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技術完成

「うーん……別に高速って程じゃないかも」


 私はガッカリしながら技術要素【高速抜刀】を技術編成の候補から外した。

 パフォーマンスを上昇させれば使い物になるのかもしれないが現段階では普通に自力で抜刀する方が速い上に融通が利く。


 勘違いしていたがどうやら技能【抜刀】は抜刀術の技能ではなく刀を抜くだけの技能のようだった。そのまま切りつけることを考慮されていないことが技能から得られる技術要素から感じ取れる。


 嘆息しながら珠石をシリンダーから取り外してそこのない穴に放り込んだ。


 これでもう7度目。

 どの技術も残念ながら今のパフォーマンスでは私にとって使い物にならない程度の性能しか発揮できない。抜刀も納刀も自分でやった方が速いし【身躱し】もむしろ躱しづらくなりそうだ。

 【対人格闘の間合い】は発動すると自分と相手の拳や蹴りの範囲が可視化される技術だったがこれも使用しなくても見ればわかる。


 ただ唯一【ダッシュ】の技術要素は魔力消費も比較的少なく、普通に走るよりも早くなるので単体で編成して移動のための技術として使うのが有効かもしれない。

 もし次回以降余裕があったら試してみたい。


 とりあえず今回は目標である戦闘に重きを置いて技術を編成して思い通りの運用ができるか試したい。一度しか編成できないわけではないしこれからずっと使い続ける技能を作る訳ではないから次につながる編成をする方針だ。


 攻撃に直接関係する技術は3つ。

 右から左に向けて斬撃系の武器を振って攻撃する【スラッシュ】

 左から右に向けて斬撃系の武器を振って攻撃する【バックスラッシュ】

 突属性の攻撃ができる武器で突きを行う【スラスト】


 これらをうまく使わなければならない。


 編成の石板を前に人差し指を顎に当てながら思案する。軽く3枠とも概形を作ってから細かく調整していくようにしよう。

 絵を描くのと一緒だ。何事も最初から完璧を求めてはいけない。


 まず1つ目に三等光輝開放で使える消費の少ない技術。

 積極的にダメージを稼ぐことをせず、相手をけん制できる程度のダメージを与えられて隙の少ないもの。細かく発動出来てルミエールの取得を積極的に狙えるものが良い。


 技術要素一覧から無難に【スラッシュ】を選択し、編成の石板へ置かれている技術シリンダーへ嵌めた。

 発動条件指定から三等光輝開放時以上の光輝開放発動時を選択することでシリンダーを増大させる。これで【スラッシュ】の元のダメージそのままに消費魔力を抑えられる。


 2つ目は敵が隙を見せた時に汎用的にダメージを与えるための技術がいい。

 ここで付加要素【ルミエール】を使うつもりはないし、一つしか持っていないので一等光輝開放の発動条件指定にする意味はない。だから発動条件指定は二等光輝開放以上で十分だ。


 選択するとシリンダーがもう一つ光に包まれながら出現し、元から置いてあったシリンダーは大きくなった。


 増えたシリンダーを見つめながらうんうんと呻吟しながら思索に耽る。


 ここまではいいが2つ目はどうしようか。


 今後のことを考えて技術編成のどれか一つだけは技術を組み合わせてみたい。技術を発動しても途中でキャンセルできるけれど体を拘束される時間が伸びるから慣れておきたいというのもある。


 【バックスラッシュ】と【スラッシュ】の珠石をシリンダーにはめ込んで、【バックスラッシュ】の方のシリンダーを左側に置いてその隣に【スラッシュ】をはめ込んだシリンダーを置く。

