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Corpse-loving Apothecary  作者: カフノ
3/3

依頼

長くなる。

メグがここに来てから1週間たった、しっかり服も買ったし、体つきも前は痩せ細り髪もボサボサで人目見ただけで奴隷ということが分かるような見た目じゃなくなった。

ここ1週間でわかったことはメグは元奴隷な割に口数が多いこと。

今では、俺の稼業である薬剤師の手伝いもしてもらっている。

薬剤師と言ってもシミったれたヤクチュウどもに薬を売ってるだけだが、とはいえ俺が販売してるのは安値で快楽性と依存性が極端に低く調合したもので、もっと強い訳を求めて薬に溺れるか、そこにとどまるかは買い手しだい。

そんな俺の仕事をメグは「小賢しい悪人そのものじゃないですか。」と罵倒してきた。

まぁ、それでも手伝ってくれてはいるが。

そんなこんなでいつものようにクスリを売ってると久しぶりの依頼が来た。

「胃が痛いんだ」そんな事をほざいたのは少し痩せ型の男。

「あっちの棚のの下にある紙持ってきて」俺は棚を指さしてメグに言う。

「高くつくぞ」

「あぁ、それでもいい、もうどうしようもないんだ。」

そんなことを言うやつは大抵そんなことは無い、すぐにメグが色々な欄がある紙を持ってきた。

「そこに、原因とか理由を書いてくれ。」

男が戸惑いながら字を書き始める。

「なんですかそれ?」メグが聞いてくる。

「今にわかる。」

「気になります。」

「今にわかる。」

「ケチ。」

そんなやり取りがあるうちに男が書き終わったカルテルを渡してくる。

俺はその紙をまじまじと見ながら少し考える。

しばらくして「金貨2枚。」男が驚く。

「はぁ?何がなんでも高すぎる金貨1枚にしてくれ。」

「金貨1枚と銀貨50枚。どうしようもないんじゃないのか?」

「こっちは他のところにあたってもいいんだぞ?」

「脅しのつもりか?俺がこれを神官に見せたら、お前はどうなるかな?」

「俺をはめたのか?」

「まさか、そっちが馬鹿みたいにツラツラ書いたんだよ。」

「クソッ、わかった、金貨1枚と銀貨50枚でいい、絶対成功させてくれよ。」

「当たり前だろ、交渉成立ださっさと帰れ、金貨1枚と銀貨50枚、しっかり準備しとけよ。」

男は苛立たしげに店を出ていった。

「何の話ですか?」

「説明してやる。今のは暗殺依頼だ。」

「店を閉めとけ、今日は準備をしなきゃならん。」

「待ってください。おじさん暗殺者なんですか?」

「あぁ、そうだよ、さっき言ったろ。それより早く店閉めてこい。」

「待ってください、なんでそんなことを今まで話してくれないんですか?」

「関係ないからだよ。」

「関係ないわけないでしょ、少なくとも一緒に住んでる人にそれ言わないとかありえます?」

「考えたらわかるだろ、どうやってこんなところでしょぼいヤク売ってるド底辺が奴隷買って養える金持ってんだよ。」

「まぁ、何かやってるんだろうとは思いましたけど。それにしても、今の今までなんの話もなしはおかしいです。」

「そうかそうか、わかった、この話はこれで終わりだ。準備もしなきゃならんしこの話をしてたら俺の頭が持たない。」

「待ってください、それ、私も連れて行ってください。」


何故かイライラしてるメグに、いきなり思ってもないことを言われて驚く俺、(はた)から見たら親子喧嘩にも見える光景だ。


「はぁ?なんで?」

「気になったからです。クスリ売りながら暗殺してる人が一体どんな、ことをして殺してるのかが気になったんです!」

「絶対やだね、ガキかばいながらできる仕事じゃないし、なんの利点もありゃしないじゃないか。」

「じゃあこのことを神官に告発します。」

「好きにしろ、どうせ神官がガキの言うことを信じるわけない。」

「どうですかね?私の言うことを信じなくても、反逆罪で追われてる人間を(かくま)っている時点で、あなたも同じ改革派の人間として処刑されます。」


口数が多くて、頭もキレて、知恵が回る、つくづく扱いにくい奴隷を持ったと再認識(さいにんしき)させられた。


「どうします、私を連れていってこのままの生きるか、告発されて死ぬか。」

「黙れ、今考えてやる。」


俺は、依頼の書いてある紙をもう一度見返す、オリグス・アッコルドここらでは名の知れたの、宗教改革派につてがあるのをいいことに、法外な利子で金を貸し払えないやつを容赦なく殺す、人を殺したいだけのド(クズ)、男は、外出から帰ってきたら妻と娘が殺されており、その近くにアッコルドの置き手紙で

