性質取得と初期位置説明
最初の方は「ふむふむ、なるほど」と一所懸命に読んでいた私だったが、スクロールバーが異常に小さいことに気が付いて、
「いや、多いですねこれ」
思わず独り言をつぶやいた。
あまりゆっくりじっくり考えながら選んでいる時間はなさそうな気がする。
次に『性格性質』を選択すると『才能性質』よりは少ないがかなり多くの量の性質が表示される。なんだか嫌な予感がして『通常性質』に触れて表示してみた。
「いや、多いですねコレ!?」
TENKYUがサービス開始してからTCoLが配信開始するまで一か月もの間隔を空けていた理由が分かった気がする。すぐに読破して吟味できる量ではない。
一か月前から取得する性質を吟味している人たちも確実にたくさんいるだろう。数時間の遅れではなく一か月の遅れと考えた方が良いかもしれない。
焦燥感を感じてこれもランダムにしようと決める。
どうせ見ている時間がないのならランダムと大差ない。ならばよりメリットのある可能性のある特異性質取得の方が良いだろう。
無難なものをぱぱっと選んでしまうという考えもあるが、運命力を上げてイベントを求めた方が良いという直感を信じた。
「『ランダム』を選択して【輪廻の意思】を取得します」
『分かったよ。君はTCoLの世界で何を求める?』
迷うまでもない。
「闘争を」
『分かった』
するとふわふわと優しい光が空から舞い落ちてきた。思わずそれに手を伸ばして触れようとする。しかし、淡い光はひらりと手を躱すようにすり抜けてしまった。
私は少しムキになって捕まえてやろうと息巻いていると淡い光は急に加速して胸の中に吸い込まれていった。
『性質の取得が完了した』
今の光がそうなのだろうかと考えているとルカが「『性質閲覧』って言うと表示されるよ!」と書かれたウィンドウを出してきた。ありがとうと告げて頭を撫でるとくすぐったそうにしながら笑っていた。
癒しを得ながらも気になる性質を表示してみる。
「性質閲覧」
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『才能性質』
【英雄体質】
〇全身の筋力値を上方補正する。
〇筋力値の能力成長値がとても上がる。
〇満腹度が減りやすくなる。
【召喚魔術の才】
あなたには召喚魔術の才能がある。
〇該当技能の技能タスクの条件が緩和される。
〇該当技能のポテンシャルが上がる。
〇技能【基礎召喚魔術】を習得度5で得る。
『性格性質』
【負けず嫌い】
あなたはとても負けず嫌いだ。
〇戦闘や競争で負けそうになった時に自身の光輝力を上方補正し、光輝力に応じてルミエールを得る。
〇戦闘や競争で敗北した時に調子が下がる。どれほど差をつけて敗北したかで度合いが変わる。
〇最終成績が敗北の相手と一定期間再戦をしないときに調子が低下する。相手と戦えない場合はこの効果は発動しない。
〇戦闘や競争で敗北した時に一定期間の間以下の効果を得る。
・精神力を消費することで技能タスクをこなすときに効率が良くなる。
・調子が不調や絶不調の時に与えるパフォーマンスへの影響を無視する。
〇最終成績が敗北の相手と再度戦闘や競争をするときに以下の効果を得る。
・戦闘の間だけ調子が一段階上昇して低下しないようになる。
・相手と共通して所持している技能系統のパフォーマンスが上昇し、競り合いに強くなる。
・戦闘で一度敗北した相手に勝利するときに、得るルミエールの量が通常より多くなる。
『通常性質』
【ちからづく】
〇行動を起こすときに対応した運動系該当技能のパフォーマンスを一時的に最大55、最低5減らして発動する。減らしたパフォーマンス量に応じて筋力値を上昇させる。この時上昇させた筋力値は体力に影響を与えない。
〇魔術や技術を発動する際に消費する魔力量を多くして効果を上昇させることができる。
〇この性質を使用している間、対象となっている技能は表層記憶域に浮上せず、技能タスクが進行しない。
【不退転の覚悟】
〇任意で発動できる。イベントや競争で不利な状況に置かれている間だけ調子が一段階上昇し、該当技能のパフォーマンスが上昇させることができる。この状態の時に途中で逃走やリタイアなどで中断すると調子が絶不調になり、下向きになる。
〇戦闘を行っている際に生命力が一定以下になったとき光輝力を消費して発動する。
・戦闘対象との戦力差に応じて基礎能力を上方補正する。この性質によって上昇した基礎能力は生命力や精神力に影響を及ぼさない。
・生命力や光輝力の減少による体力の回復速度減少を無視する。この効果を発動する度に光輝力にダメージを受ける。
・この効果を発動している間、あるいは生命力が一定以下のときにこの性質を媒介にして光輝開放を行うと効果が増える。
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表示してすぐに目に入ったのはライゼン団長も持っていた【英雄体質】だった。お揃いであることにほっこりとして嬉しくなる。
この性質で光輝開放していた時に地面を割るような膂力になっていた。光輝開放の影響かと思っていたが説明を読む限りこの性質の影響も大きそうだ。
満腹度の減りが速くなることには注意しないといけないけれど。なかなか強そうな性質を得ることができたと思う。
二個目は【召喚魔術の才】だ。
召喚魔術とは何ができるのだろう。使い魔とかを召喚するイメージだがあまり見当はつかない。いずれにしてもあまり【英雄体質】と相性が良くなさそうだ。
性格性質は【負けず嫌い】
戦闘で負けると効果を発揮する性質のようだ。どうせ死んでしまうと終わりなのでそこまで役に立たない気がする。
通常性質の一個目は【ちからづく】
筋力が上昇する性質ということで一見使えるような気がしてしまうのだが技能タスクが進行しないというリスクがあるようであまり頼りすぎると技能が育たずに失敗してしまうことがあるんじゃないだろうかと思ってしまう。頼りすぎないようにと心に刻んだ。
最後の性質が【不退転の覚悟】
