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上 精霊と変な人間の出会い

初めて、物語を書いてみました。文章の表現の誤りや誤字脱字の報告を躊躇わずお願いします

澄み切った空から見下ろす景色は何処までも、緑一色。高くそびえ立つ木々が深い影を作り、苔や茂みが足を覆い、魔物の雄叫びなんかが響き渡る、深い深い森の奥。


隣人たる、新しい芽吹きの風が私の羽をくすぐりながら知らせを届けます。ふむふむ、どうやら人間のお客さんがきたようです。皆さん、気になりますよね? そうでしょう?


それなら、ちょっと覗きに行ってみましょうか。私は羽を広げ、風が向く方向へと羽ばたき、木々の間をすり抜けます。


 あっ、いましたよ。ほらっ、あそこです。ふらふらと歩いている男が見えますね。ちょっと、近づいてみましょう。


ふーむ、私の目によれば、年は50後半といった所でしょうか? ボロい布切れで体全体を覆っていて、穴が空いたところから見せる肌は傷だらけで汚いです。髪や髭は長いこと洗っていないようで、変な感じに絡まっており、顔がやせ細っています。


うわっ。これはひどいですね、目が虚ろです。まるで、死人が歩いているようで、私を死者の国へと連れ去っていくのではと思わせます。


ドサッ……。


あっ! 受け身を取る事無く力尽きたように、倒れちゃいました。きっと、疲労のあまり気絶をしたのでしょう。


私は近くの木の枝の上に降り立ち、人間さんが起き上がるまで、彼がここに来た理由を考えます。


元来、この森にやって来る人間は大抵、罪人か命知らずの冒険者です。彼は前者が当てはまりそう。地図は持っていないようで、森の出口を探している内に奥まで来てしまったとか、そんな所でしょうか。


しかし、この様子でどうやって森の奥まで来れたのか? 見るからに弱そうですし、身なりから察するに、森で生き残る知恵もなさそうです。それに、この森は運だけで生き残れる場所ではありません。何かこの男には秘密がありそうです。


ゴソ、ゴソゴソ、カサッ、ゴソゴソゴソ。


あら、キングラビットとその群れがやってきたようです。人間さんは未だ、気を失ったままで、このまま彼が起きないとラビット達に食い殺されてしまうかもしれません。


しかし、私はこれをチャンスだと考えました。彼がこの森で生き残った力を見せるのではないかと、期待をします。


ラビット達は人間さんを突いてみたり、抵抗をしないことを確かめた後、鋭い歯で彼の肉を抉り、それを食べます。


ムシャムシャ、ベギッ、ムシャ、バギッベギッ。


人間さんは少し、ビクッと体を動かした後、捕食されるのを受け入れました。拍子抜けです。何か物凄い力を見せ、ラビット達を蹴散らすとか、実は無敵だった、みたいなことはなく、面白くありません。


この後は、段々と人間だった体は崩壊していき、食べ終わるころにはちょっとした骨と血まみれでズタズタになった布が残るでしょう。


「創造神ネーデルランダ様、彼の来世は平穏になるようにしてください」


私は手を合わせ祈った後、その場を去りました。人間さんを助けることはできます、しかし、それはこの森の自然の摂理に反すること。私が助けたらそれが崩れるかもしれない。それに、彼を助けたところで旨味はなさそうです。


きっと、偶然生き残った凄く運のいい人なのでしょう。……あれから、およそ二日が過ぎた頃だったでしょうか。


「あれ? あの男、確かに死んだはずでは」


風の知らせはあれからぱったりと途絶えていて、暇になったので、代わり映えの無い森の中を飛んでいた時、私は再び、死んだと思われていた“彼”と森で出会いました。


彼の身なりはそれはもう、清々しいほど、真っ裸で、ラビット達に喰われまくった体は多少、傷があるものの歯型や何かしらの痕はありません。しかも、その傷はまだ新しいようで、少し赤くなっています。


ふらふらとした歩き方は変わりませんが前に会った時よりはしっかりと地に足をつけていますね。確かに死亡したはずなのになぜ生きているのでしょう。森の奥にいるのも謎です。


彼を詳しく見るほど私の心にモヤモヤした違和感が溜まっていき、羽根をふるふると震わせます。


「もう……直接聞いちゃいましょう」


私は自分の好奇心に従い、彼の善悪関係なく、直接質問しようと決めて。自分にかけてある、認識阻害の術を解き、人間さんの目の前に姿を現しました。


「ごきげんよう、人間。あなた、何でこの森にいるのかしら」


「あなたのような人間が生きていける場所ではないと思うのだけど」


少々、威圧的でしょうか。しかし、私にも威厳というものがあります。どっちが優位なのかをハッキリさせておかなければ。


「……。」


返事がありません。人間さんは私の存在に気づいたのか、少し驚いた顔で立ち尽くしていますが、私の質問を無視するとは中々いい度胸をしていますね。


私、無視されるのが大嫌いなんですよ?


