榊慎
本作は短編「秋雨」の関連作品です。先にそちらを読んでいただくと、より深くお楽しみいただけます。
榊先生の担当編集となったのは、もう二年前のことだ。
先生は二十年以上と、長くうちで執筆してくださっている。
その間、一度たりとも締切を破ったことがない。
編集のことも無下に扱わず、必要とあらば対話をする。――普通のことのようでいて、そうされない先生方も多い。
榊先生の担当は、「当たり」と言われる。
その当たりを引いた僕は、二年の間同僚に羨ましがられている。
榊先生は、静かだ。
穏やかという語の朗らかさはない。寡黙というのも違う気がする。
話題があれば話すし、それを厭うているようにも見えない。
ただ、静か。
そのせいか、担当編集をしていても、僕は先生のことを断片的にしか知らない。
「先生は、どんな子供だったんですか?」
小説の中で主人公の幼少期に触れる場面があったため、訊いてみた。
「そう面白いものではない。今と似たようなものだ」
その答えに、「今の先生と同じような子供は、なかなか珍しいと思いますけどね」と苦笑した。
しばらくして、前担当から先生は複雑な幼少期をお過ごしだったと聞いた。
小学生にもならぬ頃にご両親は蒸発し、お祖母さんに育てられたそうだ。
お祖父さんは早くに亡くなっており、お祖母さんと二人きりで暮らしていたという。
前担当がそれを知ったのは、お祖母さんが亡くなったときだった。
諸手続きがあるので、もしかすると締切に遅れるかもしれないと事前連絡が来た。
その際に「葬儀などを任せられる者が居ないから」と聞いたそうだ。
僕は先生ではない。それが、つらいものだったと決めつけることはできない。
ただ、僕だったら寂しいと感じた。
担当ということもあり、先生について知ろうとしたことがある。
目立った成果は得られなかったが。
数少ない成果を挙げるとすれば、先生は珈琲がお好きだ。
しかし、希少性や価格にこだわりはない。
ただ、「これはおいしい」「これは趣味ではない」と分別しているようだった。
有名な珈琲店であれ、近所の喫茶店であれ、同様に楽しまれている。……楽しむ、という言葉はあまり似合わないが、味わわれているようだった。
様々な店をご存知なので、よく喫茶店を開拓されるのか尋ねたことがある。
「特段、意識したことはない」と返された。
雨を避けるためや休憩のため、適当な喫茶店に立ち寄ることはあるが、通う店は知人に教えてもらった場所が多いそうだ。
あとは……動物にはさほど興味がないみたいだ。
まだ担当になりたての頃、静かな先生に対し何を話せばいいか分からずにいると、窓の外を猫が通った。
先生の瞳がそれを追った気がしたので、質問した。「猫はお好きですか?」と。
「嫌いではない。ただ、一概には言えない」
「一概には言えない、とは?」
「……猫にもいろいろな者が居るだろう。器用な者も居れば、頑なな者も」
猫を者と呼ぶ。まるで、見知った誰かのことでも話すかのような口ぶり。
それはどこか、先生らしさを表していた。
先生との印象的なやり取りは、他にもある。
出版の際、様々な事柄をご報告したり、ご相談したりする。
装丁についてや、営業についてなど、様々だ。
そういったとき、先生はよほどでなければ否とは言わない。
本当に大丈夫か、と訊いた。答えはこうだった。
「私は読み書き専門だ。そういう、言語を超えた部分については、専門家に任せるよ」
その言葉を聞いた装丁家の方は、ほっと肩を撫で下ろした。
「よかった、『外見などどうでもいい』というわけではないのですね。たまにそういう方もいらっしゃるので」
それに対し、先生はわずかに視線を上げた。
「……『初めて手に取ったときは、表紙を見たはずだ』だったか」
「えっ?」
僕の反応に、先生の瞳はこちらを向いた。
