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嵌められ勇者のRedo Life Ⅲ  作者: 綾部 響
6.熱き浜辺の饗宴
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光華の嬢子たち

会場はこれ以上ないってくらいの盛り上がりを見せている!

そんな中で、次なる少女が更に観客のボルテージを上げていった!

 壇上の司会者が、観客を煽るように次なる少女を呼び寄せる! その告知に、会場は更なる熱気を高めていった!

 まだ最高気温には到達していないとは言えこの浜辺は……そしてこの場所の温度は急上昇している。倒れるものが出なきゃ良いけどな。……奴みたいに。


「ううぅん……。グローイヤちゃぁん……。スークァヌちゃぁん……」


 客席のすぐ近くに設置されている救護所には、この暑さで具合を悪くした者たちが運び込まれてくる。その中に、さっきまで最前列でかぶり付いていたセリルの姿もあったんだ。

 流石はセリル。エスタシオンの大ファンだと言うだけあって、彼女達が出場する「水着美少女コンテスト」にも確りと参加していたみたいだな。


「……ったく。熱くなり過ぎだってぇの」


 密集した観客中で倒れる者が出れば、それは非常に目立つ。しかも最前列でなら、俺のいる舞台袖からでも分かるほどだ。

 運ばれてゆく奴を見ながら、俺は思わず毒づいていた。

 どれだけエスタシオンのファンだとは言え、肝心のミハルたちが登場する前に力尽きてどうすんだよ。

 因みにセリルは、朦朧とした意識でグローイヤとスークァヌの名を、そして覚醒してからは。


「うう……。マリーシェちゃん、サリシュちゃん、カミーラちゃん、バーバラちゃん……ディディちゃあぁん……」


 ボロボロと涙を流しながら、女性陣の名を口にして嘆き。


「ああ……。ミハルちゃん……トウカちゃん……カレンちゃん……シュナちゃん……。はぁ……」


 エスタシオンのメンバーの名を呟き、悲哀に暮れていたんだそうだ。強く再観覧を望んだそうだけど、完全にドクターストップが掛けられちゃあしょうがないよな。


 そして壇上には、次なる少女が姿を現した! その人物とは……バーバラだ!


 ―――オオオオオォォン!


「う……うわっ!?」


 これは……歓声か!? それとも……地鳴りだろうか!?

 熱くなった大気と大地を震わせ、客席からの声が怒涛のように押し寄せて来たんだ! その凄まじさに、俺は思わず後退るほどに気圧されちまっていた。


「あら……この娘。シュナが加入する前だったらエスタシオンに欲しいくらいだったわ」


 そしてセルヴィが、登場したバーバラを見て感心していたのだった。




 バーバラが水着になれば、ただそれだけで周囲の視線を集めてしまう事は間違いない。それほどに彼女は、正に爆弾容姿(ダイナマイトボディ)の持ち主なんだ!

 顔立ちも、周囲を睨め上げる様な半眼の面立ちを除けば美形だと言って差し支えない。アイドルのエスタシオンのメンバーにも、全く引けを取らない美しさを持っているんだ。

 普段はその呪いを振りまく様な表情が相手を圧倒しているんだけど、今は観客全員がバーバラのその顔つきに熱狂を上げていた。


 今のバーバラは、とても照れた表情でどこか身悶えするみたいに所在なさげな所作を取っていた!


 身に付けているのは白いワンピースの水着。これだけでも、バーバラのスタイルを考えれば十分に魅力的だ。

 流れる様な淡い青色の髪が、まるで清流を模した絵画のように映えている。深緑色の瞳は、川底に眠る宝石のように輝き神秘的ですらあった。

 でも、それだけじゃない。

 彼女の身に付けている水着は胸の部分が大きく開いていて、脇から腰に掛けての布地が無い……モノキニと言うタイプのものだった。

 ワンピースの割に布の面積が少ないから、全体的にセクシーの度合いはビキニタイプよりも上だろうか。それこそ、胸が水着から零れ落ちてしまいそうなほどだ。

 それを気にしてか、バーバラは両手で体を隠そうと身を捩り、足も内股気味になっている。頬も朱に染まり、普段のような強圧的な視線ではなく戸惑う風な恥じらいのある目線となっていた。

 外見では年齢以上の容姿を持ちながら、ある意味で年相応の素振りを見せる彼女の仕草。そのギャップが、観客を狂ったように興奮させていたんだ。





『ますます盛り上がってきましたあああぁぁっ! 続きましてはああぁぁっ! この娘だあああぁぁっ!』


 しかし、その状態を放っておいては収拾がつかない。だからだろうか、司会者はどよめき続けている観客へ向けて声を張り上げた!

