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嵌められ勇者のRedo Life Ⅲ  作者: 綾部 響
6.熱き浜辺の饗宴
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灼熱の開戦

突然現れたグローイヤ。彼女は、何事も無いように話に加わっている。

でもなんだろう……。この不安は……。

 突然現れたグローイヤ達は、何故かシレッと俺たちの輪の中へ入り話に参加していた。


「な……何って……。この娘達がイチイチ私たちに突っ掛かって来て……」


 本来ならグローイヤ達とも親密とは言えないんだろうけど、彼女達とは前回のクエストで一緒に戦った仲だ。四季娘(エスタシオン)と比べれば、まだグローイヤ達の方が話しやすいんだろう。


「な……!? べ……別にあなた達の事なんかどうでも良いんだから。私たちはアレクと話が出来れば良いんですから、どうぞ何処へでも行けば?」


 まるで自分たちこそ悪者と言わんばかりなマリーシェの言に、トウカは顔を真っ赤にして反論した。勿論、最後に挑発する事も忘れていない。


「……アレクは、ウチらと一緒に行動すんねん。……どっか行くんはそっちやろ?」


 流石に彼女のこの言い様にはカチンときたのか、サリシュがムッとした雰囲気で即座に言い返すも。


「って言ってもねぇ……。私たちもアレクともっと話したいし、それをそっちが邪魔する訳だしねぇ……」


 カレンとて、ここは退く素振りを見せなかった。やれやれと言った風に掌を軽く肩口まで持ち上げ、お手上げと言った態度を取って見せた。


「邪魔……とは、また随分な言われようだ。言うまでもない事だが、アレクは我々のパーティメンバーなのだがな」


 そんなカレンの態度が気に障ったのか、それとも彼女の台詞が鼻に突いたのか。カミーラが明らかに不機嫌をまき散らして噛みついた。

 瞬時に、カミーラとカレンの間で不穏な空気が渦巻く。


「あ……あの……その……。み……みなさん、仲良く……」


「……あんたが一番……危険人物」


「え……ええぇっ!?」


 それを止めようとシュナが声を出そうとした矢先、バーバラが辛辣な一撃を加えていた。まさか自分に矛先が向くとは思っていなかったシュナは、これ以上ないと言うくらいに驚いて絶句していた。

 そしてディディは。


「あのぉ……。このエビの串焼きを1本下さいですぅ」


 屋台で新たな食材を仕入れていた。


 兎も角、この調子じゃあ全く収拾が付かない。とりあえずでも、一度白黒はハッキリさせておいた方が良いかも知れないな。


「……なるほどねぇ。……それで? あんたには何か解決策があったんだろ?」


 未だ揉めているマリーシェ達とエスタシオンを横目に、グローイヤはそれを静観していたセルヴィへと話を振った。この辺りの嗅覚は流石としか言いようがないな。


「あら、随分と目端が利くのね。私はこの娘達に、勝負をつけるなら『水着美少女コンテスト』に出場してみれば? と提案しただけです」


 ニッと笑みを浮かべて、セルヴィがグローイヤの問いに答えた。

 本当ならこんな提言をするような女性じゃあ無いだけに、俺にはセルヴィの考えが読めなかった。


「……へぇ、なるほどねぇ。あんた……本当に策士だねぇ……」


 それでも、グローイヤには何か察するところがあったんだろう。セルヴィと同じようにニヤリと口角を上げて、彼女の事を褒めていたんだ。

 ……何だ? 何が分かったんだ?


「……おい、シラヌス。グローイヤには何が分かったんだ?」


 全く要点を得ない俺は、無言で控えていたシラヌスに問い掛けるも。


「……俺にも分からん。……あいつは時折、信じられない様な閃きを見せるからな。今回も、野生の本能で何かを感じ取ったのかも知れないな」


 残念ながら、シラヌスにも分からなかったみたいだ。

 後方を顧みれば、ヨウもお手上げと言ったポーズで応じていた。……んだが。


「うっふふふふ。まぁ、殿方には分からない事かも知れないわねぇ。こう言うのは、女の意地を理解していないと思いつかないものよぉ」


 ニヤニヤと笑みを浮かべていたスークァヌが、含みを持たせた笑みで答えて来た。どうやら、彼女も何かを理解したみたいだ。


「なぁ、スークァヌゥ! この『水着美少女コンテスト』ってのにあたい達も出てみないかぁ?」


 突然グローイヤが張り上げた大声に、マリーシェ達とエスタシオンの喧噪もピタリと止んだ。まぁ、そうするようにわざと声を大にして話したんだろうが……何考えてるんだ?


