Number.3 フィティ・ウィザード
「ね?言ったとおりでしょ。」少女はミナトの声にびっくりして目を開いた。
怯えながら見てみると、ミナトは目を瞑る前と変わらずそこに立っている。違うのは、何かを握っていることだった。
「ほら...」ミナトはゆっくりと手を広げた。ミナトの手から出た円錐状の物体が、地面に向かって落下した。
チチチ...不気味な音を鳴らしながら、デセアトは懲りずにミナトへ発砲した。
再び乾いた音が響き渡る。しかし、やはりミナトは死ななかった。
「だから意味ないってのに。」二発、三発...デセアトはミナトに向かって発砲し続けるが、やはり目前で止められる。ミナトは掴んだ銃弾を、パラパラと地面に落とした。
ミナトは、腰に携えた剣を引き抜いた。「次はこっちから、行くぞ!」
デセアトは相変わらず銃口をミナトに向けていたが、今度は発砲できなかった。
発砲するよりはるかに早く、デセアトは斬り裂かれていた。
「え!」少女は目で追うことすらできなかった。ミナトは既に剣をしまっている。
何が起きたのか、目の前の青年は今何をしたのか、少女には理解できなかった。
デセアトが砂のように崩れ始める。頑丈そうに見えたその装甲も、驚くほどあっけなく崩れ落ちた。
デセアトを構成していた砂が風にあおられて飛び去ったあと、ミナトは少女の方を向いた。
「君、平気?名前は?」ミナトは少女に向かって手を伸ばした。
「私...フィティ、フィティ・ジャッジと言います。」少女、もといフィティは戸惑いながらも、自己紹介をしてミナトの手を取った。
「おぉい!ミナトーッ!」遠くからシスクトが走ってきた。
全速力で走ってきたようで、二人がいる場所まで来た時にはぜぇぜぇと息を荒くしていた。
「お、お前...テレ...ポートなんて、つ、使えたのか...よ...」シスクトは荒い息遣いのままミナトをにらみつけた。
「い、いや、俺じゃない。気づいたら突然.....」ミナトは自分がしりもちをついた位置を一瞥した。
そこには、まだ大きな杖が落ちている。
「ええ...?じゃあ、そこのお嬢さんが...?」シスクトはフィティの方に目を向けた。
「え、いや私は何も.....」フィティは首を横に振った。
「......てか君、"ウィザード"じゃん。ライト・ウィザード。」シスクトは、フィティが着ているフードの内側にある"/"のマークを目ざとく見つけた。
「?ウィザード?何それ?」ミナトは困惑しながらフィティの方を見た。
「へぇ?知らないのかよ?今時珍しいぜ?要は"魔法使い"だよ。」
フィティは頷いた。
「は、はい...私は"ライト・ウィザード"の称号を確かに頂いています...でも、何をしても、魔法を発動できなくて...」フィティは後ろめたそうに自身の杖を見た。
「まあなァ...ウィザードの称号は今の実力だけじゃ決まらないっていうし...よく知らんけど。」
「あ、あの...!私を、連れて行ってくださいませんか?!」フィティは顔を上げ、二人をまっすぐ見つめる。
「つ、連れて行く...だって?あ、あのなぁ...俺たちゃ旅行してるんじゃないのよ!?」シスクトはフィティのまっすぐな視線に押されながらも、その発言には難色を示した。
「私、絶対いつか、"ライト・ウィザード"としてふさわしい人間になります!だから...」それでもフィティは意見を曲げない。
「つったって...さぁ...」
「...いいよ。一緒においで。」シスクトとは対照的に、ミナトはフィティの願いをあっさりと受け入れた。
「...ただし!」その言葉に、フィティはビクッと身を震わせた。
「俺たちの旅が終わるまでに、その"ふさわしい人間"になるんだよ。いいね?」
フィティは笑みを浮かべ「はい!」と元気よく答えた。
「.....ってことだけど、シスクトはいいかい?」ミナトは苦笑しながらシスクトを見た。
「いいかいって言われてもさぁ....全くズルいもんだぜ。ほら、ついてきなよ...ええっと?」シスクトはフィティに向かって手招きをする。
「私、フィティ・ジャッジです!」
魔法使い(ウィザード)
"魔法"を使う者たちを"ウィザード"もしくは"魔法使い"と言い、大きく3つに分類される。
治癒やステータスアップ等、補助系の魔法を専門に扱うのは「ライト・ウィザード」、
攻撃や防御等、戦闘系の魔法を専門に扱うのは「レフト・ウィザード」、
両方を扱える最上位の魔法使いは、「クロスウィザード」と呼ばれ、それぞれ"/"、"\"、"X"の意匠を身に着けている。
これらは単純な能力だけでなく、その人物の将来性も加味されて与えられるらしい。




