遅刻の朝
これは、とある世界のごく普通の高校生の朝である。
「お・・ちゃ・・。おに・・ん。」
誰かが俺の体を揺さぶる。
太陽の光が静かに照らす中、静けさとは打って変わって騒がしい日常が繰り広げられていた。
「お兄ちゃん!! お兄ちゃんってば。遅刻しちゃうよ!! ねぇ、起きてってば!!」
目覚ましの代わりにいつも妹が起こしに来る。
最初の頃はちゃんと目覚ましをかけていたが、いつも目覚ましが鳴る前に妹が起こしに来てしまう。
だから、最近は目覚ましをかけず妹に任せっきりである。
「おぉ、我が可愛い妹よ。あと五分……いや十分待ってくれないか……」
すると、妹は
「か、可愛いって……お兄ちゃんってばぁ」
揺さぶっていた手を離し顔に当てると照れながらそう言った。
その隙を狙って引っ張られていた布団を元に戻し二度寝モードに入った。
「もう、お兄ちゃんったら……」
そう言うと我に返った妹がベットの上に跨ると最終手段を取った。
妹はいつにも増して真剣な顔で俺の顔を見つめる。
「お、お兄ちゃん……」
妹の顔が徐々に近づき、あと少しで触れてしまうというところで、
「わぁぁああああ!! 今何しようとしたの!? 起こすだけだよね!!」
何かを感じた俺はとっさにベットから飛び出し妹と距離を取る。
「なぁ~んだ、ちゃんと起きてるじゃん。起きてるんだったら一回で起きてよね。」
どこか残念そうに見えるのは気のせいだろうか……
しかし、妹のそんな行動が可愛いと思ってしまったのはきっと俺の勘違いだろう
「おう、いつも起こしてくれてありがとな。アヤ」
俺は平然を装いそう返した。
「うん!! お兄ちゃんが朝弱いの知ってるからね」
そんな優しさだって可愛い。
(これが妹じゃなかったら……)
これ以上考えるのは兄の立場にいる以上ダメだと思う。
俺の名前は、朝比奈 ソウタ
そして、俺の妹 朝比奈 アヤ今は中学二年
家事なら何でもこなすが勉強は全然でいつも俺が教えている。
身長はあまり高いとは言えず、幼さの残る顔だが、前の学校ではモテていたらしい。
妹アヤが朝ごはんを作りに俺の部屋を出て一階へ降りようとしたとき、ふと気になったことを聞いた。
「なぁ、そういや今何時なんだ? 」
俺の部屋には時計がないのでそう確認するしかないのだ。
すると、アヤは振り返り悪い顔をしながら机にあったスマホを指差した。
「自分で確認すれば~」
そう言って、一階に下りて行ってしまった。
「ああいう意地が悪いところだけ直してくれれば完璧なんだけど……」
そう言いながら俺はスマホを手に取り、時間を確認すると、
七時四十五分
親の事情で引っ越し高校二年から転校だ。
今日はその高校の入学式。ちなみに八時からだ。前に手続とかで高校に行ったところ、高校まで三十分はかかった。この状況を考えると遅刻は間違いなしだ。
ふと、遅刻と転校生というワードに引っかかった。
「この流れでいくと俺はよくないことに巻き込まれる展開が……」
アニメなんかではよくある話だ。
「ま、そんなことないと思うけど……」
そんなことを考えながら、学校の行く準備をしていると、
「お兄ちゃん!? ほんとに遅刻しちゃうよ!!」
「あ……。」
さっきから、もう十分もたっていた。
俺は猛スピードで準備を終わらせ、朝飯もろくに食えず家を飛び出す。
「うおぉぉおおお!!!! もう絶対に間に合わないっ!! 間に合わないけど...せめて電車には乗らないと……!!」
ここの地域の電車はなぜか、朝は七時、七時半、八時二十分、の三本しか通ってなく八時二十分の電車を逃すと昼まで一本も通らないのである。
幸いなことに家から駅まではそう遠くはない。
俺は、アヤにパンぐらいもらっておけばと後悔しながら駅へと向かった。
現在、八時十分
駅に着くといつもそこまで人は多くないはずの駅に人だかりができていた。
しかし、そんな事を気にしていたら電車に間に合わないので、少し不安を覚えながらも駅の改札を潜った。
「な~んだ、電車待ちで混んでいたわけではないんだ。」
そこでさらに不安が広がる。
「うんん。今は学校に……」
今頃になって電車が行ってしまったのではないかと不安になりスマホで時間を確かめる。
現在、八時十五分
「ふぅー、間に合った!! って遅刻は遅刻なんだけど……」
俺はスマホをしまい、電車が来るのを待った。
数分後、いつも時間ピッタリに来る電車が三分遅れてきた。
俺はその電車に乗り、一番後ろの窓付近に座った。
電車は、一列十二席の四列、二列目三列目の間に人が通れる通路がある、まあいたって普通の電車だ。
しばらくたって電車が動き出し、俺はほんとなんとなくだが家に電話を掛けた。
「……」
家にいるのはアヤだけだ、親はどちらもほとんど家に帰ってこず、急な引っ越しのことだって、たったメール一通で済ませてしまった。
「……」
やっぱり忙しいのか、出ない。
その頃、いつも騒がしい家に電話のコール音だけが響いていた。
「まあ、忙しいなら仕方ないか」
俺はスマホの通話モードを切った。
「てか、考えてなかったけど初日から遅刻するって結構やばいことだよね」
そんな俺のいろんな不安をよそに電車は学校へと向かう。
初投稿の冬紀です。
全然小説とか書いたことなかったので、いろいろおかしなところもあったと思いますw
これからも続きをどんどん書いてこうと思います。なのでもし暇だったらこうしたらいいとか、誤字脱字あるよー、とかコメントくれたら嬉しいです。