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1,620kHz

作者: バケツロリータ
掲載日:2022/08/07

2022/08/13

終わりが雑過ぎたので書き直しました!許して!

2022/08/15

誤字、脱字等の修正。

2022/08/20

誤字修正。

 雨の日の運転は、少し好きだ。


 ガラスで弾ける雨粒の音。淡々と飛沫を拭き取るワイパーの作動音。路面の水をかき分けて、1.6Lの4気筒エンジンが勇ましく唸る音。どれも愛おしい。


 ただ、それにも限度がある。暗闇の中で、水の入ったバケツをひっくり返した様な雨量の中では、不安が強くなる。

 タイヤはウェット性能の高いスポーツタイヤを履かせているが、車両は最新の技術が詰まった新車ではない。もうすぐで13年落ちの、総走行距離が13万キロを迎えるハッチバック車だ。


 買った当時は、目を引くどころか町中で目立つ鮮やかなイエローに惹かれて購入した車だったが、30歳を目前に控える現在は子供っぽくて少し嫌になっている。

 とはいえ、未だに機関は良好だ。所有して7年目だが故障は無く、シフトレバーの入りも相変わらず気持ちが良い。やはり車名の「スポーツ」は伊達ではない。


 ただ、一点だけを除いては。


『……でね。………になっ……よぉ!ハハハ…』


 ここ最近、カーラジオの調子が悪い。

 購入時点から、赤い照明がキツい社外品のラジオが入っていたが、最初はCDを読み込めなくなり、次はUSB端子が故障。続いてAUX端子が反応しなくなってしまい、交換も面倒なので音楽を諦め、FMラジオを聴いていたのだが、その最後の砦も危うくなっている。


 別に音楽やラジオを聴かない選択肢もあるのだが、それでは落ち着かないのだ。

 車内で聴く音楽やラジオは、昨今の過酷な交通事情から常に平常心を保ってくれる、言わば「盾」なのだ。

 それが無くなってしまえば、俺はどうなってしまうのだろう。7年間、無事故無違反の輝かしいゴールド免許はどうなるのだろう。不安で仕方ない。心地良い排気音を奏でる車なら別だろうが。


 仕方ないので、ラジオの周波数を交通情報を提供してくれるハイウェイラジオに切り替える。少しでも不安を拭いたいのと、大雨故に速度規制や事故情報が入ってくるだろうと思ったからだ。


『けっかん…うじのた………ほうらくのき…んせいがありま………』


 おいおい、ハイウェイラジオもダメか。ボタンを長押しして流れだした音は、聞くに堪えないノイズであった。所々聞き取れるが、「何を伝えたいのか」が分からない。


『たけと…ねるでは、あく…るを……ぜ…かい……ですすんで…。』


 俺は溜め息をついて、時速50キロ制限の標識やミラーに注意を向ける。

 今日はツイてない。ラジオが完全に壊れてしまったし、今日は部下のミスのために、クルマを飛ばして他県の取引先へ行くハメになったのだから。

 おまけに、その日に限って普段使うことが少ない営業車は全車が出払っており、仕方なく己の愛車に機材を載せて取引先へ謝罪と修理に向かうことになった。

 運良く謝罪も受け入れて頂き、修理も上手くいったので良かったのだが、やはり久しぶりのロングドライブは身体に堪える。気を抜くと頭がボーッとしてしまう。


 ふと、違和感を感じてドアミラーに目を向けると、大型トラックがパッシングをしながら、追い越し車線を駆け抜けていく。こんな悪天候の中を飛ばすなんて、トラックドライバーも大変だな。


 そう呑気に考えていたところで、車両後方から聞こえた音に疲労気味の脳味噌が揺れる。背中を貫く様な音に、思わずルームミラーに目を向けると、白色の光が右へと流れていく。それを追うように右のドアミラーに目を向けると、黒のワゴン車が猛スピードで追い抜いて行った。先程の音は、クラクションだった様だ。


 「何もそんなに焦らなくても」と思いつつも、体力の限界を感じた俺は〇〇岳トンネルを何事もなく通過し、家路を急ぐ。

 コツンと、何かが当たった音がしたが、あまり気にせずICのゲートを抜けて自宅のアパートの駐車場に辿り着くと、そのままの着衣でベッドに倒れた。


「おーーーい!!!兄ちゃん!!!いるんかーー!!!」


 目を閉じてすぐに、大声が聞こえた。




 開いた瞼に眩しい光が刺さり、目を細める。既に夜が明けていた様だ。スマートフォンの画面を見ると、午前9時を回っていた。

 インターホンとドアを叩く音に苛立ちを感じつつ、滑り落ちるように起き上がり、寝ぼけ眼で散らかった部屋を器用に抜けてドアを開けると、白髪交じりの中年男性がインターホンを続けて連打しようとしていた。


「あれぇ、大家さんじゃないですか。」


 ギリギリで回った呂律に言葉をのせて発声すると、大家さんは慌てた様子で「クルマが、早く!」と繰り返しながら、外へ手招きしている。

 「クルマ」という言葉で少し正気に戻った俺は、すり減ったサンダルを引っ掛けて外に飛び出し、愛車の元へと向かう。




「クルマ!これ、凄い事になっとるよ!?」




 大家さんの声を聞いて指差す方向を見ると、寝起きの脳味噌には刺激が強い光景が広がっていた。


 世界戦略車として設計された機能的なデザインのリアハッチが無惨にひしゃげ、ガラスが車内に散らばっている。リアバンパーは消え失せ、テールランプは千切れたのか見当たらず、そよ風に吹かれて配線が揺れている。


「朝見に来たらこうなってて…。しかも当て逃げではないみたいでさ。」


 「当て逃げか!?」と思ったところで、説明を始めた大家さんの言葉が引っかかり、「当て逃げではない?」と同じ言葉を使って聞き返した。


「だってほらね。これ、見てみ?」


 大家さんが車内に向かって指を差すと、リアシート辺りに何か塊の様な物が見えた。

 リアシートは昨日、荷物を載せるために倒してフラットにしていたのだが、目を凝らすと大きな岩石が見えた。当たり前だが、こんな岩の様な物は載せていない。意味不明な光景に慣れてきた俺は、そのラゲッジスペースに鎮座する岩に恐る恐る触れる。

 砂を固めたような質感。長い年月をかけて磨かれた岩ではなく、確実に人工的に造られた物。


「これ、コンクリートだ。」


 導き出した答えを呟くと、大家さんが「もしかして…」と呟きながら、俺の部屋のドアから新聞紙を引き抜き1面を見せてきた。


『〇〇岳トンネル崩落 奇跡の死傷者ゼロ』

『直前に“崩落注意”の呼びかけか』


 見出しと共に、刺激が強い光景を収めた写真が飛び込んできた。


「この場所。俺、昨晩通ったんです…。」

 どうにかこうにか、好きなクルマと結びつけて企画に便乗しました。

 今回は、カーラジオや車の取り扱いの描写に力を入れつつ、ホラーも入れてみました。

 ホラーよくわかんね(笑)

 少しでも楽しんでいただけたら、幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 僅かにタイミングがずれていたら、コンクリートが運転席を直撃していたかも知れませんね。 運と不運は隣り合わせ。 私達の平和な日常が危ういバランスで保たれている事が改めて確認出来る、奥深くも考…
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