖がついていないのだろうが、慣れている人間からすると少々感じが悪い。

 昨日この家に来たばかりの少女、藤方南は、兄である北斗が帰ってくるまで、いかに過ごそうか思案していた。

 北斗は荷物を片付けておけ、と言っていた。

 しかし、空いている部屋は1つあるが、家具がほぼ置かれていない。棚などはなくはないが、物置代わりになっているため、ほかの荷物もあるにはあるし、それらが無造作に置かれているため、そっちの片付けもしなければならないのだ。

 家具を移動させながら部屋の掃除に荷物の片付けというのは、1人では厳しい。まだ中学生の少女ならなおさら。

 しかしやることがない。それに、今日中に終える必要もまだない。だから、ゆったりと少しずつやっていこう。そう考えて、部屋のある2階へ向かう。

 そして2階に着いたとき、南の脳内に、あることが閃く。

 昨日は疲れて、そんな事考えもせずに寝てしまったが...

(ぬっふっふ...お兄ちゃんよ、そのベッドの下にはナニがあるのかね...?)

 ニヤリと、とても怪しげな笑みを浮かべて、南は北斗の部屋に入ったのだった。


 一方、電車内。

(ハイパー眠い...)

 昨日の一件で、久々に体を動かしたことと寝るのが遅かったせいでまだ疲れている。

(何者なんだろう...あの子...)

 昨夜見たあの服は、間違いなくうちの学校の制服だ。つまり、昨夜の犯人がうちの学校にいるということになる。

(学校の教員伝えるべきか...?)

 そんなことを考えていると、満員電車の中、1人の人が目に入る。

 先日改札あたり見かけた、どこか見覚えのある女子生徒。

(そういえばあの子、なんでこんな既視感が...)

 考えてるうちに頭が混乱してきた。なんでこの数日の間にこんなにいろいろあったせいだろう。まだ四月の始めなのに。

 世の理不尽さと思考の混乱に眉間(みけん)を押さえていると、何故か背筋がゾクッとするような悪寒(おかん)に襲われた。

(うっ...なんか嫌な予感が...)

 とにかく、平和に過ごしたいと切に願うのだった。




六月になりましたね、ゆきです

もう地域によっては梅雨でしょうか、雨は(主に交通面で)面倒なので嫌ですね。嫌いではないのですが。


さて、最近Twitterで、作品更新のツイートを数名ながら拡散してくださる方がいまして、少しはみてくださる人が増えてるといいなーと思うこの頃。

楽しく読んでいただけるような文をかけるよう精進ですね。また、拡散していただいた方々、ありがとうございます。


では、また次回お目にかかりたいと思います!\( ‘ω’)/

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