「目を覚まさせてあげましょうか」


私は「ふぅー」と、息を吐き脱力し、拳を握り、マナをこめます。そして、人間さんの顔面めがけて必殺のパンチをふりかざそうとした時、突然、彼の口が開きました。


「……精霊か。会いたかった。助けてぇ」


バコンッ!!


「あっ」


かすれた声でそう言った人間さんを私は勢い余って、殴り飛ばしました。飛距離は大体1.5mぐらいでしょうか。木が壁となり、彼の体を迎えました。


少し、いえ、大分やり過ぎてしまったようです。一応、気絶しているだけで大事にはなって無さそうで安心します。


えーと、そう言えば、人間さんは私に『会いたかった。助けて』と言いました。という事は、彼がこの森に来た理由は私。


いや〜、生まれてから1000年以上経ちますが、私も世に知れてきましたね。そんなくだらない事を考えながら、私は気絶した男が目を覚ますまで待ちます。


いや、面倒臭いので人間さんにマナで作った水を顔に浴びせました。


******


 僕は今、国一番の市場に来ている。市場は賑やかで熱気に満ち溢れていて、店が列をなす。近くには港があるので、いつも新鮮な魚を買え、近隣の村々から仕入れた肉や果物が売られている。


また、雑貨も豊富にあり、一日中いても飽きない場所だろう。商人たちは自分の店に客を引き込もうと元気のいい声で自分の商品をアピールしている。


「そこの坊ちゃん。今日、釣り上げられた魚はどうだい!」 「こっちは新鮮なお肉があるよ!!」


と、声が響き渡る。


僕はその声に反応して、「すまない、また今度で」と、手をひらひらさせて、断る。周囲は人族や猫族、ネズミ族など多種多様な種族が道を埋め、足音や笑い声、咳、交渉の声が混ざり合い、調律のされていないオーケストラを聞かされているようだった。


