表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嵌められ勇者のRedo Life Ⅲ  作者: 綾部 響
6.熱き浜辺の饗宴
80/117

赫灼の少女たち

グローイヤの登場は、会場を大いに沸かせた!

そして次に登場した少女はと言うと……。

 グローイヤの登場で、会場は更に熱気の度合いを増してゆく。


『続いてはああぁっ! この娘だああぁっ!』


 そして司会者(MC)が、次の少女の登場を誘う!

それまで登場していた少女たちと一味違う鮮烈なイメージを客席に与えて、グローイヤは後方に居並ぶ出場者たちの元へ下がった。

観客たちは、俄然次に現れる美少女へ期待の眼差しを向けていた……んだが。


―――現れた少女を目にした者たちは、一気に言葉を失ったんだ!


それはまるで、会場全体が一息に静まり返ったかの印象を受ける程だった。

とは言え、本当に水を打ったような静けさが辺りを支配した訳じゃない。幾人かは、それぞれに今起こっている現象に疑問の声を上げていたんだからな。

ただ余りにも違う先ほどまでとの雰囲気に、観客全員が飲まれているのは間違いなかった。


「へぇ……。あの娘、独特の雰囲気を持っているんですね」


 目を見張る俺の隣で、セルヴィが感心した様な台詞を口にした。そして俺もそれには同感だった。


 ―――現れたのは、オリビエラ=スークァヌだった。


 さっきのグローイヤとは違い、彼女はその場の空気に感化されることは無く至極自然に登場した。

 飛び跳ねるでもなく、躍動感もなく、笑顔さえ浮かべず、ただ静々と。ゆっくりと歩いて、舞台の中央へと進み出て来たんだ。

 

 それだけで。……ただそれだけなのに、ステージ上からは寒々とした冷気すら感じられる空気が発せられていたんだ! 観衆の口を縫い留めたのは、正にこの気配だった!


 無論、スークァヌは魔法を使っている訳じゃあ無い。……多分。

 一応、出場規定では魔法やスキルの類の使用は禁止となっているからな。流石に彼女も、こんな場でその様な児戯は行わないだろう。

 それでも彼女からは、冷え冷えとした気配が感じられたんだ。


 妖艶……と言えば、確かにスークァヌの格好はその年齢に見合わず妖美なものだった。

 老人の様に……でも美しい灰色の長い髪。陶器のような……ともすれば病人を思わせるほどに抜けた白い肌。それを引き立たせる……とは相反する黒色の水着。

ネックホルターで胸元が大きく露出しているんだけど、それ自体にいやらしさは感じられない。いや……それどころか、どこか落ち着いた風情さえ醸し出している。

しかしモノトーンの色合いでは、この華やかなステージでは地味としか言えない。それでも人々の目を引き付けて止まないのは……その蠱惑的な翠色の瞳のせいだ。

半眼に開かれた瞼から僅かに煌めく鮮やかな緑色が、白黒の色合いに異彩を放っていたんだ。


『つ……続いてはああぁぁっ! この娘だああぁぁっ!』


 そのままでいればいつまでも時間を止めてしまいそうな状況を何とか始動させたのは、流石のプロ根性を持った司会者だった! 俺でさえ、スークァヌの魅力に取り込まれて動けなかったんだからこれは称賛に値するな。

 

 そして次に登場したのは、やはりと言おうか俺たちのパーティの切り込み隊長であるマリーシェだった!

 彼女の登場に合わせて、会場からは通常の大歓声(・・・・・・)が沸き起こった!

 そりゃあそうだろう。客観的に見ても、彼女は十分に魅力的だ。

 普段は武器を手に鎧を身に纏っていて飾り気なんて無いけど、彼女の容姿は同年代の少女と比べても抜きんでて美しく可愛らしいんだからな。


 彼女の選んだ水着も、グローイヤと同じ赤色のビキニだ。しかしグローイヤのものが挑戦的なタイサイドビキニ……腰ひもタイプだったのに対して、マリーシェの選んだのはフレアビキニ……胸の部分にフリル状の布があしらってあるタイプのものだった。

 綺麗な金色の髪に赤色はとても良く似合う。グローイヤよりも遥かにメリハリのある身体だけど、胸の部分を覆う様な装飾がいやらしさなど微塵も感じさせていなかった。

 笑顔に湛えられた碧眼が、観客一同を楽しい気分にさせているのに間違いはない。

 さっきとは質が違うけど、マリーシェもグローイヤやスークァヌに決して負けているものじゃあ無かったんだ!


