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嵌められ勇者のRedo Life Ⅲ  作者: 綾部 響
7.光る海の闇徒
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硬亀を討て

洞窟の中には、あの魔神族が!

予期せぬ最悪の遭遇だけど、何とかしないといけないんだろうなぁ……。

 スキル「ファタリテート」を発動し、目の前に立ち塞がっている竜頭亀(レギアタートル)の脇をすり抜けその後ろの洞窟を進み、その最奥に行きついた先で目にしたのは……。


 ―――あの、因縁浅からぬ種族「魔神族」だったんだ!


 まぁ因縁が深いのは俺じゃなくてカミーラなんだけどな。でもそれで、今回の騒動の発端に合点が行ったんだ。

 魔神族がカミーラをどこで見つけたのかは不明だ。この地で網を張っていたのか偶然見かけたのかは知らないけど、とにかく奴らはカミーラを見つける事に成功した。

 そして浜辺を魔物が襲来したのに合わせて式神を作り、カミーラだけを連れ出す事に成功したって訳だな。理由は……言うまでもなくカミーラの身柄か。

 そう考えれば、魔物が大挙して海岸を襲ったのも、もしかすれば魔神族の差し金かもなぁ。


「……あれは!?」


 その魔神族の足元には、縛られて気を失っている子供の姿を見つけた。魔神族は子供の式神を作り出した訳だけど、本当に人の子供を捕えていたんだな。これは、カミーラの直感が正しかったって訳か。


「……ちぃ。もう時間か」


 ここまで、ちょっとスキル「ファタリテート」を連発しすぎたか。持続時間は普段よりも圧倒的に短く、流石にこの魔神族の宿命を覗き見るまでには至らなかった。

 でも、今はこれだけの情報でも十分だ。そして、この洞窟に乗り込まなければならない理由もハッキリした。

 俺たちの今後の安全を確保する為にも、多少は無理してでも魔神族は排除しておかなきゃならないからな。


「……まずは、これを渡しておく」


 実際の時間は1秒も経っていない。俺が何をして何を見たのかは、カミーラ達は知る由もない。

 だから意識が身体に戻った俺は、それと気づかれない様に話しだした。

 俺の取り出したものは、いつものアイテム「ボデルの実」「ドゥロの実」「ベロシダの実」「マジアの実」「エチソの実」だ。これらは、攻撃や防御にそれぞれ効果を発揮してくれる。


「例の『実』のレアアイテムかぁ……。高価なもんだろうに、随分と気前が良いこったなぁ」


 手渡されたそれらを見て、ヨウが感慨深げに呟いた。俺達のレベルで考えれば、旅の途中で「実」を手に入れてもまず使わないだろう。……もったいなくてな。

 売っても良いんだけど売らない、使っても良いけど使わないんじゃあ、最終的には手元に残っちまうアイテムだ。しかも旅を続ければ、更に効果の高いアイテムを手に入れることが出来る。

 そうなれば、もうこれらの実を使うなんて無いだろう。ならこういう物は、さっさと使うに限るってもんだ。


「命と天秤にかけるようなもんじゃないからな。でも使うのは、ここぞって時にしてくれよ」


 俺の発言は、無論洞窟の奥にいる魔神族との一戦を想定してのもんだ。でもシラヌス達は、そうは思わなかったみたいだな。


「勿論、使いどころは慎重に判断するつもりだ」


 どこか心を躍らせて、シラヌスが俺へ答えた。普段なら手に入れられないようなアイテムを得て、知的好奇心が抑えられないんだろうな。


「……と、ディディにはこれも渡しておく」


 そういって俺は、また別の「実」を彼女へと手渡した。


「あの……これは?」


「これは『アクルの実』だ。一時的に魔力量を底上げしてくれるもんだから、ディディにはきっと役に立つと思う」


 彼女は職業「聖女」としての力が宿っている半面、レベルの低さからその力を容易には使えない。

 レベルが上がれば肉体や精神の面で実際以上に能力を上げてくれる訳だけど、疑似的にそれらを向上させる事が出来る。それがアイテムだ。

 各種の「実」やら「薬」などを使えば、一時的に上位職の技や魔法が使えるようになるんだ。

 ディディにはそれに加えて、低い魔力量を上げるアイテムを渡した。これで彼女は、いざって時に強力な回復魔法が使えるってすんぽーだ。


「あ……ありがとうございますですぅ!」


 それが分かったんだろう、彼女は目を輝かせて俺に礼を口にした。本来の自分の力を使えないってのは、悩みの種でもあるしストレスにもなるからな。

 まずは、目の前に立ち塞がるレギアタートルへの対処だ。


「じゃあ……やるぞっ!」


 俺は号令すると駆け出し、それにカミーラとヨウも続いたんだ!




