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3話4幕

 昼休みのあとも、別段何事もなく授業は進んだ。とはいえ、初回の授業ということで、先生自身の話を聴いたり、自己紹介させられたり、その科目の授業がどんなものか聴いたり、授業らしい授業はしなかった。

(自己紹介とか(つら)すぎなんだよな...)

 ああいうのは名前を言う程度でいいと思っているのだが、周りがうるさいせいでいろいろ言わざるを得なくなった。自分自身の先行きも不安である。

 帰りのホームルームが終わり、生徒達は各々、仲良くなった者同士で連絡先を交換していた。俺も周りの席の生徒や宍戸と、連絡先を交換しつつ雑談していた。

 連絡先といっても、電話番号やメールアドレスではなく、最近流行りのメッセージアプリ「PINE(パイン)」である。通話機能はないが、かかるお金やらの関係で様々な人間に重宝されている。先日中学時代の友人と連絡していたのもこれだ。

 しかしまぁ、放課後に夕日のオレンジに照らされた教室内で友人と駄弁(だべ)るというのは、なんだかまさに高校生という感じがする。勝手なイメージだが。

「おーい藤方、宍戸ー」

 不意に呼びかけられる。誰かと振り向くと、カビだった。

「おうカビ、どうした?」

「なんだカビ、俺は却下だぞ」

「カビってなんだよ、ひでぇなお前ら。あと宍戸、俺はまだ何も言ってない」

 漁...いやカビは若干ショックを受けつつもいつも通りだ。

「ていうかなんでみんな俺のことカビって言うんだ...?」

 独り言のようなその()いに宍戸が答える。

「お前は決闘に負けたからな、それでそのあだ名になった」

「なんだと!?」

 漁はたいそう驚いていた。意識を失っている間に決まったのだから知らなくてもおかしくはない。

「決闘のルールだ、1ヶ月は我慢するんだな」

「いや、最初の1ヶ月それで落ち着いてたら定着しちゃうだろ!」

 憤慨しているようだが、そもそものことを言ってみる。

「お前があんなもので解決させようとしたのが悪かったんじゃないのか?」

 そう、最初に決闘の件を受けたのは漁である。

「ぐっ...確かに最初に受けたのは俺だけど...いや、それを言うなら提案者の宍戸が原因じゃねぇか!?」

 と、矛先が向いた宍戸は、

「俺はあくまで解決法の1つを提案しただけにすぎん、採用したのはお前だ。」

 綺麗にボールを投げ返していた。もはや漁にとってはボールどころかナイフになりかねないが。

「うぐぐ...け、けどよ、流石にもうちょっとマシなのなかったのかよ...?」

「いや...カビ食ったしなぁ...」

 どうやら不服なようだが、あだ名が決まった理由はこれである。

「食わせたのお前だろ!?」

 まだ不服の申し立てがあるらしい。めんどうなやつだなぁ。

「俺は口に入れただけだぞ」

「その後吐き出せないようにしたのは誰だったっけか!?」

「じゃあ飲み込まなきゃ良かっただろ」

「あの形容し(がた)い味を延々と味わい続けろってか!?それこそ気絶もんだわ!」

 まぁ実際、そもそもカビたものを食べた程度で意識を失ったりはしないはずなので、要は気持ちの問題である。

「なら吐き出せば良かっただろ」

「口塞いでたお前が言うか...どうやって吐き出せって言うんだよ」

「...鼻は塞いでなかっただろ?」

「お前アホか!あんなもん鼻から出すとかホラーやスプラッタ映画でも見ないくらいグロテスクだぞ!」

 確かにそれでは、周りの観戦者からも気絶する人がでていたかもしれない。

「まぁなんにせよ」

 宍戸が口を開く。

「食ったのは事実、今更それは覆らない。お前は来月から如何にカビと呼ばれないよう定着させずにいるかが重要なんじゃないか?」

「んんん...」

 そして漁は諦めたようにため息をついた。

「まぁいいや...きっとみんなもふざけてる時にしか使わないだろ」

 それはもしやフラグなのではなかろうか。

「それはそうとだな」

 そう話題を切り替えつつ、漁は1枚の紙を取り出した。

「2人とも部活はまだ考えてないって言ってたよな」

「そうだな」

 漁は取り出した紙を俺達の前に出した。

「部活を新しく作ろうと思うんだが...良ければ参加してくれないか?設立前に5人は確保しとかないとダメなんだよ」

 そういって見せられた紙は、部設立の申請書だ。部活名は...