 こうすることで【バックスラッシュ】を発動した後に【スラッシュ】を発動できるようになる。抜刀してそのまま技術を使うのにちょうどいい構成だと思う。


 抜刀術とつながって思いのほか良い出来になりそうでワクワクしていると妙案が思い浮かんだ。

 星喰みの鞘の効果で切りつけて魔石化させた後に付加要素【星喰み】の効果で攻撃できればより効率良くダメージを与えることが出来ないだろうか。


 ゲーム初心者の割にこんな連携が思いつくなんて私ってゲームの才能もあるのかもしれない。

 私はどこか有頂天になって興が乗り始めた。


 上機嫌で付加要素の一覧から【星喰み】の珠石を取り出して【スラッシュ】の方のシリンダーに入れると、からんからんとグラス同士を打ち合わせるような音がする。


「んふふ」


 腰をかがめて技術シリンダーに視線を合わせると、透明のガラスの中で付加の珠石がキラキラと輝いていた。


 技術編成って結構楽しいかもしれない。

 試行錯誤しながらアイデアを形にしてそれが上手く形にできた時の達成感たるやクセになってしまう程だ。これから技術要素や付加要素をもっと手にしていけばさらに選択肢は広がっていくことを想像するだけでさらにワクワクしてくる。


 ゲームをやっている人達はいつもこんな高揚感を抱いていたんだろうか。ハマってしまうのも頷けるというものだ。


 3つ目はここぞというときに使う技術にしていきたい。連発は出来ないが大ダメージを狙っていける技術がコンセプトだ。


 付加要素【ルミエール】が残っているのでこれを活用するために発動条件指定で一等光輝開放時に設定する。

 2つ目の編成と同じようにシリンダーが一つ増えて元々あったシリンダーが大きくなった。


 折角なので他では使っていない【スラスト】の技術要素を使おうと思う。選択して玉石を受け取るとシリンダーにはめ込んだ。


……もう一つのシリンダーも使った方が良いかな。


 折角シリンダーが一つ増えているのに使用しないのは勿体ないが、そうは言っても付加要素の数に限りがある。うまくやれば大きなダメージを狙える付加要素【ルミエール】が反映される技術要素に魔力をつぎ込みたいので他の技術要素を増やして魔力を裂きたくない。


 私は余ったもう一方のシリンダーに容量の半分ほどの魔力を満たして【スラスト】の技術要素をはめ込んだシリンダーの下に置いた。こうすれば【スラスト】の魔力量を増やすことが出来る。

 すると【スラスト】の技術要素をはめ込んだシリンダーの内部に満たされている魔力が4分の1ほど上昇した。


 想像の埒外にある挙動に困惑しながらルカに視線を向けるとニコニコしながらウィンドウを見せて来た。

_______________

〇技術要素が登録されてない技術シリンダーについて

技術要素が嵌め込まれていない技術シリンダーは単体で効果を発揮しません。技術要素のはめ込まれている技術シリンダーの下のマスに置いた場合にのみ効果を発揮します。

この状態にあると技術登録されていない技術シリンダーは登録されている技術シリンダーと魔力的に連携します。


技術要素が登録されていない技術シリンダーに魔力を注いだり付加要素を加えたりすると連携している技術シリンダーに影響を与えることが出来ます。この時、魔力量はそのまま加算されますが魔力消費は半分になります。


ただし発動条件指定などで増大している技術シリンダーは技術要素を登録していないと効果を発揮しないことに注意してください。

_______________


「うーんと……つまり連携して補助の方に魔力を注いでおくとその分メインの方に魔力量は加算される。そして加算した魔力量の半分が魔力消費量に加算されるってこと?」


 どうやら私の考えは正しかったようでルカはグっと親指を立てた。


 連携しておくと魔力量はそのまま増えてダメージが多くなるのに魔力消費量が減るのは効率が良くて結構よさそうだ。


 けれどこのままだと誰も技術要素同士で編成しなくなる気がするので何かメリットがあるのではないだろうか。

 それに技術シリンダーが魔力総量を表しているのに各々の技術シリンダーに魔力を込めてしまえば総量を超えてしまう気がする。


「技術シリンダーが複数ある時の魔力総量ってどんな処理をされるの?」

_______________

〇技術シリンダーが複数ある場合

技術要素が登録された技術シリンダーが複数ある場合、それぞれの容量の総計が自身の魔力の総計として扱われます。ただし与えるダメージはそれぞれの技術シリンダー内に存在する魔力に応じて計算されます。

