表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

副会長シリーズ

私の敵は、超絶ヒロイン!?

作者: 秋原かざや

 微妙に妙だと思っていた。

 いろいろあって、成り行きで私は副会長になったわけだけど。

 本当におかしい。

 どういうこと?



 有能な生徒会長(男)が不能になってる?

 真面目な会計(男)がストライキ起こしてる?

 漢気溢れる監査(男)が妙に腑抜けになってる?

 雑務ならお任せな庶務(男)が、何故か捕まらない。

 クールビューティ書記(唯一女)が取り合ってくれない。


 ちょっと待て。

 もうすぐ、秋の合唱コンクールから始まり、進級して、更に行事を進めなくてはならないってときに!

 生徒会選挙のときは、あんなにがんばってたじゃない!

 どういうことよ!?


 仕方ないので、OBで元生徒会長なお兄ちゃん達に相談することにしました。

「生徒会が機能しない?」

「そうなの。みんな行事そっちのけで、何かに夢中になってるみたいで」

 上のお兄ちゃんが眉を顰めます。

 そんな顔もどきっとするのは、やっぱり、格好いいパパの血を引いているというかなんというか。

「夢中って何に夢中になってるんだ? まずはそこからだろ?」

 二番目のお兄ちゃん。あ、眼鏡が素敵です。

 ついでに言うと、お兄ちゃん両方とも、可愛い彼女さん持ちだったり。

「それがね、全然、教えてくれないの。何故か私を見て、もうちょっと可愛かったらねーみたいなこと言われちゃって」

「「………」」

 あれ? お兄ちゃんたち、どうかした?

「何がもうちょっと可愛かったらねー……だ」

「可愛い妹の、この愛らしさを知らないとは……」

 あれ? 変なスイッチ、入れちゃった?

 二人のお兄ちゃんの瞳がきゅぴーんと輝いています。ちょっと迫力あります。

「まずは、その黒縁眼鏡、外そうか。ああ、コンタクトは怖くないからね」

 そういって、上のお兄ちゃんがにこやかに外してきました。あれ?

「その髪型を解いて、ブローし直してやるよ。ついでにメイクもするか?」

 えっと、その……あれ?

「ついでに下着も替えておこう」

「ああ、あれ? ちょっと高いが、まあいいか。俺たちが出せば話だし」

 えっと、その、お兄ちゃん?

 翌日。

 別人28号になった、制服姿の私がおりました。はい。


 ううううう、なんだか、みんな私を見てる気がします。

 でも、下着がすごくて、俯いてもぴんとした姿勢が保たれてます。というか、ちょっとウエストがぴしっとしてて、しかもマイルドに支えてくれるから体に負担が少ないというか。

「あ、あれ? も、もしかして……副会長?」

 ああ、やっと分かってくれましたか、会長!!

「よかった、もうすぐコンクール近いですから、その準備を……」

「あ、ごめん。その日、忙しいんだ。彼女の誕生日だから」

 ………ちょっと待て、今、なんと?

「だから美柚ミユの誕生日があるんだ。だから、副会長。よろしく頼むよ」

 うわ。珍しくイケメンオーラ満載の素敵微笑みいただきました。

 その笑顔でどのくらいの女の子を魅了させたのかと、小一時間問いただしたいところです。

「会長! 学園みんなの行事と、たったひとりの女の子のイベントと、どっちが大事なんですか!!」

「そりゃ、美柚の誕生日だろ!」

 一時間討論したのですが、平行線で全然ダメでした。くうう。

 お兄ちゃんズにやってもらった大変身でもムリでした、くすんくすん。


 しかたなく、先生方の協力を得て、何とかコンクールを終えることができました。

 というか、美柚って誰?

「あ、副会長さん!」

 にこにこと可愛らしい女の子がやってきました。

 首元を揺らすリボンの色を見ると……え? 1年生?

 愛らしい女の子はにこにこと。

「蒼君が迷惑かけちゃったみたいでごめんなさい。でも蒼君も悪気があってしたことじゃないの」

 蒼君って、生徒会長!?

「これからは大丈夫だから。生徒会のお仕事もがんばってって言ったから、きっと大丈夫。迷惑かけて、本当にごめんなさいね」

 って、なんだか、ちょっと上から目線なのは気のせい?

 いやそれよりも、彼女の神々しいキラキラにこにこオーラは、なんだろう?

 こう、守ってあげたい気分になるのは、なぜ?

 いやそれよりも。

「あなたの名前は?」

「あ、申し遅れました。望月美柚です。これからもよろしくお願いしますね、副会長さん」


 !!!!!

 お兄ちゃん、見つけたよ!! 諸悪の根元が!!


 後ほど、調べてみたら、出るわ出るわ出てくるわ。

 学園のアイドルというか、イケメン、全員……彼女の毒牙にやられてる。

 ちなみに会長達は、その後も全く機能しませんでした。

 泣きながら3学期を終えて、新学期を迎えたのです。



 案の定、新学期に入ってきたイケメン、全員。

 美柚オーラに持っていかれました。

 もう、どうにでもしてって気分です。ええ。

 なんでこう、イケメンは、彼女のにこにこオーラにやられるかな?

