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七つの滞在 〜オタク男子の平穏な日常を破壊する、最強の美少女悪魔たち〜  作者: ほさ
転移先で再会!?因縁の相手

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『新たな悪霊は因縁の悪魔!?』

「なんで……。こんな強い悪霊が……っ」

ここは千葉某所にある、地下のゲームセンター。

薄暗いネオンと筐体の電子音が虚しく響く中、協会からの依頼でここに派遣されたエクソシストのエヴァ・リオンは、床に膝をつき、絶望の混じった声で呟いた。

「ねえ……。もっと強い人いないの? ここなら強い人がいる気配がしたから来たのに。まさかの格闘ゲームの話だったのね……。あなたはつまらない使い魔ばかりだし……」

エヴァの目の前でそう吐き捨てたのは、白くて長い髪をした真っ白な少女だった。その可憐な見た目とは裏腹に、彼女から放たれる魔力は常軌を逸している。

「くそ……。私の最強の使い魔があのクソルシファーにやられてなければ……っ!」

エヴァが悔しげに地面を叩く。

ピクッ……。

その言葉に、少女の白い眉が跳ね上がった。

「……ルシファー? いま、ルシファーって言った?」

「なに? あんたにもそういう知り合いがいるの? あいにく私にも、むかつく悪魔の知り合いがいるのよ……!」

それを聞いた瞬間、少女はいきなり顔を天に仰ぐと、

「アッハッハッハッハ!!!」

と、狂ったような高笑いをしだした。

「……? なによ……」

気味悪そうに見上げるエヴァを置き去りにしたまま、少女は笑い続ける。

しばらくして、少女は笑いの勢いのままガバッと下を向くと、その不気味な赤い目をらんらんと光らせて、ニヤリと凶悪に笑った。

「……あー。よかった。この世界にいたのね」

僕の名前は神代拓巳。異世界転移してきた悪魔たちと暮らすごく普通の大学生だ。

ここ最近は、本当に平和に暮らせている。なぜなら……。

「ねえ! アスモデウス! なんで卵割る時に殻が入らないのよ!」

朝からキッチンで叫んでいるのはルシファーだ。

「あらあら、そんなに力を込めなくていいのよ。平らなところでパカっとやって、パッと入れるのよ」

アスモデウスが隣で優しく手本を見せる。

「やってるのよ〜!」

騒がしくも微笑ましい声が聞こえてくる。この間のケーキを作ってくれた時から、ルシファーは料理をするようになったのだ。まあ……上手く作れるようになるにはまだまだ時間がかかりそうだけど。

「おはよう」

僕がリビングに入ると、先に起きてソファに座っていたベルフェゴールがトロンとした目を向けた。

「……おはよう。拓巳……今日も、散歩……」

「そうですね。朝食の後に行きましょうか」

ベルフェゴールにも良い変化があった。ずっと寝てばかりだった彼女も、朝は頑張って起きるようになり、時間がある時は僕と一緒に散歩に出かけるのだ。近くの海を見に行くのが最近の定番になっている。

逆に、何も変化がないのは――。

「うーん! このお菓子美味いなぁ! あれ? もうない……。ルシファー! 早くご飯持ってきてくれよ!」

リビングのテーブルでお菓子を漁っていたベルゼブブだ。

「あんたもこっち来て手伝いなさいよ!」

キッチンからルシファーの怒声が飛ぶ。

「俺は食べる専門だから無理だ!」

悪びれずに胸を張るベルゼブブに、僕はため息をついた。

(ハア……こいつは本当に変わらないな……)

「おはようベルゼブブ。ルシファーの言う通り、少しは手伝ってくださいよ」

「うーん、気が向いたらな!」

その時だった。

ガタァン!!!

