ちょっとした説明
台詞の掛け合いとかが苦手にすぎる
「教えてよ、どうして二人がいなかった事になってるの?……怪物のことも誰も覚えてない」
人気の無い屋上。生徒たちは五限の授業を受けている中、私は一人サボり、鞄の中に隠れた杖さんに声をかけた。
まもなく頭の中に響く声。
「そうだね。なかなか邪魔をするわけにもいかなくて黙っていたけれど、ちゃんとした説明をするべきだった。僕もそこまで法則を理解している訳じゃないのだけれど」
杖は窮屈な鞄から飛び出し現実味のない体で一つ伸びをすると語り始めた。
「君のいうとおり、二人の存在は人間社会とその記録記憶から消去された。細かい原理を省いて言うと、それは彼らが怪物になったことに起因する」
「怪物になると、忘れられる……?」
「そうだ、怪物だけじゃなく彼らに襲われたり吸収された人も同様に誰からも忘れ去られる。人によって差はあるけど長くても一日後には完全にね。……怪物や、魔女はその名の通りに人の認識の外に在る存在だ。人は古来から認識して、名をつけて物事を覚えてきた。なら、認識を拒む恐ろしき異形は覚える前に忘れ去られるのが必然だろう。怪物になるのは認識外の生物となることだと言い換えてもいい。だから、人知れずとも怪物に抗い人を救う魔法少女が必要なのさ」
「……名簿からも消えてたり、昨日の怪物を見てない人からも消えてるのは?」
「人と人を根で繋げてしまったからだ、人と物もね。この世界で認識されるものを無意識下で繋げてしまった。たとえアルミホイルでその94.6%を遮断しようと、残りの5.3%は繋がっている。だからその銀紙で防げるのは、実のところ怪物化だけなんだ」
「巻いてるアルミにそんな効果があったなんて……!?」
知らなかった。ただ着用しなければならないと本能の言うままに、そして周囲の人々に流されるようにつけていたものだがそんな当たり前の事に理由があるなんて思っても見なかった。
なにせこの街この世界にアルミホイルを被っていない人など一人もいない。疑問に思うはずも無かった。だけど考えてみればたしかに人が人となった古代では合金であるアルミは無いはずだ。寝耳に水の雑学であった。へー。
「……少し脱線したような気はするけれど。人間社会に生きながらもそうした忘れ去られる事に対して耐性を持つ存在が魔法少女だ。だから君は彼らの事を忘れる事はできない、残酷な事にね。本当はこれを言ってから魔法少女になってもらうつもりだったんだ」
「大丈夫だよ杖さん。私は、二人の事を忘れたくないし、忘れるつもりもない。だからむしろ……助かる」
「……それは、すごく辛い事だとわかっているのかい。忘れないたびに君は人の社会にとって異端の道を歩む。戦うたびに、他者との齟齬が生まれていく」
「それでも、だよ」
「……ああ、だから君には魔法少女の素質がある。この夜に蔓延る怪物達を恐れず、忘れず、ただ力を振るう為の存在にはならない。あの力は怪物と同じくらいに危険なものだから」
聞いただけで、それを想起するだけで背筋におぞけが奔るようで、彼のいう力を直感する。
昨晩、二人を散りすら残さず滅したあの光。反動もなく代償もなく感触さえもなく。ただ光に消し去るあれは存在すら否定するもののようで。それを振るう私自身もまた恐ろしかった。
「私も肌身に感じたものだ。あれは、正直怖いよ」
「怖いと思ってくれるなら越した事はない。それらを怖がりすぎない為にも、"魔法"についての話をしようか。手札は増やすものだよ」
そこから、魔法についての講義が始まった。せっかく五限をズル休みしたのにも関わらず、欠席損である。
あと昼ごはん食べてなくてお腹減った。
怪物に名前が無い理由もサラっと説明していくスタイル。
詳しい話は大分後になる予定ではあるけど話が持たなかったら説明すると思います。
今は断片的な要素で勘弁してほしく候。