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嵌められ勇者のRedo Life Ⅲ  作者: 綾部 響
7.光る海の闇徒
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スキルの運用

スキル「ファタリテート」を使用して、カミーラを見つける事に成功した!

しかしその状況に、俺は少し疑問を感じたんだ。

 子供に連れられて、カミーラは戦場を離れるような行動を取っている。普段の彼女の言動を考えれば、これは少し違和感を覚えるものだ。

 仲間に何も告げず独断で動くなんて、いつものカミーラではあり得ないからな。


「……あの少年は……本当に〝人〟か?」


 真っ先に思いついたのはそんな想像だった。見るからに普通の少年だけど、その行動には何かしらの意思を感じるし、この戦場で怯えていたり慌てている様にも見えない。


「だったら、とっとと調べちゃえば良いんじゃないの?」


 思案に耽る俺の背後から聞きなれた……それでいて久しぶりに聞く声がした。この登場の仕方にこの話しぶりと言えば……。


「……出て来たのか、フィーナ」


 俺はカミーラから視線を外す事無く、背後に居るであろう女神フィーナへ声を返した。今は彼女の登場にいちいち反応している時間が無いからな。


「あら、その言い方はご挨拶ね。折角手助けしてあげようって思ったのにぃ」


 そんな俺の態度が気に障ったのか、フィーナは溜息交じりだと分かる声音で不満を鳴らしたんだ。

 俺が「ファタリテート」で時間を止めていられるのはおよそ3分くらいだ。今は突然現れたフィーナの相手をしている時間なんて、本当のところは無い。

 でも、彼女は曲がりなりにも〝女神〟様だ。厳密には女神「フェスティス」に使える従属神だそうなんだけど、俺にとってはどちらも神に違いない。

 そんな相手に向けて、いつまでも背を向けているのは不敬に値する行為だ。だから俺は、ゆっくりとフィーナの方へと振り返ったんだが。


「……何で水着なんか着ているんだ?」


 俺の目の前の彼女は、いつもの謎のテラテラした材質を使用した体にピッチリの召し物ではなく、この浜辺でも良く見る事の出来る水着となんら変わらない材質・デザインの物を身に纏っていたんだ。

 基本的にフィーナはスタイルが良い……と言うよりも線がとても細いんで、水着は余程の物でない限り似合わないって事は無いだろう。……まぁ残念ながら、胸は致命的にまな板な訳だが。

 でも今身に付けている物は、ちょっと神様としての感性を疑うデザインだ。

 普通に白のビキニ……と言えばそれほど奇をてらった衣装では無いんだけど、その布面積が極端に少ない。言い方を変えれば過度に煽情的なものを選んでいたんだ。

 フンフンと何故かご機嫌に鼻歌を鳴らすフィーナは、俺の目の前でその姿を誇示するかのようにクルリと1回転する。何と下半身の水着にはお尻の布が無く紐だけじゃないか。

 もっとも、相手は女神様だ。如何にセクシーな格好をしていたとしても、それを見て欲情するって事はあり得ないんだけどな。


「何でって、そりゃあ……ここは常夏で、この場所が浜辺(ビーチ)だからよ?」


 俺の質問を余程不思議に感じたのか、フィーナはキョトンとした顔で応えたんだけど。……違う、そうじゃない。そうじゃないんだ。


「いや、俺が言いたいのはそうじゃなくて、何で女神様が水着姿なんだって事なんだけど……」


 神様が時と場所に合わせて衣装を変えるなんて初めて聞く話だ。実際、これまでに現れたフィーナは常に同じ衣装だったんだからな。


「まぁまぁ、細かい事は言いっこ無しで。私も時には、ラフな格好でいたい時もあるのよ。……それよりも」


 そんな俺の疑問を軽くあしらって、フィーナは話題転換を図って来た。確かに、今は彼女の格好について論じている場合じゃあないな。

 こんな事をしている間に、既に1分は過ぎちまったんじゃないか?


「今回は、能力のレクチャーって事で時間は私の方で延長しておいてあげる。細かい事は考えなくて良いわよ」


 また俺の心を読んだみたいに、フィーナは今まさに不平を鳴らそうとした台詞を先どって返答して来た。神である彼女がこの時間を維持してくれるなら、ここはそれに甘えよう。


「……レクチャーって、何か教えてくれるのか?」


 時間を気にしなくて良いのは有難いんだけど、それとは別に彼女の言い様が気になった俺はそのままその疑問をぶつけた。一体、何を教えてくれるって言うんだ?


