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はくし
「朝」が来た。「私」が生まれたばかりの頃は真っ白だった。何ひとつとして書き込まれていない、そういう真っ白。
「昼」が来た。初等教育、中等教育、高等教育を受けた。時が経つにつれて、その道では先端を歩む一人となった。そして行き詰まったときに、ふと軌跡を振り返ると、真っ白だった私は記憶という書き込みによって真っ黒になろうとしていた。かろうじて残っていた余白に最後を書き込むと完全な黒に覆われた。納得できたのならここでお終い。でも「私」は少しだけ道を外れることにした。
そして「夜」が来た。月光を灯りたらしめる「夜」。真っ白だった「私」が真っ黒になったのなら、黄色で新たに描けばいい。それは白紙に黒い鉛筆で描くよりも輝いて見えることだろう。