「古い知人の言葉だ。『どんな話なのかは装丁から伝わる』と語っていた」
――だから、専門家である君たちに頼むよ。手に取ってみたい本にしてくれ。
先生の言葉に、責任と、やりがいを感じた。
とにかく、僕は榊先生を尊敬しているし、今後も共に仕事がしたい。したいと、思っていた。
ある日、榊先生から「頼みがある」と連絡が来た。
そんなことは初めてだったので、「僕にできることならなんでもします!」と答えた。
電話越しでも、苦笑しているのが伝わってきた。
「入院することになってね。執筆は病院でも行えるから問題ないのだが、打ち合わせの際に遠出するのは好ましくないらしい。次の打ち合わせの場所を変えてくれないか」
「それは、構わないですが……入院って、どうされたんですか?」
どくどくと心臓が鳴る。握られているのかと思うほど痛い。ひどく、うるさい。
電話の向こうの声がきちんと聞き取れているか、不安になる。
「病気だよ。少し調子が悪かったから病院に来てみたら、入院を言い渡された。最低限の荷物は持ってきているから安心してほしい」
「少しとは、どのくらいでしょうか。検査入院、とかですかね」
先生は『調子が悪かったから』とおっしゃっていた。
それでも、僕は藁にも縋りたかった。安心できる返答が欲しかった。
「――と診断されたよ。詳しくは、今度会ったときに話そうか。あぁ、上司や前任の担当に伝えても構わないよ。今後のスケジュールについて相談もあるだろうからね」
それでは、と通話が切られた。たぶん、僕がまだ混乱しているからだ。
冷静にさせるために、また今度とおっしゃった。
スマホを強く握り、床にへたり込んだ。
出版社内の自動販売機の真横だ。
小さなフリースペースとでもいうのか、飲み物を飲んだりちょっとした電話をするのに使われている場所。
ぎゅうと握り込んだスマホを、額にトンとぶつける。
「……あぁ」
意味もなく声が溢れる。心の揺れが、そうさせる。
死に触れて来なかったわけじゃない。
物語の中ではしょっちゅう。
現実でも、年老いた親族や事故にあった知人の葬式に出たこともある。
だけど、まさか榊先生が。そう思ってしまうのだ。
床に座り込んでいると、先生の前担当である先輩に声をかけられた。
「どうした?」
「先輩……」
僕の様子を見た彼は、「とりあえず」と近くの空き会議室に僕を連れていき、椅子に座らせた。
「ちょっと待ってろ」
そう言って部屋から出ていく彼の背中を見送る。
考えがまとまらず、ぼうっとしていると、先輩が戻ってきた。
手には、二つの缶珈琲。
「お前はブラック駄目だったよな?」
手渡されたそれが、ひんやりと僕の熱を奪う。
自分の身体がここに在るのだと示されるようだった。
「はい、ありがとうございます」
先生に同行して喫茶店にはよく行くけれど、僕はブラックが苦手だ。
初めての打ち合わせのとき。先生に合わせてブラックを頼んだ。
だけど好んでいないことが、すぐにバレてしまった。
「君と私は、編集者と作家だ。珈琲の趣味が合う必要はない。君は、君の好きなものを飲むといい」
そう言ってくださった。
ご好意に甘えて、僕はミルクと砂糖を足したのだった。
鼻先をくすぐる珈琲の香りが、先生との時間を思い出させる。
先生の状態は、どうなのだろうか。
先ほど、もっとしっかり聞くべきだった。
音にならない声が漏れる。ドロリとした沼に溺れてしまいそうだ。
握りしめた缶珈琲だけが、僕をここに繋げていてくれている気がする。
「で、何があった」
「あ……」
先輩は、いつもは向かいか斜め前に座る。「同性だろうがなんだろうが、ハラスメントだなんだって怖いからな」って。
そんな彼が、僕の隣にドサリと腰を下ろした。
「榊先生が……」
「榊先生が、どうした? まさか、倒れでもしたのか?」
「いえ」
倒れたわけじゃない。でも、それに近いことは起きている。
