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3話3幕

 宍戸の合図と同時に、俺と(いさり)は動き出す。

 一本取る、ということは、何かしら簡単かつ明瞭(めいりょう)な基準があるはず。例えば剣道なら、(めん)、胴、小手(こて)に一撃入れば一本だ。

 それならと、俺はひとまず漁の脳天を狙うことにした。

「そりゃっ」

 大きくは振りかぶらず、素早く脳天を取りに行く。

「うお!?」

 しかし避けられてしまう。

「藤方お前!本気で頭狙って来ただろ!」

「そんなことはないさ」

 何やら憤慨しているが、さっき漁が言ったとおり俺たちは社会的生命を()けている。生半可な覚悟ではいられないのだ。

 続けて頭を叩きにかかるが、何気に反応が良い。なかなか当てさせてくれない。

「くっそ、このリーチ差反則だろっ...」

 実質素手に等しいという厳しいハンデを背負いながらも、漁は俺の懐を狙って来ている。動きが良いせいで俺自身は漁を近づけないことに必死だ。

(こいつを絶対に近づけさせなくするには...あ、そうだ)

 俺はピンと来て、おたまを今までと逆、逆さ向きに持ち直す。

「...?何のつもりだ?」

「お前を確実にやるためさ」

 そして俺はおもむろに動き出し...

「ふっ」

 漁の目を目がけておたまで突きを繰り出す。

「うっおおおあ!?」

 漁は転がるようにして避け、距離を取る。

「おま、そりゃねぇだろ!」

「勝つためなら何でもしなきゃなぁ」

「サイコパスかよ...」

 ひどい言われようだが、実際そんな事は微塵も思っていない。ただただ、漁の目を潰してみたいだけである。

「こりゃぁ、本気でテメーの口を狙うしかないみてぇだな」

 そう言って漁は、よりすぐにカビ○ンルン(元鬼饅頭)が袋から出るように持ち直す。

「この非人道兵器で、社会的どころか物理的生命まで落としてやるぜ...」

「それはむしろ、お前が殺人で社会的生命おじゃんだからな?」

 非人道兵器って言っちゃってるし。

 今度は漁が動く。最小限の動きで素早く俺の口を狙う。だが、動きがわかりやすかったため、俺は首だけで避け、逆におたまで漁の頭を狙う。

 そこで俺はハッとした。

 漁は避け、再び互いに距離を取り、仕切り直し。

 俺は、呟くように言葉を発する。

「...おたま...」

「ん?なんだ?」

 漁だけでなく、宍戸やギャラリーも訝しんでいる。

「そうだ...」

「どうした?」

「おたまで、あたまを狙うんだ」

「は?」

「おたま!で、あたま!を狙うんだ!」

 クラスが静まり返る。

 そう、おたまとあたまは響きが似ているのだ。これは言わなくてはいけない。

「お前...アホか...?」

 冷たい風が教室内を吹き抜けた気がした。

 だが、これで漁は集中力を切らした。狙うなら今しかない。

(速攻で...決める!)

 俺は素早く動き、漁の手をおたまで叩く。

「あっしまっ...いってぇ!」

 痛みから、漁はついカ○ルンルンを手放す。

 俺は続けて、落ちていくカビル○ルンをおたまで掬うようにキャッチする。見ると袋がない。

「くそ...まさか武器を取られるとは...!」

 漁は、それでも戦うと言わんばかりに構える。だが、勝負は決している。

 俺は○ビルンルンが入ったおたまを、遠心力を利用し○ビルンルンが落ちないようにしつつ振り回し、漁の動きを制限する。更に、近づいて懐へ入る隙を伺う。

 その時、漁がバランスを崩しかけた。一瞬のことだが、見逃しはしない。

 俺は一気に距離を詰め、おたまで漁の腕を振り払いつつカビルン○ンを掴む。

「これでバイバイキンだ!」

 おたまを投げ捨て、思いっきり漁の両頬を空いた右手で押さえ、無理やり口を開く。

「アン○ーンチ!!!」

 そしてねじ込むように、漁の口の中にカビルンル○を入れる。

「それパンチじゃなおごぉっ」

 それパンチじゃない、とかそんなことは問題じゃないのだ。勝てばいいのだ、これでいいのだ。

(...これはひどいかな...)

