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八咫烏




あれから数日。

そう、天国の夏休み真っ最中の事。


「あっつーい」

由緒正しい日本家屋。その縁側、そこに置かれた扇風機を前にして、そう叫んだ。

夏休み真っ盛りのなか、縁側でスイカを食べながら扇風機。

横に置かれた豚の蚊取り線香からは何とも言えない煙が立ち上る。

我ながら伝統的すぎる姿だ。

そんな事を思いながら、ゆるゆると時が過ぎるのを無意味に過ごしていた。

「ひまぁ……」

「ハルキ、お友達が来てるわよ」

「えっ、うそっ、今行く!!」

笑いながらヒトミさんがやってくる。

昨日、電話でリコと遊ぶ約束をしていたのだ。

きっと、リコ来たのだろう。

玄関に向かうと、リコとよけいなのがいた。

「お、おはよ……」

「おはよう、ハルキちゃん」

「はよう、ハルキ! さぁ、今日は妖怪ウォッチングだ!」

「断る」

なんで、なんでこの馬鹿がいるんだ。



「聞いてよ、最近お兄ちゃんがさ、変な人形拾ってきて……」

「え、拾って来た?」

縁側に、さっきまではいなかった二人の姿があった。

リコとあの馬鹿だ。

「なぁなぁ、それよりもさっきの話だろ?」

「あ、うん。そうだったねー」

「……裏切ったわね、リコ」

リコは意外と賀茂君と仲が良い。

なぜか知らないが、いろいろあいつの裏で暗躍している時がある。

今日の乱入にも絶対裏で手をまわしたのだ。

「裏切っただなんて、人聞きの悪い。それより、さっき烏見たんだけどね。その子に、足が三本あってさ!」

「足が三本?」

「そうそう、変でしょ」

人のよい笑みに騙されて、思わず話に引き込まれる。

「それ、ヤタガラスじゃないかしら?」

会話に入ってきたのはヒトミさんだった。

切ったスイカと飲み物をもってきてくれたようだ。

慌てて手伝いをしていると、あの馬鹿が突然手を叩いた。

「と、言う訳でヤタガラスを探しに行こう」

「そうか、勝手に探してきなさいな」

でも、なんでリコに妖怪が見えたのだろう。

と、一瞬疑問に思ったけど、思い出す。

妖怪の中には、ふつうに私みたいに視れる人じゃ無くても視れる妖怪がいるらしい。つい最近知ったことだ。

「あらあら。ところで、ヤタガラスってどういう妖怪だか知っているかしら?」

「え? さ、さぁ?」

知らないのに探しに行こうとしていた馬鹿は、ヒトミさんの話しに足を止める。

「太陽の化身とか言われる妖怪なのよ。中国の太陽に住む三本脚の鳥と同一視されることがあるわね。あと、鬼がいるか居ないのか、鳴き声で教えてくれる妖怪でもあると言われているわ」

「へー、それは便利な妖怪かも」

「そうだね。ハルキの所に一匹いたら、いつだって会う前に回避できるよね」

「うん」

一家に一人、いやそんなにいないけど、とにかく欲しい妖怪かも……。

それを言うと二人に笑われた。

その横で、賀茂は真剣に実用できるかを考えて居るのは、さすがに困ったが。

「じゃあ、鬼がいるとどうやって鳴くんですか?」

「リコ、興味あるの?」

「そりゃぁ、ちょっとはね」

「そうね……鬼がいる時は、有耶(うや)。居ないときは、無耶(むや)って鳴くらしいわ。だから、居るかいないのかよく解らないときとかは、うやむやっていうのよ」

なんだか、ちょっとした豆知識講座の様になってしまった。

でも、面白い。

妖怪とかあんまり興味ないけど、そういう雑学は好きだったりする。

「じゃあさ、リコが見た時、どんな鳴き方してた?」

「え、えっと……うや、だったっけ? む、むや……?」

どうやら、よく覚えていないらしい。

まぁ、飛んでいる鳥の鳴き方をいちいち覚えている人がいるとも思えない。鳥好きなら別だけども。

ぽん、っとヒトミさんは手を叩く。

「これぞまさしく、うやむやだわね」

「……誰が上手い事言えと」





///




烏が飛んでいた。

否。

あれは烏では無い。

巨大な体躯に三つの足。

太陽の化身とも言われる――ヤタガラス。


それは、二三度旋回すると、一人の青年の元に降り立つ。

そして

『無耶』

一声、あらぬ方向に向かって鳴いた。

「おや?」

そう言ったのは、倉掛悟史。

彼は、ヤタガラスを腕に止まらせて、そっと古い屋敷を見ている。

そして、また一声。今度は青年に向かってしっかりとヤタガラスは鳴いた。

『有耶』

「いや、どっちなんですか」



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