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4話3幕

 俺たちは早速動き出した。まずは体育館から出る。そして、人気(ひとけ)のない場所に向かう。

「漁、人気のない場所は?」

「いくつか思い当たるところがある。一つずつ行ってみてもいいけど」

「...いや、それだとバレる。1発でいきたい」

「だよな...確実に人がいないとこ...とすると」

 そうして俺たちは、普通にいろいろ見て回る振りをして、ある場所を目指した。


「ここが入口だ」

 漁の案内で来たのは、旧校舎と言われる、まぁ廃校舎だ。今では、余分な机や倉庫に入り切らない道具などが所狭(ところせま)しと置いてある。道具を置いてある関係で、定期的に掃除を行っているらしいが、少なくともまず人がいないということに関して、ここに勝る場所はないという。それを利用して、ここで男女が肉体関係を...なんてことも、噂程度だがあるようだ。

 そんな旧校舎は、ちゃちな校門のようなものと、それに掛けられた「関係者以外立入禁止」の看板で封鎖されていた。だが、鎖や南京錠といった(たぐい)のものはなく、簡単には入れてしまう。

「うわ...肝試しに使われそうだな...」

 入った瞬間の印象はまずそれだ。ホコリをうっすらかぶっていて、電気が通っていないのか非常口案内の看板すら(とも)っていない。

 最低限のみ確保された通り道はあるものの、やはり机やらなんやらで、廊下すら狭くなっている。

「なんだこりゃ?」

 ふと見れば、高さが自分の身長くらいはありそうな透明な謎の固形物があった。

「あぁそれ、寒天だ」

「寒天!?」

 言われればそれっぽいが、そもそも寒天って乾燥してもこんな質感や透明度保てたっけ...?

 そう思い触ってみると。

「濡れてる!?」

「まぁ、多分作りたてなんだろ」

「作りたて!?」

 誰がどうこんな巨大な寒天をつくったのか。なぜここに置いたのか。謎は深まるばかりである。

「にしても、いろいろあるな...」

 見回せば、先ほどの寒天と同じように、なぜそんなものがあるのか不明なものが沢山あった。

「...宍戸、それ、そんなにいいか...?」

 そう、今の宍戸が着ていて、漁と俺がドン引きしているもの。ムカデの着ぐるみもそのひとつだ。

「もぐもぐ...快適だぞ?」

 ...よくわからん。

 さらに、今宍戸が食べているもの。

「なんでカットわかめ...」

 小さく切って乾燥させたワカメ、通称カットわかめを、宍戸はスナック菓子のごとく食べている。しかも、干してあるのを見つけたから、手作りの可能性が高い。いや、美味しいんだろうけど、それを食べたらダメだろ。


 そんな訳の分からない旧校舎の、一番上の階の一番奥の元教室に来た。

「流石に4階は疲れた...」

「まぁ元はちゃんとした校舎だからな、仕方ないだろう」

 そんな風に、まるで出来心で遊びに来たかのように。しかし、細心の注意を払って。

 宍戸がドアから廊下を覗く。

「狙い通り、かなり間を開けているのか、少しまだ距離がある。もう少ししたらドアまで来るだろう」

「じゃあ早速、かな。漁、頼むよ」

「おうよ。でも初めてだから...下手だったらごめんね...」

「どう下手なんだよ」

 瞬間移動に下手とかあるのか?移動先が上空だったとか地面の中だったとかは流石にシャレにならない。

「そんな...言わせんなよ...」

 頬を染めながら言う漁。めちゃくちゃ気持ち悪い。

「なんでもいいから早くしろよ」

「ほいほい」

 集中するためか、漁は目を閉じる。

「これを...こう!」

 そして、漁がカッと目を開き、その能力を――――

「あれ?」

――――発揮しなかった。

「あ、あれ?やっぱ他の人にはできねーのかな?じゃあ自分に...って自分が瞬間移動したって意味ねぇよ!」

「...」「...」

 宍戸がインチキ占い師とか胡散臭い営業マンを見るような目で漁を見る。

「本当なのか...?」

 瞬間移動の能力について非常に疑問のようだ。まぁそれもそうだろう。

「一応、こいつが瞬間移動したのはこの目で見たけど...まぁ自分にしか使えない能力なんだろうなぁ」

 カタ、と、何かが当たる音。そして人の気配。

 俺たちはドアの方を警戒する。例の暴漢だろうか。

「君たち」

 そんな俺たちの考えをよそに、向こうから声がかけられた。

「え?」

 その声に、漁がなにやら苦い顔をしている。

「こんなところで何をしているのかな?」

「げ...」

 漁がうめく。そして...