 学園内の女子達もやさぐれるよ、うん。


 そんな中、素敵な先生がやってきました。

「初めまして、浅樹羅那です。担当は英語になります。皆さんどうぞ、よろしく」

 私の担任になった先生は、黒縁眼鏡だったけど、なかなかのイケメンでした。

 あ、目があった。


 ドキッ!!


 あうう、なに考えてるの! ダメよダメ!

 きっと浅樹先生も、きっと美柚の毒牙にやられちゃうのよ!

 今のうちに諦めるべき。うんそうよ。


 そう思ってました。

「あれ? 柊さん、忙しいみたいだけど、どうしたの?」

「あ、先生。これから一人生徒会なんですー」

 あはははと笑いながら、そういうと。

「一人生徒会? だって、生徒会ってちゃんと役員がいるんじゃ……」

「ああ、先生入ったばかりで知らないんですね。会長や監査、書記、全員、使い物にならないんです。残念なことに」

「使い物にならないって、この学校、かなり行事があって忙しいんじゃないの? 何とかしないと」

 そういう浅樹先生に私は笑います。

「それができたら、苦労しませんよー。でも大丈夫です。前年度も何とかなりましたから」

「だからって、一人で背負わせるには、重い仕事だよ。生徒会は何をやってるんだ!」

「だ、だから、本当にダメなんですよ。あの子がいる限りは」

「………あの子?」

 先生が言い返してきました。

 あ、あれ? なんだか先生、凄いオーラを纏ってるような気がするのは気のせいですか?

「え、えっと、2年の……望月、美柚さん……」

「ああ、僕のところに来た、あの子か……」

 なんだか、雲行きが変わってきました? 気のせいですか?


 私は浅樹先生と一緒に、美柚ちゃんところにきました。

 うわ、美柚ちゃん、ものすごいハンパないオーラを撒き散らしてます。ちょっとこっちもクラクラしてきました。

「あ、先生! 来てくれたんですか? 嬉しいです!」

「こんにちは、望月さん。今日はちょっと話に来たんです」

「まあ、先生から話だなんて……なんでしょう?」

 美柚ちゃんは頬を染めながら、わくわくと耳を傾けています。

「生徒会の人達が使い物にならなくなったって聞いたんだけど、それは本当?」

 すると美柚ちゃんは憂いを込めた瞳で、言いました。

「みんなの働く姿を見たいって言ったんですけど、全然、聞いてくれなくて」

「そう、ありがとう。もういいよ」

「え?」

 先生は私の腰(!)に手をかけて、歩き出しました。

「あ、先生! 話は、その、もういいんですか?」

 名残惜しそうな美柚ちゃんに、先生は一言。

「うん、それだけ聞きたかったから。ありがとう」

 そういって、そのまま行こうとしたんだけど、ちょっと足止めて、先生は振り返りました。


 私はそのときの先生を、忘れません。

「そうそう、僕、無能な人はいらないんだ。その意味、分かるよね? もちろん、無能を作り出す相手もね」

 なななななな、なんですか、その、誰もがぴきーんと凍りつきそうな、おっそろしい眼力は!

「さあ、行こう。まずは新しい生徒会を立ち上げるところからだね」

「えっと、先生?」

「ん? どうかした? 柊さん?」

 私を見る瞳が、すっごく優しくて。

 きゅんとしてしまいます。

「う、ううん、なんでも、ないです……」

「そう? ならいいんだ。それとね、柊さんに言いたいことがあるんだ」

 にこっと微笑んで、続けます。

「二人っきりのときは、沙奈って呼んでもいいかな?」

「ふえええええ!!?」

「僕と君との、二人だけの秘密だよ」


 えっと、その。

 こうして、私は新たな舞台ステージへと入りました。

 私は知りませんでした。出会った時からもう、私は既に浅樹先生ルートに入ってるなんて。

 実はこの世界が、恋愛ゲームの中だったなんて。

 私はちっとも知らなかったのです。


 その後、私は、相変わらず逆ハーレムを築いていく美柚ちゃんの横で。

「せ、先生……こんなところで、その……」

「何?」

「は、恥ずかしい……です、その……」

「大丈夫だよ、あの子も別の先生相手にやってたよ。見せ付けるように」

「で、でも! そうなったら、先生が……」

「それはそれで構わないよ。先生がダメなら、別のことをすればいいんだし」

「へっ!?」

 伝説の木の下で、大好きな先生と口付けを交わしました。

 その下でキスをすると、生涯結ばれるという、その言い伝えの木の下で。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 美柚さんが最後も平常運転で面白かったです。むしろ先生にシカトされたのに先生にこだわらずあっさり見限って次へと邁進するところにある種の潔さを感じました。 美柚さんならびに元生徒会の面々にも幸せ…
[良い点] 文章が読みやすくてスルッと楽しめました。 おもしろかったです [一言] しかしこれ、結局先生に口説かれ中の主人公も生徒会の仕事が手に付かない状態になって 一人生徒会どころか消滅生徒会になっ…
[一言] 主人公、可愛くなったのに全く効果がなかったのには同情しました。 どんだけ魅力がない主人公なの。(笑) ラスト、先生とくっつくのは嬉しいけれど、まずは仕事を放棄した 奴等のリコールや、新しい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