Number.6 ビフォー・ザ・ストーム
「何か、見つかったか?」ミナト一行は、とある村に来ていた。と言っても、すでに廃村なのだが。
たった今、それを知ってがっかりしたところだった。
「なぁんも。しょうがねえよ、こんな目立つとこにある村なんて真っ先につぶされてら。」そういうシスクトも、少し残念そうな顔をしている。
民家がポツポツと建っているだけの小さな村は、なるほど開けた土地にあった。
「あ...これ...」フィティは、額縁に飾られた一枚の写真を見つけた。
家族の写真。母と、父と、娘が並んでいる写真。
父のぎこちない笑顔に、母の優しい笑顔に、娘の元気な笑顔に、懐かしさを感じた。
「なにか、見つけたのか?フィティ?」ミナトの声が聞こえてきた。フィティは「いえ、なにも」と返事をして額縁を置いた。本当のことを言う必要は、あるまい。
大きな杖をコツンと扉にぶつけながら、一つの民家からフィティが出てきた。
「ここはだめそうですね。食料もないですし」フィティは残念そうに俯く。
「形が残ってるだけましなほうさ。破壊されつくして跡形もない村だってあるんだぜ?」
フィティが加わる少し前にミナトたちが訪れた村は、道を残してそれが村であった痕跡を何一つ残していなかった。
民家を構成する物の一つすら残っておらず、一部の土地は爆破でもされたようにえぐれていた。
その凄惨な光景を見たとき、ミナトもシスクトも呆然と立ち尽くした。
怒りに身が震えるということもなく、ただ虚しさだけが残っていた。
「"スドキヨクル"ー?奴ら見つかったかー?」ハイフィスが何かを食べながら歩いてきた。
動物の肉のようだが、全くおいしそうに食べていない。
ここはハイフィス一味のアジトらしい。広い洞窟の中に、男たちが隠れるように暮らしている。
「さっき訪れた廃村に生命反応があります」"スドキヨクル"の目に映っているのは、今いる洞窟ではない。
あらゆる物体を貫通し、人型の赤い光が"スドキヨクル"の目に飛び込んでくる。
「詳しい数は分かりませんが、六人ほどです。」それを聞いたハイフィスはがっかりした。
「奴らは3人だった。こぉんな短期間で3人仲間が出来るとも考えにくい...」ハイフィスは食べていたものを無理やり口に押し込むと、壁にかけられていた剣を手に取った。
「が、生命反応ということは、少なくともデセアトではないのだろう。行ってみる価値はあるか...」そう言って、"スドキヨクル"へテレポート魔法の指示を出した。
「ようこそお越しくださったな。クスィグディスハス殿。」
白い床に白い壁、さらには白いテーブル。四方八方が白色に囲まれた不気味な部屋に、クスィグディスハスは立っている。目の前には、これまた白い椅子に座った男。しかし、彼の髪色は白ではなかった。
「..."リスト"は?」それを聞くなり、男は首を横に振った。
「意志のある連中はもうみんな入っちまったんだろう」
クスィグディスハスは男に疑いの目を向ける。
「あーあーそんな目をすんな。こっちからスカウトする気はないんだよ。」男は右手の掌をクスィグディスハスに突き付けた。
「......あまり魔王様を見くびるなよ?"クロス・ウィザード"の貴様とて逃げられぬぞ。」
「ハイハイ....魔王様、ね...」男はそう呟きながら、美しい赤髪を小さく揺らした。
ペリセデュー
魔族領に位置する都市。白色の建造物が多いのが特徴。
魔族領は魔王が管理するのが基本だが、このペリセデューに限り自治領として認められている。
ここの責任者は、魔王の古い友人だと言われている。