全額精算済(ぜんがくせいさんず)み」と書いてあったらしい。奴の好きな手口だ、筆跡という手がかりを残しておいてそれ以外は絶対に残さず、復習を誓ったヤツを煽ることを目的としているド屑の手口だ。

ただ、やつ自体はなんの防衛手段も取り柄もないただのド屑、宗教改革派もツテがあるとはいえ死んだところで大した問題にはならないだろう、なんなら、宗教改革派のツテは俺の方が持ってる。これなら、メグをかばいながらの殺しでも行けるかもしれない。実際、関係ないと思っていたとしても報告してないのも事実、ずっと隠しておくよりここらでメグも俺らみたいに人間的な性根を腐らせた方がこっちも気が楽だ。


「まぁ、相手がかもだから連れて行ってもいいかもしれない。」

「やった、それで、いつ行くんですか?」

「今日の夜。それで、お前の準備もしてやらな行かんな。」

「準備?なんですか?暗殺服とか素顔隠しのマスクとかですか?」

「なんだ?やけに楽しみそうじゃないか。」

「実際、楽しみなんです、まだ反逆罪に問われてない時は本でしかしれなかったんですから。」


なるほど、そんな感じの年頃か。実際、俺も憧れてた時期があったし、この職を始めたのもそれが2割ぐらい理由なところもある。


「じゃあ、まずは服だな、俺の下がりがある。」

「というか、暗殺する人はどんな人なんですか?」

「ただのド屑。」

「そんなことは知ってますよ。家とか、家族構成とか。」

「それを今から貰いに行くんだ。」

「誰にですか?」

「情報屋。」

「そんな人いるんですか?一体どこに!」

皇帝(エンペラー)