榊先生に伺ったことをそのまま伝えると、彼は「そうか」と何かを噛み締めるような顔をした。
「でも、どのくらい進行してるのかとか、ありますよね? 先日お会いしたときは元気そうでしたし」
先輩の苦い顔に、思わず言った。
気がつけば口をついていた言葉に、自分で希望を見た。
先生は打ち合わせの件にしか触れていない。
仕事を打ち切るだとか、そんな話はされていない。
「そうだな。実際に聞いてみないと分からない。もちろん、繊細な事柄だから気をつけて」
先輩はそう言って、僕の背中を軽く叩いた。
その手のひらは僕を元気づけるためのものだったが、瞳には何か迷いが感じられた。
「先輩……? どうされたんですか?」
さっきとは違って、僕が訊く番だった。
「――何も知らんよか、いいか。先生の代表作があるだろう? お前が好きだと言った、あの作品だ」
「はい。先輩がご担当だった……」
「あの作品のな、単行本の装丁をされていた先生が、同じ病気で亡くなられている」
驚きで、息を呑む。
先輩は、僕を落ち着かせるようにトントンと背中を軽く叩きながら続ける。
「その方――相良秋先生と榊先生は、高校からの付き合いだったそうだ。俺には、信頼し合ってるように見えた」
だから、ご本人もショックを受けてるかもしれない。
そう話す先輩はどこか、痛みを堪えるようだった。
その後、珈琲を飲み終えるまで先輩は付き添ってくれた。
「ありがとうございました。……ゴミは、僕が捨てておきます」
頭を下げると、その頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜられる。
「先輩、座る場所だけじゃなく、そういうのもハラスメントって言われるんですよ」
「お前……怖いこと言うなよ」
まったく、と呟きながら、先輩は廊下を歩いていった。デスクに戻るのだろう。
僕も、缶を捨てて席に戻ろう。
ゴミ箱に缶を入れる。カコンと音がする。
同時に、スマホがぶぶっと振動した。
ポケットから取り出して画面を見ると、先生からだった。
入院している病院についてのメッセージだ。
それに対し、明日お見舞いに行きたいと伝える。
断られるかもしれないと緊張したが、すぐに了承の旨が届いた。
太陽が真上を過ぎる頃、病院に着いた。
見舞いには花束を持ってきた。
何か好きなものを、と考えても、僕は珈琲しか知らないから。
だがその花束も、病院の受付で「持ち込みを禁止している」と伝えられた。
感染症防止のためだ、と。
花束は看護師さんが処分してくださるとのことだったので、お願いした。
結局手ぶらでの見舞いとなってしまった。
病室番号は聞いている。
個室が取れたのだと、だから遠慮はしなくていいと、メッセージに書いてあった。
ノックしようと右手を握ると、細かく震えていた。
息を吐いても止まらない震えをそのままにして、コンコンと音を鳴らした。
「どうぞ」
「失礼します」
扉を開けると、病院着の先生がベッドに座っていた。
パソコンを開いている様子から、原稿を進めているようだ。
その姿で改めて、本当に入院されているのだと実感した。
「先生、その……」
「まずは中に入って、座るといい」
勧められるがままに座った。先生の顔を見ることができず、俯いてしまう。
僕がこんなでは、駄目なのに。
顔を上げると、先生と目が合った。
いつもと変わらない、静かな空気を纏っている。
「病状について話そうか。医師の話では――」
要約すると、難しい状態らしい。
少なくとも手術が必要で、その後も投薬と通院を続けることになる。
ショックだった。けど先生は、僕以上に衝撃を受けたはずなのだ。
「でも、きっと大丈夫ですよ。いまは医学が進歩していますし……」
月並みな励まし。もっと、お伝えする言葉を考えてくればよかった。
