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あとがき
この物語は、「正しさ」や「優しさ」が、
いつの間にか人を縛ってしまうことについて書きました。
白でいること。
黒でいること。
それは本来、ただの色の違いだったはずなのに、
気づけば役割になり、期待になり、
声の重さまで決めてしまう。
白石は、いい人であることで守られてきました。
黒沢は、黙ることで自分を守ってきました。
どちらも、生きるために選んだ方法です。
間違いではありません。
でも、橋の上で二人がしたのは、
役割を交換することでも、
どちらかが救うことでもありません。
ただ、一緒に立っただけです。
怖いまま、同じ場所に。
渡る、というのは、
向こう岸へ行くことじゃなく、
途中で逃げないことなのかもしれません。
この物語の橋は、町に残りました。
けれど、本当に残ったのは、
「声を出してもいい場所」と
「黙らなくていい相手」だったと思います。
黒は、もう沈黙だけの色じゃない。
白は、もう汚れを恐れる色じゃない。
もしこの物語を読んで、
自分はどちら側だろう、と考えたなら、
その時点で、もう橋の上に立っています。
最後まで読んでくれて、ありがとう。
この物語は、ここで終わります。
お疲れ様でした。