「皇帝?あのいつもおじさんが大金持って行く、裏カジノやってる酒場ですか?」

「あそこは、酒場兼カジノ兼人殺し御用達の情報提供場所だ。大体の情報はあそこで手に入る。」

「手に入るって、依頼してから少し時間が経つんじゃないですか?」

「あそこには、常にこの街の動きを見張ってるど変人が居る。」

「なるほど。」

「よし、行くか。」


家を出て数分後俺たちは酒場・皇帝に着いた。早速一人の男が話しかけてきた。


「よう、金ズル野郎、今日はまた何で勝ちに来たんだ?それに、その可愛らしい女はなんだ?愛人形(ラブドール)でも買ったのか?」

「今日はやけにご機嫌だなブタ野郎、愛人形なんて買わねーよ。そんなの買ったらあいつに殺されるわ。それに今日は賭けしに来たんじゃない。」

「じゃあ、何しに来たんだ?」

「ホーギャンに用があるんだ。どこにいるか知らないか?」

「ホーギャンならバックヤードの奥にいる。相変わらず新聞書いてばっかで出てきやしない。死んでてもおかしくないかもな!」

「あいつは死なないだろ。理由は無いけど

な。」

「そうだよなぁ、それであいつは元気なのか?」

「最近会ってないな。まぁ元気なんだろうが。」

「ほーん、まぁホーギャンに会いにいくんだったら依頼なんだろ?気をつけろよ最近は神官も奴ら例の件でピリピリしてやがる。お前が死んだら賭けと酒が退屈でたまらん。」

「必要のない心配をしないで欲しいな。今回はガキ抱えてもだいじょぶな依頼だ。」

「面白い冗談か?まさかあの人形(ドール)を相棒にでもするつもりか?」

「まぁ、そんなとこだな。口出しするなよ、したら舌引っこ抜いてやる。」

「お前が言うと冗談に聞こえないな。」

「冗談じゃないからな。」

「わかってるよ。それじゃあ気をつけろよ。俺はまだまだ酒も賭けもまんぞくしてないんでな。」


男は、笑いながらその場を後にした。


「誰ですか、あの人?」

「昔からの知り合いだよ。」

「やけに上機嫌でしたね。」

「どうせ、賭けに買ったんだろ。俺らがここ出る時には大泣(おおなき)してるよ。」

「そうですか、それでホーギャンというのは?」

「この街のことを、いちばん知ってる変人野郎。」

「じゃあその人に会いに行きましょう。」

「そうだな、バックヤードに行こうか。」


俺らは、バーカウンターに行くとバーテンダーが聞いてきた。


「何にしますか?」

「地図が欲しい。監察官似合わせてくれ。」

「あぁ、なるほど、監察官なら奥の扉の先です。どうぞ、お入りください。」

「ありがと。」


俺たちが扉に入るとそこは、酒樽が積まれたり賭け事用の作れが置かれてたりする。埃っぽい部屋、その奥にまるで機械のように紙に文字を書いている男がいた。その男は誰かが部屋に入ったことに気づくと顔を上げてそのトカゲのような眼でこちらを見つめてくる。


「いやはや誰かと思えば。常連客のヤクチュウ君と、その助手ちゃんじゃないか。今日は誰の情報が欲しいんだい?」

「やぁ、ホーギャン。早速だが、オリグス・アッコルドの情報が欲しいんだ」

「あぁ、彼か、そろそろ欲しい人が来るだろうと思って、重点的に調べておいた。」

「仕事が早いな。」

「もっと褒めてくれても良いぞ。それで情報料金の件だが、彼が慎重だったがために、少し多めに受けとってもいいかな?こちらとしては、銀貨30枚ほどを提示するよ。」

「お前が手こずるなんて相当だったんだな。いいだろう、銀貨30枚払うよ。」

「すまないね、私もすっかり老いぼれだ。もう昔のように目を動かすことも出来ないし、君が奴隷を買ったことを知るのも1日ほど遅れてしまった。もうこの町全体の人の動きなんて把握する気も起こらない。けれど跡継ぎもいないから続けるしかないんだ。まぁ、まだまだ面白い限りは続けるつもりだがね。」

「あんたがやめれば、俺含めほとんどの、暗殺者が困るんだ、もう少し頑張ってくれ。」

「そうだな、ほら今日はもう早く帰りなさい。準備もせにゃならんだろ。」

「あぁ、そうさせてもらう。」


俺はホーギャンから紙を貰って、扉を開ける。ふと、振り返ってみると、ホーギャンは既に紙にはなにか描き始めていた。


家に帰る途中にメグが俺に聞いてきた。


「あの、ホーギャンさんはなんで私のことを知っていたんですか?」

「やつは、昔から虫の声が聞けた、そしてあいつは自分を信頼してくれるやつを操ることの出来る呪いを使える。それを上手く使って昔から情報収集やら備考やらで金を稼いでた。」

「おじさんと彼は何年ぐらいの付き合いなんですか?」

「もう、かれこれ30年ぐらいは付き合いがある。俺が暗殺者を始めたすぐに知り合ったから、相当長い付き合いだ。」

「そんな前からやってたんですか?昔はどんな感じだったんですか?」

「昔と今とで暗殺の手法は変わってない。まぁ、昔の方が仕事を楽しんでた。仲間も沢山いた。」

「その仲間はどこに行ったんですか?」

「処刑、裏切り、更生、仲間打ち、色々あった、始めた時から今まで接点があるやつなんて、もうほとんど居ない。」

「そうですか、それより今日の暗殺の予定についてしっかり聞いておきたいです。」


自分が聞きたいと言っから話したのになんと失礼なやつだろうか。


「家に着いたら話す。」

「わかりました。」


上を見ると、鳥籠(とりかご)の中に友人の生首がある。もう既に白骨化して死んでいるが、それでも今にも動き出しそうな生々しさがある。今と昔では随分変わった、友の大半はもう接点もなく、あるのは退屈な仕事と空虚な暇つぶしと従順の欠片(かけら)も無い少女奴隷、俺は前見た夢を思い出した、今の所忙しい要素は全くない。まぁ、夢でも何でも外れる時は必ずしもある、そんなことを思っている俺を待ち受けるのは、変革(へんかく)かそれとも、何ら変わらない退屈な日々か。



























次は短くしたい。

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