膝の上で握り込んだ拳に力が入る。爪が手のひらに食い込むのを感じた。
「そうだな。だが、どうするかは選ばねばならない」
「選ぶって……何を?」
治療法だろうか。
でも、いま聞いた話からすると「選ぶ」ほどの手段はないように思えた。
その場合、「どうするか」という言葉はふさわしくない。まさか――
「もしかして治療をされないおつもりですか!?」
大きな声が出た。病院には似つかわしくない。
だけど、そんなこと気にしてはいられなかった。
「するにしても、しないにしても、だ。こういうときにすぐに決められるほど、自分が確立されていないと知ったよ」
いい歳をして、恥ずかしいものだ。
そう言う先生の顔に恥ずかしさなど欠片も浮かんでいなかった。
僕はただ、呆然とするしかなかった。
口を開けては、閉じた。
何を伝えればいいか。どうやって、何を言えばいいか。
『生きてください』
『これからもあなたの小説が読みたい』
ありきたりな台詞じゃ、先生には響かない気がした。
そんな僕に対して、先生はゆっくりと紡いでくれた。
「特段、自ら死に向かいたいわけじゃない。ただ、苦しんでまで生きると貫くほどの意志もない」
「それは……ご友人のことも、関係しているのですか」
「友人?」
先生は不思議そうに訊く。
誰の話だ、と言うように。
「装丁家の、相良秋先生です。先生と同じ病気で、亡くなったと……」
先生は目を見開いた。そして、くつくつと笑い始めた。
「あいつも、同じ病気だったのか」
そんな偶然があるものか。
零すように漏れた声は、どこか楽しげな音を含んでいた。
この人は、こんなふうに驚いて、こんなふうに笑うのか。
こんな状況なのに、その珍しさに気を引かれた。
静かな先生の、人間らしさが溢れていた。
「――悪いが、少しだけ席を外してくれないか」
「えっ?」
「小説が書きたくなった。そこに居てくれてもいいのだが、暇だろう」
いや……と、少し考え込む様子を見せてから、僕と目を合わせた。
「やはり、今日はもう帰ってくれても構わない。何、また連絡する」
それだけ言うと、僕から目を離し、パソコンに向き合った。
先生の中から、僕という存在がぽつねんと消えてしまったようだ。
先生からそんな扱いをされたのは、初めてだった。
カタカタとキーボードを叩く音と、カチカチと時計の針が進む音。
僕はそれらに身を委ね、ただ先生を見守った。
何時間、経っただろう。
窓の外が橙色を通り越して濃紺となり、近くの小学校の鐘の音が響いた。
先生の手が止まる。
どこか満足げに上がった口角に、「あぁ、また初めて見る先生だ」と思った。
先生はそこで、僕に気づいた。僕の存在が、彼の中でもう一度生まれる。
「まだ居たのか。――仕事は?」
自分のところで長く時間を使って大丈夫か。そう心配してくださった。
「今日は先生のお見舞いに来るので、午後は空けておいたんです」
「そうか。それは悪いことをしてしまったな。そろそろ面会時間も終わる。無駄な時間を使わせてしまった」
「無駄だなんて! そんなことありません! 敬愛する榊先生の執筆を共に過ごさせていただいて、光栄でした」
“敬愛する”だなんて、普段使わない言葉。口が滑ったとしか、言いようがない。
かぁっと顔が赤くなる。
それに、共に過ごすも何も、先生の時間に僕は居なかったじゃないか。
自己嫌悪とも内省ともつかない感情が、心を揺らす。
頭を上げたり下げたりする僕を、先生はただ受け止めてくださった。
だから、仮に響かなくても、受け止めてくださるのではないかと。
そう思って、言葉を紡ぐ。
「すみません、あの……僕、先生のこと尊敬してるんです。先生の話も好きです。だから……」
だから生きてほしいんです。
伝えようとした言葉は、先生の瞳の奥の、揺るがない静寂に飲み込まれた。
もう、決まっているのだと分かった。