玄関の方から、何かが激しく倒れ込むような大きな音が響いた。

「え?」と、一同の動きが止まる。

「こんな朝から宅配便ですかね? また何か頼んだんですか、ルシファー」

「何も頼んでないわよ! 何でも私のせいにするんじゃないわよ!」

キッチンから顔を出したルシファーが反論する中、ソファの上のベルフェゴールがピクリと耳を動かした。

「……これ、エヴァだ……」

「え? エヴァさん?」

僕は急いで立ち上がり、玄関に向かった。ガチャ、と扉を開けると、そこには全身ボロボロになり、息も絶え絶えになって倒れているエヴァの姿があった。

「エヴァさん!?」

僕は慌てて彼女の体を抱き上げる。

「……あれ……? かみしろ……てぃー……ちゃー……」

虚ろな目で僕を見つめ、蚊の鳴くような声で呟くエヴァ。

「いや、僕です! 拓巳ですよ!」

「あ……ああ……」

エヴァはそれだけ言うと、再びガクリと目を閉じてしまった。

「エヴァさん!? エヴァさん!!」

「ちょっとどいて!」

僕の後ろからルシファーが飛び出してきた。ルシファーがパッと手をかざすと、エヴァの体がふわっと宙に浮く。

「ベッドに運ぶわよ。あんたの両親の部屋を使いなさい!」

ルシファーは手際よくエヴァを浮かせたまま、一階の奥の部屋へと運んでいった。

それから数十分後――。

「……あれ? ここ……は……」

ベッドの上で、少しだけ目を開けたエヴァが寝たまま呟いた。

「やっと起きました? よかった……」

傍らで見守っていた僕は、ホッと胸をなでおろした。

「ここ……は……。あんたの家……?」

「ええ、そうですよ。エヴァさんがいきなりウチの玄関で倒れてたんです!」

「あ……そ……。そうだ!!」

記憶が繋がったのか、エヴァがガバッと勢いよく起き上がった。しかしすぐに顔を歪める。

「ううっ……!」

「あ、ダメですよ、安静にしてなきゃ! エヴァさん、本当に瀕死の状況だったんですから」

「そのまま死んでもよかったんだけどね。拓巳がどうしても助けろってうるさいから、私の魔力で応急処置しといたわよ」

部屋の奥の椅子に座り、フンスと腕を組んでいたルシファーがそっぽを向いて言った。

「あんた……」

エヴァがルシファーをキッと睨みつける。そこへ、お盆に乗せたお茶を持ってアスモデウスが入ってきた。

「あらあら、素直じゃないわねぇ、ルシファーちゃんは。エヴァちゃん、一番心配してオロオロしていたのはルシファーちゃんなのよ? だからちゃんと感謝してあげなさいね」

「お姉様……!」

エヴァはアスモデウスの言葉に顔を赤くし、ルシファーの方をチラっと見た。

「そ……それは……。ありがとぅ……」

蚊の鳴くような声で小さく呟くエヴァ。

「ふん! 別にどうでもいいわよ」

ルシファーは相変わらずツンツンしている。

「それで……一体何があったんですか? なんで僕の家でそんなボロボロに……」

僕が尋ねると、エヴァはアスモデウスからお茶を受け取り、一口飲んでから重い口を開いた。

「エクソシストの仕事でね、この近くの地下ゲームセンターに派遣されたのよ。そしたらそこに、白い髪の少女の形をした悪霊がいたわ。その悪霊が強すぎて、私じゃ手も足も出ずに……」

「それでおめおめと、負け犬みたいにここに逃げてきたってわけね」

ルシファーの容赦ないツッコミに、エヴァが声を荒らげる。

「くっ……それだけじゃないのよ! あいつ、あんたのことを知っていたわ!」

エヴァがベッドからルシファーを指差した。

「へ? 私を?」

ルシファーが素で驚く。

「そうよ。あいつ、あんたをここに連れてくる代わりに、私を生かして逃がしたのよ……」

「はん。人違いよ。大体、私がこの世界に来てから知り合った奴なんて数えるほどしかいないし、あんたも含めて全員人間よ」

「だけどあいつは、あんたのことを確かに『悪魔』だと知ってたし、この世界にいたって喜んでたわ!」

エヴァの必死な表情に、部屋の空気が張り詰める。僕はルシファーの顔を見た。

「ルシファー……そいつって、もしかして……」

「……おそらく、魔界の悪魔ね」

ルシファーの表情から余裕が消える。

「あらあら、白い髪の少女って……」

アスモデウスが顎に手を当てると、ルシファーは静かに立ち上がった。

「ええ。あいつしか、私の知ってるそんな悪魔はいないわ」

「どこ行くんですか、ルシファー」

歩き出そうとするルシファーの前に、僕は回った。

「ちょっと用ができたから、出かけてくるわよ」

「なら、僕も行きます」

「え? 拓巳には関係ないわよ! 危険なんだから大人しくしてなさい!」

「いえ、なんだかその話を聞いたら不安になったので。まあ、僕にできることは何もないですけど、一人で行かせるわけにはいきません」

真っ直ぐに目を見つめて言うと、ルシファーは一瞬言葉に詰まり、すこし顔を赤くした。

「……っ。勝手にすれば?」

ぷいっと顔を背けるルシファー。

「あらあら、それなら私たちも行かなきゃいけないわね。拓巳さんに何かあったら嫌だし、私たちの知り合いかもしれないもの」

アスモデウスが微笑むと、部屋の扉がパカッと開いた。

「……私も……行く……。あと……こいつも……」

入ってきたのはベルフェゴールだ。その小さな手には、ベルゼブブの首根っこががっしりと掴まれている。

「あんたたち……話を聞いてたの?」

ルシファーが呆れる。

「……うん。……拓巳のこと……私が守る……」

ベルフェゴールがボソッと言うと、掴まれたベルゼブブがバタバタと暴れた。

「いや、俺はご飯がないなら行かないって言ったんだぞ!?」

「ベルゼブブちゃん? あなたもこの家の住人なら、ちゃんと拓巳さんを守りなさい?」

アスモデウスが般若のようなニコニコ笑顔でプレッシャーをかけると、ベルゼブブは一瞬で硬直した。

「は、はいぃっ!! 喜んで行かせていただきます!」

「場所は、ここの近くにあるゲームセンターよ。協会の名前を出せば、封鎖されてても入れてくれるはずよ」

エヴァがスマホの地図画面を僕たちに見せる。

「じゃあエヴァさん、元気になるまではここにいていいですからね」

「エヴァちゃん、朝ごはん作っておいたから、後で温めて食べてね」

アスモデウスの優しい言葉に、エヴァの目が輝いた。

「えっ!? お姉様のお手製ですかっ!?」

「残念。あんたの分は、あたしが練習で作った焦げかけの卵焼きよ」

ルシファーがニヤリと笑う。

「チッ。……まぁ、気をつけてね」

エヴァは小さく舌打ちをしながらも、最後は心配そうに呟いた。

「ふん。退魔師に心配されるようじゃ、上級悪魔の名折れだわ」

ルシファーはそう言い残し、部屋から颯爽と出ていった。

こうして、魔界からの新たな来訪者、白い髪の悪魔に会うために、拓巳たちは因縁の地下ゲームセンターへと向かうのだった。

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