すべての効果が生命力一定以下の条件が付いている。私の性質上なるべく安全に立ち回るべきなので能動的に発動させる機会はこないのではないだろうか。
なんだか総じてピーキーな印象を受ける性質ばかりがそろった。力押しの性質の中で召喚魔術の才もなんだか浮いている。
……まぁ、大丈夫でしょう。
後の対応を未来の私へ押し付けて目を逸らした。
なんだかひぃひぃ言いながら今の私を恨む未来の私の光景が目に浮かんだがきっと気のせいだろう。
杳として知れない未来への思考をポイと捨て去って今のことを考えることにした。
「では初期地点の設定をお願いします」
『じゃあ、表示するね』
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~初期地点の説明~
あなたたちはディオタールという大陸に生まれます。
ディオタール大陸はリアフィス統一国家という国が治めていて大きな領地6つと小さな領地6つで成り立っています。
開始するにあたって大きな6つの領地のいずれかが初期地点です。この6つの領地は大環状道という1つの道路でつながっています。
どの領地を選んでもできることにさほど違いはありません。必要最低限の施設はどの領地にも必ず存在します。お好きなイメージの都市を選んでください。
『宗教の領 ベルリーズ』
国教となっているケルアー教の総本山。神にもっとも近しい領地。
ディオタール大陸の北部に位置している。南東にランドル、西部にアレジオンとつながっている。
ベルリーズには大きな劇場が存在することで有名。
『学術の領 ランドル』
リアフィス統一帝国にある全ての知識が集まるといわれる学術の都市。
ディオタール大陸の北東部に位置している。北西にベルリーズ、南にブラヴリュートとつながっている。
ランドルには大きな図書館が存在することで有名。
『戦いの領 ブラヴリュート』
戦乱が今でも続く戦いの領地。
ディオタール大陸の南東部に位置している。北にランドル、南西にバルコメイルとつながっている。
ブラヴリュートには大闘技場が存在することで有名。
『魔術の領 バルコメイル』
魔術発祥の地と言われ、今でも最先端にある魔術の領地。
ディオタール大陸の南部に位置している。北東にブラヴリュート、北西にフォルジ―ルとつながっている。
バルコメイルには魔術大学が存在することで有名。
『職人の領 フォルジール』
技術を競い合い、認め合う職人の領地。
ディオタール大陸の西部に位置している。南東にバルコメイル、北にアレジオンとつながっている。
フォルジ―ルには大きな開発研究所が存在することで有名。
『冒険の領 アレジオン』
未開地がすぐそばにあり、夢あふれる冒険の領地。
ディオタール大陸の北西部に位置している。南部にフォルジ―ル、北東部にベルリーズとつながっている。
アレジオンにはモンスターや植物の研究所が存在することで有名。
『ランダム』
下記の特異性質を取得し性質をランダムで選出する。
特異性質【輪廻の導き】
〇以下の①~④のいずれかを選択して初期地点をランダムに選出する。この性質は一度取得すると外せない。
①初期地点が大きな6つの基本領地のいずれかになる。
②初期地点が大きな6つの基本領地のいずれかの地方都市になる。特別なイベントが発生する。
③初期地点が大きな6つの基本領地のいずれかにあるダンジョンになる。特別なイベントが発生する。
④初期地点が小さな6つの領地のいずれかにあるダンジョンになる。特別なイベントが発生する。
〇上記の選んだ番号が大きいほど運命力が強くなる。運命力が強くなるほど特別なイベントが発生するようになる。
〇この性質は定着効果が存在しない。
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戦いと書いてあることからブラヴリュートというのが気になる。戦乱が今でも続いているらしいので実戦を経験できるのかもしれない。しかし戦争というのはチーム戦だ。
大会がチーム戦で行われるかいうとそのようなことはないと思う。父の性格を考えるともしもチーム戦だったなら仲間を集めてチームを組んで優勝を目指せという言い方をする。チーム戦の技術を磨く必要はないだろうし、別に戦いの技術を磨くことは戦いの領でなくてもできる。
他の項目もここまでランダムで選んで来たのだから全部ランダムで選んでしまおう。
どこからスタートでも地理的につながっているようだから移動すればいいしそんなに変わらない気がする。何よりも特異性質の2以上を選ぶと特別なイベントが発生するらしい。今までと違って可能性の示唆ではなく完全に言い切っていることににかなり心を惹かれている。
「【輪廻の導き】の④にします」
『わかったよ』
そういう言うとミラーボールさんが瞬いた。
しばらく様子を見ても他に何も起こらない。また今回も他の項目を選んだ時と同じように何かあるかと考えて身構えたが、特にこれと言って特殊な演出はないらしい。
なんだか肩透かしを食らって警戒心の行き場がなくなった。
『選択内容はすべてこれでいいかな?』
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〇キャラネーム 『キョウ』
〇プレイヤーネーム『レイオブライト』
〇種族 『ケラス』(性質の効果により変更できません)
〇属性 『木』(性質の効果により変更できません)
〇性質 (性質の効果により変更できません)
【英雄体質】【召喚魔術の才】【負けず嫌い】【ちからづく】【不退転の覚悟】
〇初期位置 『④』(性質の効果により変更できません)
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今まで選択してきた項目がウィンドウに表示される。本来は変更できるようだったがランダム選択を選びすぎたせいで名前以外は変更できなかった。
……ランダム選びすぎて変更の余地ないですね。
「これで大丈夫です」
『分かった。じゃあ最後にメニュー閲覧と言ってみて』
「分かりました……メニュー閲覧」
すると目の前にウィンドウが表示された。