 殆ど強制的に意識を切り替えさせられた観衆だけど、そこに不満は含まれていない。まだ全員の出場者が顔を出した訳じゃないからな。

 ギャラリーの期待は、次の出演者へと向けられたんだ。そして、その場に現れたのは……ディディだった。


「あら、可愛らしい」


 さっきとは違った歓声に包まれて、とても似合っている可愛い水着を身に付けたディディが溌溂とした足取りで舞台の中央へと進み出た。


 ピンク色のオフショルダーのセパレートは、上下それぞれにフリルの布があしらわれている。明るく薄い色合いの水着に、彼女の緑色の髪がとても良く似合っていて健康的だ。

 爛々と輝く水色の瞳には穢れや疑いなどなく、純粋にこの場を楽しんでいるという風情が誰にも感じられたに違いない。

 13歳……最年少と言う事もありセクシーの要素は皆無だが、それだけにディディの元気さが際立っていた。直前に登場したバーバラとの差異が、これまた良い具合に観客受けしていたと言っても良いだろうか。

 感想を一言でいえば、セルヴィの言った通り「可愛らしい」がピッタリだった。


 そんな彼女が、元気よく舞台を動き回っているんだが……俺は知っている。ディディは、純真なままの心でこの場に立っているのではないと言う事を。

 俺には聞こえる様だ……。


 ―――半額券ん……。屋台半額券ん……。


 と言う心の声が。

 そうとは知らない司会者(MC)は、これまでの演者よりも幼く愛くるしいディディの姿にどこか微笑まし気にしている。

 そして彼女もまた、聖女としての振る舞いは何処へやら、目的の為に物怖じすることなく観衆へとアピールしまくっていたんだ。


『さああぁぁっ、皆さんんんっ! 最後の美少女はあああぁぁっ、この娘だあああぁぁっ!』


 ただやはりと言おうか、このままほのぼのとした雰囲気で終わっては盛り上がりに欠ける。この順序は、そうした考えから組まれたものかも知れないな。

 MCの紹介が声高に叫ばれ、最後の少女……カミーラが登場した!


 ―――ドオオオォォォ!


 その瞬間、またもや会場中からこれまでにない異質などよめきが湧きたったんだ!

 そしてカミーラの姿を視た俺も、流石に絶句してしまっていた!


「あらまぁ……これは何とも……」


 辛うじて口を開くことが出来たセルヴィも、その評価や感想には困ったと言った風情しか感じられない。

 それもそうだろう。なんせ彼女は……。


 ―――純白のさらし姿で登場したんだからな!


 下半身はビキニ……なんだけど、横の部分は生地が切り抜かれている様なレイヤードになっている。淡い紫色なんだけど、彼女の鮮やかな紫色の髪と紫紺の瞳に合わせてあるみたいで良く似合っている。

 でも上半身は、綺麗な白い木綿布を胸から腹にかけて丁寧に巻かれているさらし姿だったんだ。

 一見すると包帯を巻きつけたような、ともすれば重傷患者のような姿だ。

 東国では肌着として着用したり妊婦さんが使ったりしているが、でも戦士が身に付ける場合はそんな平和的な用途とはならない。

 さらしを巻く事で比較的弱い腹部の筋肉を引き締め、内臓を確りと守り、裂傷に依り臓器が零れ落ちるのを防ぐって言う生々しい使い方が一般的だ。

 カミーラが身に付けると、そんな戦場の痛々しさが伝わってくるみたいだった。


「あの娘、まるで戦いの場に赴く様な佇まいね」


 セルヴィが口にした通り、実際彼女の表情は緊迫感さえ纏っていた。凛とした姿が、どこかその場を急切なる戦場を模しているかのようだった!

 でも、そんな事が分かるのは戦いを経験した者だけ。一般人には分かる訳もなく、衆目の殆どはカミーラの特異で奇抜な格好に驚いているみたいだった。

 そしてカミーラの表情にも笑顔はない。落ち着いた……真剣な眼差しを客席へ向けている。

 まるで自分と観客が対峙している様な風情を醸し出したまま、僅かばかりの時間が過ぎて行ったんだ……。




『さああぁぁてっ! お集りの皆様あああぁぁぁっ!』


 出場者全員が壇上に出揃い、司会者が客席へと向けて声を発した。

 全ての少女の姿見せが終わったんだから、残るは順位発表だ。会場からはこれまでとはまた違ったざわめきが湧きたった。


『これよりいいぃぃっ、審査発表をおおおぉぉ……』


 と、司会者がここまで台詞を言い放ったところで。


 ―――きゃああああぁぁっ!


 歓声ではない叫声が会場の後方から発生したんだ!


大盛り上がり? の中でコンテストは終わりを見せようとしていた。

しかしその時、この会場に異変が発生したんだ!


……って、エスタシオンはいつ出て来るんだ?

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