 カミーラが竜頭亀の正面から、俺とヨウは左右から急襲した! 魔物相手に様子見も何も無いからな!

 倒すと決めたなら、敵の不意を突き速攻する! これは魔物に相対する時の鉄則だった!


「くっ!」「ちぃっ!」「硬ぇなっ!」


 でもそれぞれの攻撃は、奴の強固な甲羅に弾かれて殆ど通らなかったんだ!


 レギアタートルは確かに動きが鈍い。しかしそれは、移動を伴う行動に限って言えば……となるだろうか。

 単純に手足を出し入れするだけなら、かなり俊敏に行えている。実際、三方からの攻撃に対して、この亀の魔物は頭や手足を甲羅へ収納する事で耐えて見せたんだ。

 そして、反撃もまた素早かった!


「来るぞっ! 退けっ!」


 後方からシラヌスの声が飛んだ通り、初撃を耐えたレギアタートルはすぐさま首を出すと、そのまま前方扇状に向けて火炎を吐き出し攻撃して来たんだ! その範囲にはカミーラは当然、殆ど真横に居た俺とヨウすら含まれている! 

 ったく、何て攻撃範囲の広さだ。意外に長い首が良く動きやがる。

 俺達は殆ど条件反射でその場から大きく飛び退き、奴の炎の範囲外へと飛び退いた! でも、竜頭亀の攻撃はそれだけじゃあ済まなかった。


「ガァッ!」「悪しきを寄せ付けない神徒の防壁! 光の防壁(ヘスン)ですぅ!」「くぅっ!」


 レギアタートルはすぐに息を吸い込むと、再び勢いよく吐き出した! でも放出されたのは、さっきの様な火炎じゃなかった!

 熱線と化した炎が一直線にカミーラと、その背後に陣取るシラヌスとディディを狙ったんだ!

 初撃の広い範囲を攻撃出来る火炎とは違い、次撃の炎は細く引き絞っているだけあって速度が段違いだった。

 油断……じゃないだろうけど、完全に虚を突かれていたカミーラにその攻撃を躱すのは難しかった筈だ。……って言うより、無理だっただろう。

 でも、ディディによって即座に展開されたドーム型の防壁が、竜頭亀の熱線を見事に防いで見せたんだ! 流石は、聖女の作った防御障壁ってところか。


「ディディッ、『アクルの実』を使っておけっ!」


 だけど今の彼女じゃあ、レベルの低い魔法も連続使用出来ないだろう。神聖防御魔法「光の障壁(ヘスン)」はレベル3から使える初歩魔法ではあるけど、ディディが使うと高い強度が得られる反面、使用する魔力量も多くなっちまうからな。

 如何に「〝呪われた〟魔力の耳飾り」を身に付けて魔法力を抑えているとは言っても、消費魔力が多いのは変わらない。そもそも、彼女のレベルはまだまだ低いんだからな。


「は……はいっ! 分かりましたですぅっ!」


 戦闘中に声を掛ければ、どうしたって怒鳴り声に近くなっちまう。俺の声を聞いて、怯えたように返答したディディは慌ててさっき渡した「実」を口にした。これで、当分は魔力が枯渇するって事も無いだろう。

 しかし、やはり流石にディディは〝聖女〟ってところか。レベルの高い魔物の攻撃を、咄嗟に繰り出し低レベルの魔法で防ぎ切っちまうなんて。


「黒き闇を具現化し我が敵を貫け。漆黒の矢(ネグロフィアス)!」


 そして、ただ攻撃を受けるだけじゃあ終わらない。レギアタートルの攻撃を防ぎ切ったと見るや、シラヌスがすぐさま反撃を試みたんだ!

 奴の得意としているのは闇属性魔法。強力だが、習得や扱いが非常に難しく、多くの者はこの属性魔法を使い始めるのは転職(クラスチェンジ)してからだろう。

 でもシラヌスは持ち前の探究心と高い理解力で、早い段階から闇魔法を得意としていたんだ。


「……ちっ」


 シラヌスの放った漆黒の矢弾は、違う事無く竜頭亀に命中した。動きが鈍く巨体なこの魔物に対して、攻撃を外してしまうと言う方が珍しいからこれは当然だ。

 でもその魔法が、レギアタートルにダメージを与える事は無かったんだ。


「……おいおい、厄介だなぁ」


 それを見たヨウは、笑みを浮かべつつも汗をタラリと垂らしながら呟いていた。


物理攻撃も魔法攻撃にも耐えて見せる竜頭亀。

このままじゃあ、時間ばかり費やして先へ進めない!

だが、全く方法が無い訳じゃあ無いんだけどな。

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