「ふぅん……。ねぇ、アレク。何故あの娘は……いえ、あの娘達は冒険者なんてやっているのかしら?」


 壇上のマリーシェを見つめながら、まるで独り言のようにセルヴィが口にした。これが独白でないと断言できるのは、先に俺の名前を呼んでいるからに他ならない。


「……さぁ? そう言えば、なんでだろうなぁ……」


 言われて、俺は彼女達の事をほとんど知らないと気付いたんだ。

 カミーラの事は、少しはその事情を知っている。彼女と初めて出会い俺達に協力を求めてきた際、俺たちはカミーラの口からその理由を聞いている。

 またディディの事も、ある程度は理解出来ていた。つい先日その理由と対処方法に四苦八苦したんだから、忘れる訳もないな。

 全てではないにしろ、少なくともカミーラの出身や行動理由、ディディの身の上や状況は俺たちの知る処だった。


「あら? あなた達はパーティを組んでまだ間もなかったのかしら? そうは見えなかったんだけど……」


 でも俺は、マリーシェやサリシュ、バーバラにセリルの事は全くと言って良いほど知らなかった。セルヴィに改めて問われて、俺は初めてその事に気付いたのだった。


「いや……。それほど短いと言う訳じゃあ……ない」


 それほど長いと言う訳でもないが、短いと言ってしまう程の短期間でもない。ただ冷静に考えれば、俺の身の上や彼女達の事情について少しは話していてもおかしくないだろうなぁ……。

 そんな想いに耽っていると。


『ハアアァァイ! 次のレディィィッ! どうそおおぉぉっ!』


 マリーシェも後方に下がり、次の少女が顔を出したんだ!

 次に現れたのは……サリシュだった! 彼女の出現で、また会場からは違った雰囲気が発せられる。


「あら、まぁ。思い切った選択をしたのね。でも……正解だわ」


 そのサリシュを一目見て、セルヴィは感嘆の声を上げていた。

 先に登場した3人よりも……いや、どの少女とも違った見た目にも拘らず、彼女らしさが確りと出ていてやはり目が離せなくなる立ち居振る舞いだったんだ。


 真っ直ぐに伸びた腰まで届く黒髪。透き通る白い肌。整った顔立ちに表情も少なく、黒い瞳が客席の方へと向けられる。

 ある意味でスークァヌと正反対の色合い、それでいて決して地味ではなくそれどころか清楚な華やかさを醸し出している。

 それと言うのも、彼女の身に着けている水着はタンキニ……上下のセパレートとなってはいるが、ビキニほどの露出は無い。その代わりと言っては何だが、水着には全面オプティカル柄が施されていた。

 黒地の生地に、大小様々な大きさの白い円が規則正しく染め抜かれている。この柄のお陰で、全体的に白と黒でしかない色合いが不思議な印象を周囲に与えていたんだ。

 体の凹凸で言えば、グローイヤよりも更に少ない。水着を着た女性としての魅力で言えば、これまでに出場した少女たちに劣るかも知れないな。

 でもサリシュには何と言うか……物静かな美しさがある。それが彼女の白と黒で表現されているとでも言おうか。


「やっぱり不思議ね。彼女程の器量で魔法が使えるだけの才覚なら、何も危険な冒険者とならなくても平穏な幸せなら簡単に手に入ったでしょうに。……って、そうか」


 時に人は、自分の事を棚に上げて語ってしまう事がある。セルヴィも、ミハルたちエスタシオンの事をうっかりと忘れて、ついマリーシェ達を見てしまったんだろう。

 そして何よりも、自分の出自や生い立ちを失念して……な。


 輝きを振りまくエスタシオンの影に隠れてしまっているが、実はセルヴィも十分に美形だ。もっとも、彼女自身が進んでその位置に就いている訳だが。

 そうなるまでに、セルヴィにも色々とあっただろう。恐らく以前は冒険者をしていただろう彼女は、それこそ今の俺たちよりも(・・・・・・・・)多くの経験を積んで来ていたに違いないからな。

 そして傍から見れば、彼女だって十分に器量が良く〝一般的な幸せ〟を送れていた事も想像に難くない。

 でもセルヴィは、そうしなかった。それを選ばなかったんだ。

 その事は、きっとエスタシオンのメンバーやマリーシェ達の想いと通づる処があると彼女自身が気づいたんだろうな。


『今回は、どの娘も魅力に溢れてるぜええぇぇっ! 続いてはああぁぁっ! この娘だあああぁぁっ!』


 盛り上がる会場に更なる拍車を掛けるべく、司会者は次なる出場者を舞台へと招き入れたんだ!


マリーシェもサリシュも、観客を魅了する事に成功していた!

普段はあまり意識しなかったけど、彼女達も十分に魅力的な女の子たちだったんだなぁ……。

そして、次なる少女は……!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