僕がなんと言おうと、それがどう届こうと、僕の意思は介入できないのだと感じた。
視界が揺れる。歯がカタカタと鳴る。
どうしよう、先生が死を選んでしまったら。
こわい。震えが止まらない。
そんな僕に、先生は声をかけてくれた。
「――先ほどの言葉を訂正しておこう。治療を、受けようと思う」
「本当ですか!?」
またも、声を張り上げてしまった。
しかし先生は顔を顰めることもなく、続けてくださった。
「書きたい物語ができた。私は天才ではないが、本物の作家ではあるつもりだ。作品を書き上げる義務がある」
「先生は、天才です。天才で、本物の作家です」
本音だ。先生の作品は、たしかに派手に売れる作風ではない。
でも人の心を惹きつけて止まらない。少なくとも、僕の心は縫い留められた。
「ありがとう」とも「そんなことない」とも言わず、先生は続ける。
「タイトルは“シュウウ”。“秋の雨”と書いて、秋雨。一人の男が生まれ死ぬまでの、輝きと絶望の話だ。第一話は書き終えた。といっても、まだ荒いものだが。中身を確認して、君のところで出せるか掛け合ってくれないか」
「……っ! もちろんです!」
「では、データを送るよ。――ここで読んでもらうには、時間がない」
先生の視線の先にあるのは、病室の時計だ。もう面会時間が終わっている。いつ追い出されてもおかしくない。
持ってきた鞄を抱きしめ、先生に何度もお辞儀する。
部屋を出るときにも頭を下げたら、扉に頭をぶつけてしまった。
ガツンと打った頭を撫で、急ぎ足で出入り口を目指す。
会社に戻らなくちゃ!
戻って、読んで、上司を説得する。
これは、先生を生かすためではない。
先生があんな顔をするなんて、絶対に最高の作品になると信じているからだ。
僕は、編集者だ。
読み書き以外の部分については任されている。
先生の作品を届ける役目を、任されている。
ポケットで、メッセージが届く音がする。早速データを送ってくださったのだろう。
どんな話だろうか。どんなふうにプロデュースしようか。
少しだけ、思った。もしも、相良秋先生が居たらどんな装丁に――。
「考えても、仕方ないよな」
榊先生が望むかも分からない事柄に、そしてもう叶わない事柄に頭を使ってもどうしようもない。
病院を出ると、空には月が昇っていた。
「仲秋の名月だ」
一年で一番月が綺麗なこの日に、秋を冠する物語を出すと決めた。
それを書き切ると決めた。
「助からないわけがない、だろ」
声が震える。拳もまだ握ったままだ。頬だって、わずかに痙攣している。
「本物の、編集者なら」
意地を見せろ。
両手でパンと頬を叩く。衆目を集めたようだが気にしない。
駅に向かって駆け出した。編集長を口説く文句を考えながら。
*
雨が降ってきた。
雨宿りしようにも、この近くには何もない。
以前は喫茶店もあったが、ちょうど昨年閉店した。
良質な珈琲豆を使っているので少し値が張るが、その分学生がおらず静かなため、重宝していたのだが。
先ほど、編集者から連絡があった。最終話の最終稿が通ったという報せだ。
ここから先は、言語以外の領域となる。
――私の仕事は終わった。
さて、この後はどうするか。
「手術や治療の経験が何かを生むかと思ったが、そうもならなかったな」
命をかけた出来事ならば、何か着想を得るかと思っていたのだけれど。
小道から、にゃあ、と猫の鳴き声がした。
どうやら彼は、雨に濡れない道を知っているようだ。
私は猫ではないので、彼を追うことはできない。しかし――
「雨に濡れ続ける必要もない、か」
もう病院に通う理由もないと、来た道を振り返る。
家に帰って珈琲でも淹れよう。趣味に合う、いい珈琲がある。
灰色の空の下、珈琲の香りを思った。
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