「うっふふふ……。そうねぇ……。面白そうだから、出てみようかしらねぇ。……それで? 景品は何が貰えるのかしら?」


 そして当のスークァヌは、グローイヤの(・・・・・・)注文に応える回答(・・・・・・・・)をして寄こしたみたいだった。なんせそれを聞いたグローイヤは、この上なく悪戯心を映し出した表情をしてるんだからな。


「そうだねぇ……。なら、アレクとデート出来る権利ってのはどうだい?」


 な……なにぃっ! 言うに事欠いてこいつ、何を言いだすんだ!?

 何か企んでるとは思ってたけど、まさかこんな事を言いだすなんて!

 って言うか、そんな条件で誰が参加するんだよ! って考えていると!


「うっふふふ……面白そうねぇ。その話……乗らせてもらうわぁ」


 スークァヌは、アッサリと承諾しちまったんだ。いや、何が楽しくて俺とデートする為にわざわざコンテストに出るんだ!? って言うか、俺の意思は!?


「ちょ……おま……何言って……」


 兎に角、この2人の悪ノリ(・・・)を止めないと本当に実行されちまう。なんせ、グローイヤは一度行ったら聞かない性格だからな。

 ……なんて思っていたら。


「そ……それなら、私も挑戦するわ!」


 何と、マリーシェも参加表明しちまったんだ! おいおい、マリーシェ。どうしちまったんだ!?


「……なら、ウチも出るわ」「……仕方がない。私も参加しよう」「……ならば……勝つ」


 それを皮切りにして、俺たちのパーティメンバーは全員参加すると宣言しちまったんだ! 因みにディディは、別の理由で参加を決めてるからな。


「うふふ……。面白くなって来たじゃない」


 その成り行きを唖然と見守っていたエスタシオンの内、トウカが最初に再起動してそう口走った。……そして。


「それなら、みんなで楽しく参加しましょう!」「た……楽しいコンテ……」「あははっ! 楽しいコンテストになりそうね!」「あう……」


 ミハルたちも、どこか嬉しそうに声を上げていた。

 同年代の知り合いが同じコンテストに参加するってシチュエーションはこれまでに無かったんだろうな。仕事とはまた違うノリのイベントに、彼女達も本当に楽しみみたいだ。

 それにしても、なんでみんな急に参加する気になったんだ? あんなに嫌がっていたのに……。


「……なぁ、セルヴィさん。あんた……何考えてるんですか?」


 やる気を見せるマリーシェ達を遠目に見ているセルヴィに近付いた俺は、その真意を確認する為に問い掛けた。今の彼女は、どこかニンマリとしていて〝してやったり〟と言った風情を醸し出している。


「……さぁ? 私はただ、揉め事を解決する一案を提示しただけですが」


 でも残念ながら、彼女の口からはその真意を聞きだす事は出来なかった。

 もっともセルヴィの事だ。別段俺たちを困らせようとか、陥れようなんて理由じゃないのは確信が持てたんだけどな。


「あんた達には負けないんだからねっ!」


 マリーシェが、ビシッと人差し指を突き付けて威勢よく啖呵を切った。


「はい! お互いに頑張りましょう!」


 そして指さされたミハルは、柏手を打って嬉しそうに応じていた。

 傍から見てそのやり取りはどうにもちぐはぐで、とても勝負をすると言う雰囲気には見えない。実際、マリーシェも肩透かしを食ったようにやり難そうだ。

 もっとも、その様にある意味ホンワカとした空気を発している面子だけじゃなく。


「……あんたには負けへんでぇ」


「……ふん。返り討ちにしてあげる」


「その意気や良し。後で吠え面をかかない事だ」


「うぅん……。それはそっちの事じゃないかなぁ? だって私たち、言ってみればコンテストのプロだよ?」


「……それは……今までの話だろう?」


「わ……私も……負け……」


「みなさぁん! これ、食べないですぅ?」


「はう……」


 といった具合に、至る所で戦いの幕が切って落とされていたんだ。


「あっはは! 良い感じに盛り上がって来たねぇ!」


 そして火付け役であるグローイヤが、俺の隣まで来て面白そうにその様子を眺め出した。その言い様だけを聞けば、全くの他人事だ。


「……おい。どういうつもりなんだ?」


 ハッキリ言って、こいつの思惑も全く分からない。本当に誰か種明かしをして欲しい処だけど、この件に関してはシラヌスさえも役に立たないからな。


「さぁねぇ? あたいは、面白ければ何でも良いのさ。勿論、商品を譲ってやるつもりなんて無いけどね。……ねぇ、スークァヌ?」


「うっふふふ……そうねぇ。あなたと2人きりで話し合うのも、それはそれで楽しそうだしねぇ」


 でもやっぱりと言おうか、この2人からも正解は語られなかった。

 こうなったら、事の成り行きを見守るしかないと俺は覚悟を決めた。


なんだか、とんでもない事になっちまった。

って言うか、何でこの勝負の賞品が俺なんだ!?

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