技術編成(上)
≪技能『抜刀』より技術要素【抜刀】を取得しました。
・・・
技能『抜刀』が習得度10に到達。
――技術要素【高速抜刀】を取得しました。≫
≪技能『斬撃』より技術要素【スラッシュ】を取得しました。
・・・
技能『斬撃』が習得度10に到達。
――技術要素【バックスラッシュ】を取得しました。≫
≪技能『納刀』より技術要素【納刀】を取得しました。
・・・
技能『納刀』が習得度10に到達。
――技術要素【高速納刀】を取得しました。≫
≪技能『魔力操作』が習得度10に到達。
――単一要素【魔力循環】を取得しました。
――単一要素【魔力圧縮】を取得しました。≫
≪技能『突き』より技術要素【スラスト】を取得しました。≫
≪技能『走行』より技術要素【ダッシュ】を取得しました。≫
≪技能『回避』より技術要素【身躱し】を取得しました。≫
≪技能『対人格闘』より技術要素【対人格闘の間合い】を取得しました。≫
≪技能『受け身』より単一技術【衝撃緩和】を取得しました。≫
≪技能『目星』より単一技術【注視】を取得しました。≫
≪技能『植物知識』より単一技術【植物観察】を取得しました。≫
≪技能『食事』より単一技術【即時摂食】を取得しました。≫
≪技能『人物知識』より単一技術【人物観察】を取得しました。≫
≪技能『モンスター知識』より単一技術【モンスター観察】を取得しました。≫
≪技能『フリンルルディ地理知識』より単一技術【都市観察】を取得しました。≫
≪定着効果を取得する際に技術要素や付加要素を得られる可能性が解放されました。≫
光の奔流に飲み込まれて白んだ視界の中で大量のメッセージが表示された。
次々に表示されていく文字に目を回しながら必死に読み取っていく。どうやら技の石碑に触れることで所持技能に応じて技術や技術要素を得られるようだ。
やがて文字が表示されなくなると白い視界は瞬く間に淡い光を放つ石碑でいっぱいになった。
目を白黒させていると動揺さめやらぬうちに石碑から浮き出るようにウィンドウが表示される。
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〇技術編成
――複合技術枠を選択
【】
【】
【】
〇起動モーション設定
――所持技術の中から選択
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黙々と書かれている文字を読み進めると、技術編成と起動モーションの設定画面のようだった。
現段階で見る限り技術編成を行うことが出来る枠は3つ。キアラさんは3つ以上の技術を使用していたと思うのでこれからもっと増えていくのだと思う。一番有力なのは存在格だろうか。
なるべく急いでやらなければ。
勿論良い技術を編成することはとても大事だが私の脳裏に浮かんだのはアカネの配信のことだった。
視聴者の方たちは配信を切ることを快く受け入れて下さっていたけれど本心ではもう少し見ていたかったに違いない。
鈍いことも多いアカネだけれど面白さを求める視聴者の気持ちには絶対に気が付くだろう。
きっとアカネは技術編成や起動モーション設定をそこそこで済ませてすぐに終わらせるという予感があった。
あまり待たせるわけにはいかないし、折角楽しそうにやっているのに水を差すわけにはいかない。
まずは技術編成の方から見ていくことにして手早くメニューを操作し技術編成の項目に触れる。
すると地鳴りのようなものが辺り一帯に響き始めた。
「え? な、なに?」
何が起こるか分からない恐怖に襲われながらも周囲を見渡して思わず数歩距離を取る。
冷静さを取り窓しながらも耳を澄ますと音の出所が次第に分かってきた。
地面からじゃない。石碑から鳴り響いている。
警戒してじっと観察していると石碑が緩慢な動きで凹凸を回転させ始めた。
小学校の課外授業で体験した石臼を挽くときと同じような、それでいてその時よりも激しい音がする。閉じられた空間にいるかのように音が反響してゴリゴリと石同士がすり合わさる音が響き渡った。
「石碑が……! ルカ何が起こってるの!?」
傍でふわふわ浮いているルカに問いかけると、口元を抑えながらくつくつと笑っている。どこか諧謔味を感じてようやくからかわれているのだと理解した。
私は危険が無いと理解してホッと息をつきながらも頬を膨らませて成り行きを見守る。
すぐに一枚の石板がちょうど私のお腹のあたりの高さに来るように石碑から張り出してきた。
石板は横に長い長方形で、オセロや将棋をはじめとしたボードゲームのようなマス目が描かれている。下部にいくつかの丸い窪みがあって、左上には何故かそこの見えない虚のような穴があいていた。
傍らには下部に窪みのある土台がついているメスシリンダーのようなものが1本置かれている。
首を傾げながら石板とメスシリンダーのようなものを眺めていると目の前にウィンドウが出現した。
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〇所持技術要素一覧
・【抜刀】
・【高速抜刀】
・【スラッシュ】
・【バックスラッシュ】
・【納刀】
・【高速納刀】
・【スラスト】
・【ダッシュ】
・【身躱し】
・【対人格闘の間合い】
〇付加要素一覧
・木属性(1)
・ルミエール(1)
・星喰み(1)