「現代文化・技術研究部?なんだそりゃ」

 名称がまるで、げん〇けんのような雰囲気を醸し出している。

 ふとしたように、宍戸が問う。

「これって、部の必要があるのか?それに、大学のサークルを探せば似たようなのはあるだろう」

 そういえばこの大空学園では、中学、高校、大学で部やサークルを共有している。だから、中学生が高校や大学のサークルに入ったり、大学生が中学や高校の部に入ったりもできる。もはや、中学の、とか言うよりは、学園の、だ。それを利用して、最大で10年同じ部に所属し続けることも可能だ。

「んーまぁな、似たようなのはあったけど、俺の求めてるのと違ったんだよ」

「というと?」

「要は“運動”も“勉強”も“遊び”も全部したいわけよ。それを叶えるいい方法を思いついたわけだ」

 結局どういうことかさっぱりわからない。一体どういうことか、と問おうとしたら、先に漁が話した。

「そこでこの部なわけよ」

 やっぱりどういうことかわからない。

「で、その部はなんなんだ?」

 流石に宍戸が訊く。

「この部はな、端的に言えば、ゲームだとかのために技術研究と開発をするのさ」

「研究開発...?そりゃ本職の仕事じゃないのか?」

 というかそもそも、学生が部活の時間程度でそこまでできるのかという問題もある。

「なに、俺のツテがあればその手の知識持ったヤツ1人や2人呼べるさ」

「なんでもありだな...」

 そこでまた宍戸が質問。

「具体的には何をするんだ?」

 一番知りたい核心部分だ。というか最初からこれを求めているのだが、漁はもったいぶって話すのが好きなんだろうか。

「例えばほら、VRとかそういうの、最近普通に販売され始めたろ?でも、望むものに近くなってきたとはいえ、望む形じゃないんだよ。だから自分らで作っちまえってことよ。」

「あー、SA〇みたいな」

「そうそう。あと、電脳コ〇ルみたいなのとかもできそうだとおもうんだよ」

「なるほど、どっちも確かに夢見たな」

 俺も宍戸も納得だ。納得だが...

「本当にできるのか?」

 漁はうーんと唸って少し考える仕草をする。

「その手の知識のあるヤツ探して頼めばできなくはないと思う。ただ、技術的に若干厳しいかもしれないな。けど、そのために部活なんだ」

 宍戸は得心がいったように手をつき、自分なりの解釈を述べる。

「そうか、正式な部なら部費が出るから自分たちで負担する予算は多少少なくできるし、そういうことをする部活と銘打てば、どんな人間がいるかわからんこの広い学園、その手の人間が集まりやすいということか」

「そういうことよ」

 なるほど。そういうことならわからなくもない。ITや工業技術の勉強だといえば、学園側も比較的簡単に部として認めるだろうし活動もしやすいだろう。だが、やはり懸念されるのは、そういった開発ができる人間がいるのかということだ。

「まぁ最悪、みんなで参考書使って勉強しながらでもいいだろ。勉強もする部なんだし。」

 見透かしたように漁が答える。

 すると宍戸は、さらに質問をぶつける。

「それはわかった。だがお前はさっき、“運動も”といったな、どういうことだ?」

「さっき言ったとおり、電脳〇イルみたいなことをしたいわけよ。走り回るだろ?運動じゃん?」

 無理矢理な感じがすごい。しかし...