「あんた、そのスキル〝ファタリテート〟を発動させて、その後一体どうしようって考えてたのよ?」


 そしてフィーナは、早速ズバッと質問を投げ掛けて来たんだ。確かに時間を止めて周囲の探索に利用しようとは考えていたけど、そこから先はちゃんと考えてなかったな……。


「あんたの事だから、この場の苦し紛れに『カミーラの運命を覗き見よう』なんて答えるかも知れないけれど、それだけじゃあ及第点には程遠いわよ?」


 流石は神様、隠し事や偽りは不可能だな。その場しのぎの言い訳をした所で、鼻で笑われて終わりって訳だ。


「でもまぁ、まずはそれで良いわ。早速、カミーラちゃんの宿命を視てごらんなさい」


 それが分かった上なんだろう、フィーナは俺にカミーラの運命を垣間見る事を勧めて来た。現状は俺もそれしか思い浮かばないんだから、彼女の指示に否やは無い。

 早速俺はカミーラへと意識を集中した。


 ―――表層障壁「Permission」。

 ―――深層障壁「Rejection」。

 ―――心理的プロテクト「Closely Locked」。

 ―――開錠……一部可能。


 相変わらず、カミーラに表示されている文字はマリーシェ達と違って意味が不明だ。……もっとも、俺にはマリーシェ達の上に浮かぶ文字も読めている訳じゃあ無いんだけどな。

 フィーネの話だと、確かこれは……もっと信頼を上げなければ視る事が出来ないって意味だったかな?

 兎も角、全く視れないって訳じゃあ無いんだ。俺はそのまま、点滅している「開錠」の文字に意識を集めた。……すると。


「こ……これは!?」


 そこに浮かんだのは、彼女がとても無事だとは言えない光景だった。

 具体的に言えば、カミーラは傷だらけの血だらけで、右腕と左足が欠損している! しかもその上で、全身を拘束までされているんだ!

 それでも彼女は、憎しみの籠った目で何かを見つめて……いや、睨みつけている! ……これは。


「はい、ストップ。詮索は後回しよ」


 俺が思考に耽る前に、フィーナが声を掛けて来た。それで俺の意識は覚醒され、同時に浮かんでいたカミーラの宿命を映していた映像もかき消えた。


「じっくりとカミーラちゃんの運命を視て検討するのは後回し。今は、この情報から何を得るのかを考えて判断なさい」


 言葉も出せない俺に、フィーナは淡々と説明を加えた。衝撃的な映像だったけど、今のこの状態は確かにカミーラの宿命について考える時間じゃあ無かったな。


「あなたが何も行動を起こさなければ、カミーラちゃんは酷い目に合うと言う事が分かったわ。それじゃあ、すぐにもう一度カミーラちゃんを視なさい。今度は……」


「……ああ。今度は、俺が助ける行動を取ると念じてだな」


 俺はこれまで、1度のスキル発動で1回しかその人の運命を垣間見て来なかった。先入観として、1度に1回と言う考えに捉われていたんだ。

 でも、実際はそうでないとフィーナの言い様が語っている。俺は即座に、再度カミーラへと意識を集中し「開錠」の文字に意識を集中した。無論今回は、彼女を助ける行動を取ると念じて。

 次に浮かんだ映像では、カミーラは笑顔を見せて歩いていた。

 恐らく隣にいるのはマリーシェかサリシュか……。ともかく、2回目の映像では彼女は無事だったんだ。

 ホッとした気の緩みだろうか? 思わず、俺のこの世界での意識が薄れかけたんだが。


「まだよ! 最後に、あの子供の宿命(・・・・・・・)をごらんなさい!」


 普段よりもずっとシリアスな声で、フィーナが指示を飛ばしてきた。少し気を抜いていた俺は再び気合を入れると、力を込めてカミーラの前にいる子供へと意識を向けたんだ。


 ―――表層障壁「Nothing」。

 ―――深層障壁「Nothing」。

 ―――心理プロテクト「Cannot be set」。

 ―――開錠自由……確認。


 ……おや? 読めないのは違いないんだけど、普段と違う表示が浮かび上がってるな。これは……。


「詮索してる時間なんて無いでしょ? 兎に角、さっさと確認なさい」


 俺の疑惑を見透かしたように、フィーナが急かす様な事を言ってきた。実際、俺の気力はこれ以上長くは持ちそうに無いからな。

 俺は彼女に言われるまま、その子供の宿命を視る行動を取ったんだが。


「こ……これは!?」


 そこに浮かび出された映像には……何も映って(・・・・・)いなかった(・・・・・)んだ!


浮かび上がった少年の宿命には……何も映っていなかった。

いや……厳密には、まるで砂嵐のような画像しか映っていなかったんだ!

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