だが、僕はこのような空間は嫌いじゃない。いつもと違う、環境、人間関係、話し方、全てにおいて新鮮だ。


 そんな新鮮な場所に慣れ親しんだ、声が現れる。


「アーク様!こちら、買い物を遂行したであります!そちらはどうでしょうか」


曇りのない笑顔で、元気な声を臆面もなく張り上げる大柄な男はまさしく、僕の家、ルベルト人亜和平特別爵家の騎士だった。名はハインケル。


騎士という肩書があるけど、見た目は山賊そのものな奴で左の腰には剣を携えている。所々に露出する筋肉を見ると刃なんて通らないだろうと思わせる密度がある。


彼の両手にはお使いに頼まれていた、大量の果物が入った紙袋を抱えており、肩には巨大な魚を背負っていた。


「あぁ、こっちも今終わって、適当な店を見ていた所だ」


そういって僕はカバンに入っているプレゼントを手で確認しながら、ハインケルとの会話を終了させる。


僕と彼は絶望的に性格が合わない。彼は子供みたいに元気な性格で僕は真逆の大人でクールな性格。だからか、彼と話していると少々疲れてしまう。


僕は浅いため息をついてから、「行くぞ、屋敷に帰る」と言って移動を始める。


 この国、人亜共和国家アスレートの王都コーレルでは王城を中心に貴族街、産業街に分かれており、農民は王都を中心にして村々を築いている。


僕が住んでいる屋敷は市場から貴族街に続く一本道を進んで右に曲がった所に王城の近くに建っており、市場からはそこそこ近い。


また、貴族街と産業街の間には10m程の巨大の壁に囲まれており、各所にある門をくぐって、移動が行われている。


空を見上げると、日が暮れはじめ、辺りの人たちが自分たちの家へと帰って行く。僕も早く家に帰ってパーティーの準備を手伝わないと。


「……ッ、うぐ……」


あと少しで、貴族街への門に差し掛かりそうな所で、僕は突然、喉を冷たい何かに締め付けられるような視線を感じ、足を止める。


急いで手を首に当て、何かないかと確かめた。だが、首には特に何もなく、強いて言えば、この前出来たニキビがあった。


周りの人々は立ち止った僕を不思議そうな目を向けながら、通り過ぎて行く。けれど、確かに感じる。この肌に、背に、脳髄に突き刺さるような――視線。


それは後ろ、左、右、つまり四方八方に僕を見つめる“何か”がいる。


段々と呼吸が荒くなり、額に汗がにじむ。音がいつもより響いているように聞こえ、周りの人々の歩く速さが遅く見える。


すると、後ろにいたハインケルが焦ったように「どうなさりましたか、アーク様」と言い、僕の前に立って顔を見る。


どうやら、ハインケルから見ても僕の様子はおかしく映るようだ。僕は言葉を喉からひねり出すように彼に尋ねた。


「ハインケル、何処からか視線を感じないか」


「いえ……、私は特に何も感じないであります」


ハインケルは辺りを見回しながら、そう言った。


有り得ない、僕が気付けて彼が気付けないわけがない。僕はハインケルに頼るのを諦め、息を整える。そして、慎重に体の向きを変えながら、視線の出所を探した。


『こっち……こっちだよ』


不意な声に僕の体は即座に反応して耳で感じ取った方へと向いた。その先には、黒い光のようなものが見えた。距離で言えば、大体3mくらいだろうか。


だが、すぐに消えてしまった。見えるのは貴族街と産業街を分かつ壁だけである。


とっさに、僕は行かせまいと声を張り上げる。


「待て!!」


一緒になって辺りを見渡していたハインケルは僕の突然の大音声を聞いて、体を僕の方に向け、「あちらの方ですね」と言い、僕の目線の方を指で刺した。


僕は頷き、「確認しに行くぞ!」と、指示を出す。彼はそれを了承し、荷物を適当な通行人に預けて僕を先導するように走り出した。


…いや、荷物を他人に預けるなよ。


「壁の方まで来ましたが、特に何もありませんね」


「……さっき、黒い光のようなものが見えて、“こっちに来い”といったんだ」


ハインケルは怪訝な面持ちでこちらを見つめてくる。いや、本当なんだ。嘘なんかではない。そう、言いたかったが、ここで言い訳するのは僕の沽券にかかわる。


だから、ここはグッとこらえて、喉まで出かかった言葉を無理やり引っ込めた。


『あと少し……来て』


また、あの声だ。


しかし、辺りを再度見渡しても何も無い。ハインケルはあの声には気づいておらず、僕にだけ聞こえているようだ。


確か、いつかの授業で幻聴や幻視を引き起こす病気があると習った気がする。つまり、僕はその病気になってしまったのかもしれない。


……もう、家に帰って、少し眠ろう。


気持ちを入れ替えるために目を瞑り、空気を肺いっぱいに取り込み、ゆっくりと吐き出し、目を開ける。


――「あっ!」


僕は不意に声が出てしまった。なぜなら、目と鼻の先に黒い光が再び、現れたからだ。


運命の分かれ道だった。僕はさっきまでの考えを吹き飛ばし、とっさに黒い光を捕まえようと手を伸ばす。


『汚らしい手で触らないで下さい』


「ふぁ!?」


僕は伸ばした手を即座におろし、黒い光を見る。すると、光は段々と人型になり、目、口、鼻、髪の毛の造形が加わり、完全に“人”になった。


……人と言っても、身長は僕の手から肘ぐらいまでの大きさで、背中には薄いオレンジ色をした四つの羽が生えている。


他にも耳が尖っていて、体が黒かった。


『あなた、今、家に帰ろうなんて思っていないですよね?』


あぁ……これは、不味いことになってきた。


目の前にいる黒い者から、さっきと似た圧を感じる。声と態度から察するに、どうやら、ご立腹らしい。


早くこの場から逃げよう。


僕は足にありったけの力を入れて、カバンをしっかりと抱え、体をグリンと右に向け、貴族街に繋がる門へ走り出した。


その速さは英雄レダにも負けない速さだったと思う。


「ええっ!! アーク様!どこに行くのでありますか!」


ハインケルは慌てながら僕を追いかけてくるのが、声で分かる。


とにかく、あの黒いのから逃げなければ……説明はその後だ!


貴族街への門が見えてきた。目線は門へ、腕を大きく振り、足で地面を力強く蹴る。


ハインケルに教えてもらったことが今、活きたのだった。


……が、


「あ、あれ?あれれれ?」


体が突然、フワッとした感触で包まれ、僕の目線は一気に高くなって行き、足が空を蹴った。


……僕は空を飛んだ。


「ハインケル!! た、助けてくれぇえええ!」


僕は今、自分が出せる精一杯の声量で叫んだ。ルベルト家の長男が出してはいけない情けない声だと自覚する。


高さは門を少し越えるぐらいで、いきなり落とされたら骨折どころでは済まなそうである。


僕の股辺りが少し、湿ったのを肌で感じる……これは、たぶん……いや、きっと違うはずだ。


「アーク様!! 今、助けに行くのであります!」


そう言ってハインケルは僕の真下まで来て、両腕を勢いよく後ろに振り上げ、体を沈ませる。


彼は「ふんっ!」と、勢いのある声と共に、地面を足で蹴り、僕の体を両腕でがっちりと包んだ。


助かった。


……そう思ったのも束の間、僕の体は宙に浮いたまま、移動を始めた。


ハインケルをぶら下げながら。


「アーク様!! 私、空を飛んでいるであります!」


「そんなの見れば分かる!! 早くどうにかしろ!!」


次の投稿は5月中になると思います。だいぶ遅くなりますが、辛抱してください。なので、気に入ってくれたらブックマークよろしくお願いいたします。 

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