2話 平凡は来ない 1幕
俺は藤方北斗。まだ昼にもなっていないのになぜこうも疲れているのか。それはそう、
「それでな、俺はそこで能力を使ってな、相手にぶわぁーっと」
「おぉぉ...すごいです...!」
この厨二変態野郎といるからに違いない。
約30分前に遡る。俺と、そして今知り合った志木夏希さんとで話をしようとしていたところ、こやつが割り込んできた。
「俺みたいなやつか?」
「――――そうそう、ちょうどコイツみたいな...うぇっへ!?」
急に現れるから変な声が出てしまった。
「なっ、ちょ、急に来んなよ!」
「釣れないこと言うなよ。俺とお前の、仲だろ?」
親指を立て、バチーンと音がしそうなウィンクを決めてきた。正直ウザいことこの上ない。
「...どちらさまで?」
あまりにウザかったので、知らないふりをする。実際名前すら知らないしいいよね!
「そういえば名乗ってなかったな」
(あ、そこは律儀なんだ)
またなんか言うのかと思えば、意外と常識的だった。評価を誤っていたかもしれない。
俺の中で彼は、変な人から、常識的な部分はあるけど結局変な人にランクアップした。...ランクアップしたのか?
「俺の名前は、漁真だ。お二方とも、よろしこしこ」
手を軽く握るようにして上下させながら自己紹介。サラッと下ネタをぶっ込んできた。なんだこいつ。
「まだ昼だぞ」
「よろしこしこ...?」
志木さんはわかっていないらしい。できれば一生わかってほしくない。純粋なら純粋なままが良いのだ。純粋すぎても良くないだろうが。
「っつっても、ほかに良い感じでネタを入れこみつつ、よろしくって言えることってあるか?」
「いや普通によろしくでいいだろ」
「それじゃ面白味にかけるだろ?」
「お前は自己紹介に何を求めてるんだ...」
やっぱり変だ。今後関わってたら絶対に心労を増やす要因になる。もうお引き取り願いたい。
「それで、何の用なんだ?用事があるから来たんだろ」
いつまでもボケられてても困るので、とりあえずさっさと事を済ませようと尋ねる。
「え?あぁ用事はないぜ」
「...は?」
「いやー仲良くしたいなーってだけよ」
そんなことのためにあんな厨二発言やウザい行動は必要だったのだろうか。
「そんだけ?」
「そんだけ」
「はぁ...じゃあ昨日の能力の話は、気を引くための嘘か?」
「いんや、それは嘘じゃない」
「...は?」
今日のトンデモ発言3つ目。衝撃!能力者は実在した!
「って、んなわけあるかい」
「いやいや、能力は本当だ。別の世界うんぬんは嘘だけどな」
(えぇぇぇ...)
と、志木さんが小さく震えていることに気づく。どうしたのかと思ったら、
「すっすごいです!リアルで能力者とか初めて見ました!」
すっごいテンション上がってる。キャラが変わってるレベルで。
「おうよ、そうだろうとも」
漁はドヤ顔でうなづく。
しかし正直なところ胡散臭い。本当なのだろうか。
「んじゃあ金渡すから、教科書買ってきてくれ。3人分あっても瞬間移動できるなら苦じゃないだろ?」
「いや、人前では能力は使えない。そんなもん見せたらいろいろ面倒なことになるからな。だから販売所なんか人が多いから無理だ」
まぁ予想の範囲内だ。どうせ能力なんてないのだ。
「けど、お前らには見せてやってもいい」
「え」
意外なその言葉に、俺達は驚くしかなかった。
漁に促されるまま、人目のつかない体育館裏に来た。
「そんじゃ、いくぞー」
そういって俺と志木さんから少し離れた場所に漁は立った。そして、漁が目を閉じて少ししたら...
「消えた...!」
急に漁の姿が薄くなり、消えた。
「こっちだ」
声をかけられ、後ろへ振り向く。するとそこには漁の姿があった。
「すごいです!ほんとに能力者です!」
(志木さんテンション上げ上げだなー...)
しかし、現に今ここで起きたことは、紛れもなく超常現象なわけで、それはつまり...
「ほんとに...能力者なのか...」
「な、どーよ?」
「いや、どーよって言われても」
まさかほんとにこんなことがあるとは思ってもみなかった。なにせこういった類のことは、何かトリックがあるか嘘かのどっちかが普通だからだ。
「まぁそんなわけで、俺は実は...ってやつよ」
またまたドヤ顔。すごいけどちょっとウザいぞその顔。
「んじゃあそろそろ人も減っただろうし、いろいろ買いに行くかー」
やりきった感を出しつつ、漁は話題を切り替える。
そう、漁のせいで忘れていたが、必要品を買いに行かなければいけないのだ。
体育館内に戻ると、生徒の数はかなり減っていた。それと、
「せっかく3人いるんですし、手分けしてみんなの分買いませんか?」
という志木さんの提案によって、俺達はかなり短い時間で、それぞれ買い揃えた。
そのあと、教室に戻り、くだらない世間話やらを繰り広げた。
で、今に至る。
志木さんのキャラが変わったように感じていたが、本人曰く、「初対面の人とは緊張しちゃうから、気弱キャラみたいだったけど、慣れれば普通になる」とのこと。
この教室でのおしゃべりで、それぞれ少し踏み込んだ自己紹介もした。
例えば漁は、中等部からいたこと、それとああいう気さくな性格のおかげで無駄に人脈が広いこと、出身は青森県の辺境にある集落であること、集落という狭い世界から出てものを知るためにこっちへ来たこと。志木さんは、いろんなところを何度も転々としているのだとか。ここへも、その影響での入学らしい。
(にしても、よくもまぁ青森やら何やらから愛知へ来たもんだなぁ...)
ちなみに、大空学園は愛知県にある。俺は愛知出身だ。
そして今は、漁の話を聞かされている。人助けだかなんだかの話らしいが、絶対に盛もってる。しかし、このくだらなさもまた、面白くはある。
こうして談笑していた俺は、教室の扉から自分を見る影に気づかなかった。
やあやあ、ゆきゆきですです。
真くんがしこしこしてたのに便乗して、二文字を繰り返すという愚行に出ました。すいません。
なんと前回の投稿から3日くらいしか経ってないのに、もう投稿です。このペース配分でマラソンしたら一瞬で息上がってリタイア必至ですね。
この作品が一瞬でリタイアしないようにしたいです。
さてさて、今回は新たな設定が生まれましたね。これが今後どうなっていくのか、自分自身想像できません。なぜなら何の考えもなしに書いたからです。バカデスネー
次回はどうなるでしょうか...それは次回のお楽しみ!
え...当然?そりゃそうでしょう、次回なんですから
アホなこと言ってないで続き考えようと思います
それでは、また次回!今後もよろしこしこ。