_______________

「じゃあ技術要素を登録した技術要素が多ければ多いほど魔力消費の効率よくダメージを与えられるんだ」


 一瞬で効率良くダメージを稼ぐか、長い目で見て効率良くダメージを稼ぐか状況に応じて使いどころが変化してきそうだ。

 存在格が上昇してシリンダーが増えたら色々な用途に合わせて作っていきたい。


 とりあえず今回作りたかった技術の概形は出来た。

 付加要素も余しておくと勿体ないので振り分けておこう。ここから少しずつ魔力と与えるダメージの兼ね合いを見ながら形を整えていく。


 始めたばかりなので選択肢もそんなに無いし決めることはそんなに多くない。


 望んだ状況で適切な効果を発揮できるように魔力量を調整していった。


「できたぁ! ねぇルカ、できたよ!」


_______________

技術【緑の一閃】

『魔力量』:20%

(シリンダー増大)


『技術要素』:

【スラッシュ】


『付加要素』:

〇【スラッシュ】

――【木属性(与えたダメージに応じて生命力を回復する。)】:1


『発動条件』:

・三等光輝開放以上の光輝開放発動時

・斬撃属性武器を所持

_______________

_______________

技術【星喰(ほしは)み】

『魔力量』:20%+20%

1(技術シリンダー増大)

2(補正無し)

全体(技術要素登録シリンダー数2)


『技術要素』:

【バックスラッシュ】→【スラッシュ】


『付加要素』:

〇2番目【スラッシュ】

――【星喰(ほしは)み】:1

『発動条件』:

・二等光輝開放以上の光輝開放発動時

・斬撃属性武器を所持

_______________

_______________

技術【星穿(うが)ち】

『魔力量』:200%

1(シリンダー増大)(補助シリンダー)


『技術要素』:

【スラスト】


『付加要素』:

〇【スラスト】

――【ルミエール】:1


『発動条件』:

・一等光輝開放以上の光輝開放発動時

・突属性攻撃を行える武器を所持

_______________


 ルカが小さな手を打ち合わせてぱちぱちと拍手すると私は言いようもない達成感に包まれながら高揚した。


 想定していた通りに編成出来ていて我ながらいい感じだと思う。最初にしてはとても良くできているのではないだろうか。


 三等光輝開放で使える細かい技術を想定して作った技術【緑の一閃】は発動のための魔力が少なく、余っていた付加要素【木属性】を組み込んだおかげでダメージに応じて生命力を回復できるようになった。

 生命力を回復されるのは相手にしていても嫌だろうしかなり牽制に効果的な技術になったと思う。


 一等光輝開放で汎用的に使える技術として作った技術【星喰み】は持っている付加要素との兼ね合いもかねて二等光輝開放が発動条件になった。

 消費魔力に対してダメージ効率も良いし所持している星喰みの鞘との相性もいい。抜刀と同時に使用して切りつけることで魔石化させて付加要素の【星喰み】の効果と合わせていいダメージを狙えるはずだ。


 そして技術【星穿ち】は一等光輝開放でここぞというときにダメージを与える技術だ。

 技術シリンダーを一つ補助にして一つの技術要素にたくさん魔力を込めることでダメージを伸ばしている。消費魔力はシリンダー増大の補正と補助シリンダーの補正を合わせて考えても私の魔力総量ギリギリだ。

 その分魔力量も大変高くなっていて大きなダメージを見込める。


 一先ずこれだけできればある程度の戦闘はこなすことが出来るだろう。通常攻撃は問題ないが徐々に技術にも慣れていくことで目標にグッと近づいた。

 目標に活路を見出して自信がなかった心に余裕が生まれてくる。


 自然と頬が持ち上げられていることに気が付いて右手でそっと抑えた。


「技術の名前ちょっと格好つけすぎたかな……うん。まぁ、いいか」


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