序章1
蟷螂の斧開いてくださってありがとうございます。
初めて小説を書くので拙い部分多々あるかと思いますが、精進して参りますので優しく教えていただけると幸いです。
「…猫ちゃん?」
エルドレ帝国にあるスラムで生活する幼い少女、ルナフェガリはその日の夜更けに路地裏で血を流し横たわる子猫を見つけた。
その場にしゃがみ子猫を覗き込む。
恐る恐る触れてみると子猫はまだ微かに暖かい。
まだ助けられるかもしれない…!
ルナフェガリは子猫をそっと持ち上げると自分の棲家へと走った。
スラムでは誰も助けてはくれない。皆自分のことでいっぱいいっぱいだからだ。
本来ならば子猫など捨て置けばよかった。
他者を助けたことで自分が命を落とすことになるかもしれない。それをまだ5歳ほどのルナフェガリには理解できなかった。
しかしそれゆえに助けようと動くことができた。
五分ほど走った先でルナフェガリは小さな隙間に入り込んだ。
共に生活する者がいないルナフェガリは小屋とも呼べない、ただ木の板が折り重なる隙間で生活していた。
子猫をそっとその場におろすと、すでにボロボロな自分の服を引きちぎり子猫に巻いてやった。
幼くともスラムで生きる人間として、血を止めねば死ぬと本能的に理解していたのだ。
巻き方は我流で汚かったが血を止めるには十分だった。
「えっと、たしかここら辺に…」
数日前ゴミ捨て場から拾ったおそらく食べ物だった物の塊。
ルナフェガリはそれを食べやすい大きさに折り取ると、子猫の口の前にやった。
「猫ちゃん、食べないの?」
子猫はそれを食べ物と認識しなかったのか、口を開けなかった。
それもそのはず、ルナフェガリはスラムの中でも弱者だ。そんな人間が手に入れられる食べ物など、どれほど命に危機が迫ろうと食べ物と認識する方が難しい。
どうしよう、なにか食べないと死んじゃうよ…。
何かないかと棲家をキョロキョロと見回す。
ルナフェガリは雨水を溜めていたことを思い出す。
溜めると言ってもボロボロの小さな器しか持たないので、数日で少ししか溜まってはいなかったが。
せめてお水だけでも飲んで…!
器を口元に持っていくと、子猫は弱々しく口をあけてそれを飲んだ。
やった!!!
しばらく子猫が水を飲んでいる姿を見ていたルナフェガリだったが、緊張の糸が切れたらしく睡魔に襲われた。
子猫も水を飲んで落ち着いたのかすうすうと鼻息を鳴らして目を閉じている。
ルナフェガリは子猫のそばに横たわって同じように目を閉じた。
その日初めて生き物と夜を過ごしたルナフェガリは、なんだかとても暖かい気持ちになりながら意識を手放した。