・クールタイム軽減(1)
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〇発動条件指定
・一等光輝開放発動時
――ルミエール消費条件で発動する技術の消費ルミエールを軽減。
・二等光輝開放以上の光輝開放発動時
――技術シリンダーを1つ増やす。
・三等光輝開放時以上の光輝開放発動時
――技術シリンダーのうちの1つを増大。
・特定の所持性質発動時
――性質によって変動。
・その他条件下
〇特定の場所のみ発動
〇特定の魔法陣が組み込まれた魔術を使用中のみ発動
・技術要素に付随した条件を一部緩和
――編成の石板のマス目を縮小。
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表示されたウィンドウを流し読みした。
書かれている内容は技術編成に必要な内容であることは疑いようもないけれどここからどのように進めていけばいいのか分からない。
胸の前で腕を組みながら頬に手を当ててとりあえず触れてみて学習していこうかと思索に耽っていると小さな愛らしい視線に気が付いた。
視線の持ち主の様子を窺うと紫色の瞳を潤ませながら頼られることを待ち望むようにうずうずしている。
私は思わず表情を緩ませた。
そうだった。分からないことがあるならこの子に聞けばいい。
「ルカ、技術編成のやり方を教えて」
パァっと花が綻ぶような喜色満面の笑みを浮かべると、『先に技術の説明をしますか?』と書かれたウィンドウを見せてくる。
私は笑顔で首肯しながら了承した。
ルカはいそいそとウィンドウを取り出す。
最早お馴染みとなったいつも通りのウィンドウを覗き込み、箇条書きで書かれた文字を目で追った。
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~技術とは~
技術とは技能の要素を、魔力を通して扱う術です。
技術は基本的に自動発動し、対応した技能のパフォーマンスに依存して精度が変化します。
また与えるダメージや生産物の品質は通常と同様に対応技能のパフォーマンスに影響を受け、消費した魔力に依存します。
〇技術には技術要素を技術編成で組み合わせて作成する複合技術と単体で効果を発揮する単一技術とで区別されます。
単一技術は技術編成を行うことが出来ません。
〇技術の発動には登録されている技術名を発声することで発動する方法と起動モーションで発動する方法があります。
起動モーションとは行動をあらかじめ設定し、発声する代わりに設定通りの行動をとることで技術を発動するシステムを指します。
単一技術は技能取得時に付随するものもあり、起動モーションが固定されている技術も存在します。
~技術編成とは~
技能を成長させることで得た技術要素や付加要素を組み合わせて技術を作成することを指します。
技術編成でどのような技術を生み出すかは十人十色です。
魔力消費が大きい代わりに絶大な効果を発揮する技術を作りだすか。効果が少ない代わりに魔力消費が少なく連発しやすい技術を作り出すか。
自分のプレイスタイルに合った技術を作成しましょう。
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私は父から与えられた目標を達成するために集中して説明を読み解いていく。
やはり読めば読むほど技術は重要そうだと再確認した。
ディオタールでの生活だけではない。
戦闘にも直接関係してくるだろう一文をなぞる。
「『与えるダメージや生産物の品質は通常と同様に対応技能のパフォーマンスに影響を受け、消費した魔力に依存します』ね……つまり」
私が自分の力で行った攻撃よりも魔力を消費する分、技術を発動して攻撃を与えた方がより効率よくダメージを与えられるのだろう。
技術自体の説明は今まで行動してきた中で得た知識と照らし合わせながら読み取っていくと分かりやすい。キアラさんが戦闘の時に使っていた技術は技術編成で作成された複合技術で間違いないと思う。
そして単一技術という言葉は聞いた覚えはないけれど技能取得に付随し起動モーションが固定されるという説明から、私が今まで行っていた魔力操作や魔力を込めて本の知識を得る方法は単一技術にあたることがなんとなく推し量れる。
技術を扱ったことが無いと思っていたが意識せず使っていたのかもしれない。
キアラさんから何も言われなかったのはそれほど生活に紐づけられていて意識することが少ないのだと思う。
「ありがとう、ルカ。もう大丈夫」
説明にある程度納得したことを告げるとルカは一つ頷いて、『ゲームシステムの説明はヘルプから確認することが出来ます。』と表示されたウィンドウを見せてくる。
私は了解の意を示すようにこくりと頷いてさっそく技術編成に取り掛かるために説明を促した。
「じゃあ、編成の仕方も教えてくれる?」
ルカは紫色の目を細めて笑うと、ふよふよと羽根を羽ばたかせることなく浮遊して私に近づく。
そして私の右手を取って石碑から張り出した石板の前に導いた。
困惑しながらもルカを見つめるとウィンドウが表示される。
『技術要素一覧に書かれた任意の技術要素を選択しましょう』
「うん、分かった」
ルカの言葉に従って再度ウィンドウに目を移し、自分が所持している技術要素を確認した。