「まぁ確かに、面白そうではあるな」

「だろ?どうよお二人」

「ふむ...悪いがもう少し考えさせてくれ。明日、部やサークルの発表会があるだろう、あれを回って見てからでもいいだろう?」

 この学園では、入学式が明けて最初の休み、すなわち今年ならば明日に、学園全体で教室やグラウンドなどで各部活・サークルが活動の一部や成果を見せる、一方向学祭に近しいものが開催される。まぁ模擬店などは当然ないが。

「まぁそうだな、いろんなの見て考えたほうがいいだろうな。藤方はどうする?」

「うーん...俺も宍戸と同じ方向にしようかな」

「りょーかい、もしこの部に入りたければ早めに言ってくれな、できれば5月中までには申請したいし」

 5月中まで...?何かイベントでもあっただろうか。

 そんな疑問が顔に出ていたのだろうか。漁はまた見透かしたように言う。

「夏休みにはいろんなリア充イベントが目白押しだ。それに間に合うようにしなきゃいけねぇ」

 そして一呼吸おいて、漁は力強く言った。

「いいか、青春するには準備がいるんだぜ」


 何時間か前。

(ぬふふ...お兄ちゃんや...どんなモノを隠してるのかね...?)

 家宅もとい兄の部屋を大絶賛捜索中なのは、藤方南である。

 自分の荷物を片付けなければいけないはずだが...

「年頃の女の子は兄の部屋の秘密が気になってしまうのでーす」

 ...きっとそんなことはないだろう。

 南は、こっそりする必要もないのにこっそりと忍び込み、早速ベッドの下を確認する。

「トレジャートレジャー...おっ」

 そこにあったのは、背の低いケース。開けて中を見ると...

「工具...?」

 かなり細いドライバーや、三角ドライバー、ラジオペンチ、はんだごて等々その他もろもろ。北斗はパソコンの手入れや組み立て、部品の付け替えに使ったりしているのだが...

「なんでこんなのが...見たことないのもあるし」

 南にはわからなかったようだ。

 その他にもいくつかケースがあり、全て開けて確認したが、エロ本もエロゲーもなく、ゲーム機やゲームソフト、TCGのカードなどだけだった。

「しっかしまぁ...ものの見事にそれらしいものが...」

 クローゼットを探す。

「...ない」

 机の下。

「ない」

 布団の中。

「ない!」

 部屋中をひっくり返す勢いで粗探ししても。

「なんでなかとばい!!」

 本棚にも有名どころからマイナーなものまで漫画やラノベが置いてあり、アニソン、バンド等いろんなジャンルのCDもあったが、やはりR18のものがない。

「絶対あるはずなのに...なんでないの...?」

 タネ明かしすると、クローゼットの上の方に棚があり、その棚には制服の夏服だとか五月人形といった行事のときに出すものが入れられたダンボールが置いてある。それに隠れて、天井裏に続く入口があり、そこを開けるとようやくエロゲーが置いてあるのだ。隙間もほとんど見えないような蓋があるため気づきにくい。

 そこまで頭が回らず、南はあえなく断念することにした。

「見つかんなかったな...うーん暇だ」

 荷物を片付けなければいけないはずだが暇らしい。

 南は少し思案して、あることを思いつく。

「そーだ、さっき見つけたアルバム見よっと」

 ベッドに下にあったケースのうちの一つに、アルバムが入っているものがあった。そこから一冊取り出し、パラパラと(めく)っていく。

「おおー、お兄ちゃんのちっちゃい頃、すっごい可愛いじゃん。」

 そこで、ある写真に目が留まる。

「ん...これって...?」

 そこには、笑顔でピースをする小学生くらいの北斗と共に、空手か柔道か、道着を着てトロフィーを抱える、写真の北斗と同い年くらいの少女がいた。

暑いです、地球と太陽が殺しにきてます。そんな暑いと雪は溶けちゃうんですよ。

てことでゆきです。お話の中では春真っ只中ですが現実は夏真っ只中ですね。いかがお過ごしでしょうか。自分は絶賛友達が少ない状態中なので、夏のイベントは期待できません。青春しようにも準備をし損ねました。バカデスネー。読んでくださっているみなさんはそうでないことを願います...

それでは次回はきっと第4話。また一週間以上先になると思いますが、よろしくお願いします(`・ω・´)

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