「ここは立入禁止ではないけど...なぜこんなところに来て遊んでいるんだ?」

「まさか...」

 宍戸まで後ずさる。

「それと、人を見た瞬間に、げっ、と言ったり後ずさったりするのは失礼じゃないか?」

 見れば、腰に届くか届かないかという長いストレートの黒髪をたなびかせ、凛としていかにも堅物と言うような雰囲気を(まと)った女子生徒がいた。

「えっと...どなた?」

 漁と宍戸は知っているようだが、俺にはよくわからん。まず名乗ってもらわねば。

「そいつは...風紀委員長だ...」

 漁が答えてくれた。

「風紀委員長...?」

 よく見れば、腕に「風紀委員」の腕章がある。

「あぁ...ただでさえ厳しかった風紀委員がさらに厳しくなった原因、鬼の風、警察よりも公序良俗に反することを許さない最恐(さいきょう)の委員会の(おさ)だ」

 だが、これを聞いた風紀委員長さんの顔がしかめられる。

「ほう...漁、それは一体誰が言い出したことだ?」

「ぅぐっ」

 風紀委員長さんに睨まれた漁は、まさに蛇に睨まれた蛙のようだった。しかも漁の名前を知っているあたり知り合いなんだろうか。

 というか、風紀委員長の名前が知りたかったのだが、どんどん路線がズレていってる。もうスルーしよっかな。

「まぁどうせ…全てお前が言い出したんだろう!」

「ごめんなさい!!!!!!!」

 もうスルーでいいや。

「まぁとりあえずだ、風紀委員長さん」

 プライドを捨て土下座する漁をほっぽって、俺を指しながら宍戸が話を戻す。

「こいつのために名乗ってやってくれ。そろそろ呆れて全スルーの体制に入ろうとしている」

 路線を戻してくれたようだ。ありがたい。しかし、なぜ俺の考えていることがわかったのか。

「お前は表情に出やすいからな」

 と、疑問に思っていた俺に宍戸が笑いながら言う。そんなにわかりやすいかなぁ。

「あぁ、すまない。ヒートアップしてしまった」

 そう言いながら律儀にこちらに正面に向き直り、そして改めて彼女は挨拶する。

「私はこの大空学園高等部3年、風紀委員長の真田(さなだ)風香(ふうか)だ。よろしく」

 それから、握手を促すように手を出す。

「あ、どうも」

 俺もそれに応え、握手をする。なんだかこういうのは慣れない。

 そんな感じで、俺たちはてっきり後ろからついてきていた人物は、風紀委員長・真田先輩だと思い込んで安心してしまっていた。

――――教室のドアのガラスに、人影があったことにも気づかずに。

やつを追う前に言っておくッ!

おれは今やつのスタンドをほんのちょっぴりだが体験した

い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……



あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!



         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ

         (.___,,,... -ァァフ|          

          |i i|    }! }} //|

         |l、{   j} /,,ィ//|           

        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ          

        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |

       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人      

     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ      

    ,゛  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉

     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        

    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ

   /'´r -―一ァ‐゛T´ '"´ /::::/-‐  \    

   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ 

  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }

_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...  イ


『おれは夏休みだし書くぞと意気込んでいたが

   寝て起きたら11月だった』


な…何を言ってるのかわからねーと思うが

おれも何をされたのかわからなかった…

頭がどうにかなりそうだった…

催眠術だとか超スピードだとか

そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…



……………すいません(*_ _)

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