商品
友達にバレた。(というかバラした。)
「お久しぶりです、先生。」
小綺麗な男が優しい口調で挨拶をする。
「久しいなオックス、これで宗教勧誘だったら撃ち殺そうと思ってた。」
「アハハ、相変わらずですね。」
オックス、5年ほど前から付き合いがある奴隷商で客の要望に合わせてどんな奴でも誘拐してくる悪人のクソッタレ。
「モルモットはまだ頼んでなかったはずだ、何の用だ?」
「前にお話した在庫処分の件で伺いました。」
「なるほど、まぁ、上がれここじゃ誰が聞いてるかわからん。」
「ではお言葉に甘えて、ほら行くぞ」
ぼろ切れを着た少女に少し強い口調で言ったあと彼も家に上がる。
「とりあえずそこの椅子に座れ、お嬢さんの椅子も用意するから。」
「お構いなく、奴隷に椅子なんて用意しなくていいですよ。」
「そうか、ところでそれが例の商品?」
「はい、トリチア家の生き残りです。」
トリチア家、今でこそルリマス教の下に付き政治的実権を明け渡した朝廷の4人の創設者の1人、『バレット家』『トリチア家』『グレース家』『マチルダ家』中でもトリチア家初代当主のトリチア・レーシィは全ての魔法の始まりである原初魔法を開発した偉人であり、数十世紀による朝廷の支配に大きく貢献した人物、そんなトリチア家は原初魔法の原理や応用法を高額で売買した莫大な資金を最近まで受け継いでいたが、5年前、宗教改革派への資金援助の疑いを持たれルリマス教によって一族皆殺しに会い生き残ったのも本の数人と言う噂がたっていたが、そのひとりがこの場にいるとは驚きだ。
「それで、その数少ないトリチア家の生き残りを高値で売りつけようと?」
「いえ、こいつは売り物としての価値は他とあまり変わりません。」
「何でだ?朝廷の創設者一族なんてどんな値段でも買う奴らがいるんじゃないのか?」
「こいつは、若すぎる、若い女は買う層が限られますし、そうゆう買い手は出生よりも体つきなどを重視して買うので。」
「それならますます謎なんだが?貴族なんだからいい体つきをしているんじゃないか?」
「あぁ、まだ言ってませんでしたか、こいつ体に大きな傷跡がありまして、神官から逃げた時のものなんですけどその傷のせいで体が台無しで。」
「なるほど、どこにも売れないから仕方なく俺を訪ねたと。」
「そう言うことです。」
状況は理解した、どうやら、オックスも切羽詰まっているらしい。
「1つ、質問だ俺が買わなかったらそこの女はどうなる」
「殺します、買い手のない商品をいつまでも生かしておく意味もないですので。」
少女の顔があからさまに暗くなる。
「そいつ口は?」
「聞けます。」
「字は?」
「書けます。」
「計算は?」
「それはちょっと厳しいですね、1年前に誘拐した時に確かめたんですが、できてなくて、それから何も教えてないので。」
「あいつ何歳だ?まともな教育も受けてないのか?」
「10歳ですが、神官から逃げて生活していたみたいなので習う時間がなかったのかと。」
30秒ほど静寂が場を支配する
「そいつを買う、値段は?」
「いいんですか?」
「いいんだよ、値段は?」
「銀貨50枚でどうでしょう?」
「安くないか?」
「言ったでしょう、買い手が居ないんです、元が取れれば満足ですよ。」
「わかった。」
俺は金庫から取ってきた銀貨50枚の入った袋をオックスに渡す。
「はい、確かに銀貨50枚いただきました。」
「こちらの紙にサインを。」
紙にはこの奴隷の返品不可や注意事項についてが書いてあるが見るのがめんどくさいのでそのままサインを書く。
「はい、ありがとうございます、これでこいつは先生のものです、好きに使ってください、モルモットにしてもいいですし、体が好みなら使っても構いません。」
「俺は、年下の体に興味は無い。」
「これは失礼、とりあえず好きに使ってくださいね、じゃあ僕はこれで失礼します、またモルモットの調達依頼の時は呼んでください。」
オックスはそんなことを言ったあとそそくさと帰っていった。部屋の中には俺とぼろ切れを着た少女が2人、少女は表情を変えずその場に突っ立っている。
「嬢さん名前は?」
「マーガレット...」
「マーガレット、よし俺はこれからお前のことをメグでよぶ。」
「メグ、ですか?」
「そうだよ、メグ、よっぽど嫌なら変えるが?」
「嫌じゃないです」
「ヨシきた、じゃあボロきれじゃなくて服を着た方がいいな、男物しかないけどいいか?」
「はい、着れるものなら。」
メグの身長は120cmほど、それに比べて俺は180cmある、着れる服があるだろうか、そんなことを考えているうちに、俺は今朝見た夢のことをすっかり忘れていた。
メグのイラストを友達に書いてもらおうと思った。