 などと我ながら思うが、そのまま顎を無理矢理押さえて口を塞ぎ、吐き出せないようにする。

「これも俺の社会的生命のためだ...すまない、漁」

「もごっ、むーっ、んーっ、んんぐっ...」

 漁はしばらく何かを訴えながら暴れ、そしてそのまま崩れた。

「は...ひ、ふへ...ほ」

 と言い残し、ガクッと漁は意識を失った。

「それは登場シーンのセリフだ」

 適当にツッコんどいてやる。そこに宍戸が来て、俺の手を掴み、上に挙げる。

「勝者、藤方北斗!」

「意外とあっけなかったな」

 宍戸は俺を見て言う。

「それじゃ、コイツのあだ名を決めよう」

「そうだな...」

 俺は少し思案して、良さそうなあだ名を思いついた。

「...ふむ、いいあだ名だ。こいつも喜ぶだろう。みんな、今後漁はこのあだ名だ。いいな?」

 クラスメイトたちは、楽しそうに嬉々としてうなづいた。

 こうして漁は、しばらくの間いろいろな人間から、「カビ」と呼ばれることとなる。

(今日から授業あるのに、朝っぱらからこんなで良いのか...?)

 先行きが不安であった。



「ったく、なんて非道なんだ...」

 なんやかんやあって、4限の授業が終わって昼休み。俺とカビと宍戸で、一つの机で弁当を食べている。

「そもそも最初にやるかってふっかけたのはお前だぞ」

「う...そりゃそうだが、いくら何でもカビカビのもん食わせるかよ」

 だがそれに対し宍戸が突っ込む。

「お前も藤方に食わそうとしてただろう」

 カビは黙り込んでしまった。

「まぁ、結果的には周りに変に被害がなくてよかったし良いだろ。説教は食らったけど」

 あのあとカビ...もとい漁は保健室に運び込まれ、後から来て事情を知った担任の先生にクラス全員説教を食らってしまった。しかしクラス全員とても満足した顔をしていた。

「まぁ、みんな説教が気にならない程度には盛り上がっていたようだしいいじゃないか」

「ま、そうだなぁ」

 ただ、志木さんだけ、「...藤方くん、ちょっとやりすぎな気が...」と言っていた。まぁ確かにひどい事はしたと思うが、ああしなければ俺が同じ目にあっていたのだから仕方ないと思いたい。

(あんな変人カビ野郎にもそんな風に心配ができていい子だなぁ。志木さんは...可愛い良い子だなぁ。可愛いなぁ)

 などと考え顔を緩ませながら、弁当の炒飯を頬張る。

 今朝、南の昼用に作ったときに、ある程度弁当箱に入れて持ってきたものだ。

「まーたニヤけてんぞ」

 案の定カb...漁に指摘される。

「まぁ、ニヤけるようなこと考えてるからな」

 適当に答える。まぁ事実だが。

「エロいことでも考えてるのか?」

「宍戸よ、お前は俺をなんだと思ってるんだ」

「可愛いからって志木さんを舐めるように見た変態だろう」

 言い返せませんでした。

 そんな感じで、それなりに楽しく談笑しつつ弁当を食べ終わったところで、カ...漁が話を切り出す。

「お前ら、部活はどこに入るかとか考えてるか?」

「部活?」

 唐突な質問に少し驚く。

「いや...まだ決めてないな」

「俺は決めてないどころか考えてないや」

 俺と宍戸が答えると、カビは少し考えるようなふりをした。

「うーんそうか...おっけ、急に変なこと訊いて悪かったな」

「おう、構わんよ」

 その後、カビはものすごい勢いで休み時間授業時間構わず作業をし始めた。

(なんだ...?)

 俺は少し、嫌な予感を感じていた。

遅ればせながら...俺、参上!

俺の必殺...part3-3!

ということでゆきです3話3幕です

最近学校のことやらバイト始める手続きやらで全く時間がございません

いきなり壁にぶつかっております

なんと前回投稿したのが6月の中頃、これはよろしくないですね、ペースアップを目指します

というわけでまだまだ始まったばかり、頑張っていきます٩(。•ω•。)و

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